元米軍大尉が教える!!軍隊式英会話術
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元米陸軍大尉が教える!![軍隊式英会話術]
   
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【軍隊式英会話術】 vol.9

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◆【軍隊式英会話術】 vol.9
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文法は怖くない                             Takashi Kato
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9時間目 文法は怖くない


DLI(アメリカ国防省外国語学校教官)で教えられている言語は全部で24カ国語。難易度に
よって4段階に分けられています。

英語を母国語(Mother Tongue)とする学生にとってもっとも難しいとされるのは、日本語を
はじめ中国語、アラビア語、韓国語などですが、そのなかでも日本語のハードルが最も高いで
しょう。

他言語にはない、漢字、ひらがな、カタカナという三通りの文字を習得しなければならないこ
とや、主語―目的語―動詞というキーワードの配列関係が英語と極端に違っていることなどが
原因です。

しかし日本語であれ韓国語であれ、ある年齢までは人は苦労なく言葉を覚えてしまいます。
母国語ではなくても、海外駐在員の子供たちが現地語(Local Language)を、またたく間に
覚えてしまったという話はよく聞きます。

一般的に言って、25〜30歳をすぎると外国語習得は難しくなるようです。理由は言語学者の
間にも諸説あって定かではありませんが、自分の英語学習やDLIでの教官体験を総合すると
、あるパターンが見えてきます。

子供は入ってくる音をそのまま素直に受け入れ、造作なく身につけてしまいます。
乾ききったスポンジのような吸収力のおかげで、母国語の習得には苦労や苦痛が伴なわないの
です。

対照的に、大人はこの能力が失われた分だけ理屈やルール、つまり文法(Grammar)に頼ろ
うとします。

ここで問題となるのは言葉と文法(Mistake language for grammar)をはき違えてしまう
ことです。

言葉と文法の関係は、土地(Land)と地図(Map)の関係になぞらえると分かりやすいでしょ
う。地図とは地形(Terrain)を等高線(Contour Lines)や記号(Symbols)で表したも
のです。

読み方を知っていれば、現地にいなくても、その場の様子を視覚的に捉えることができます。
青い蛇行した線なら河川、等高線が込み入っていれば急勾配、卍ならお寺といった具合です。

しかし、地図は本物の地形ではありません。地図の読み方(How to read map)にどれほど
精通していても、自分で歩いてみなければ、川の深さや流れの速さは分からないし、急勾配が
どれくらい足腰に堪えるかも知りようがありません。

目的地にたどり着くためには、本物の土地を靴底で感じとり、目的に応じ、最短ルートをとっ
たり、風光明媚なルートを選んだりすることが必要です。

地図は、そのような判断のための参考資料にすぎません。地図があって地形があるのではあり
ません。初めに地形ありきなのです。

よく似た意味合いで、文法は言語という地形に投影された等高線や記号のようなものです。
例えば英語の語順が、主語―動詞―目的語のSVOであるとか、名詞を修飾する場合は関係代
名詞と呼ばれる
who, that, which, whose, whom などを使うとか、go(行く)や lie(横になる)という
動詞は不規則活用する、といった言語学上の知識のことです。

地図が読めれば便利だし、旅行の計画にも役に立つから読めるに越したことはありません。し
かし地図があっても、実際に山あり谷ありの地形を歩かないことには目的地にたどり着けませ
ん。同様に、文法の知識だけでは外国語によるコミュニュケーションをマスターすることはで
きないのです。

英語を学ぶ日本人は、文章を聞いたり読んだりした瞬間、文法を介さず意味そのものを「感じ
取る」(feel out)能力が不可欠です。これは本物の英語に30分でも1時間でも長く接しつづ
けることでしか体得できません。

地道な反復練習(Tireless repetition)だけが、音と意味のつながりを強固にしてくれるの
です。外国語習得に近道はないといわれる所以です。(There is no short cut in foreign
language learning)

DLIの学生にも「開く」と「開ける」というような自動詞と他動詞の文法上の定義は熟知し
ていても、どちらに「が」がつき「を」がつくのかをとっさに判断できず、肝心の会話で使え
ない者は少なくありません。

これも、本物の言葉と文法を取り違えるから起こることです。文法があって言葉があるのでは
ありません。初めに言葉ありきなのです。

文法に頼ってかえって混乱する場合もあります。
例えば、

 "My wallet was stolen"
 (財布を盗まれた)
 "We are surrounded by the enemy"
 (敵に包囲されている)
 "A man was eaten by a shark"
 (男がサメに食べられた)

と言うためには passive(受身形)が必要です。

 "I can speak English"
 (英語が話せる)
 "I can eat row fish"
 (生魚が食べられる)
 "I can read Latin"
 (ラテン語が読める)

など「〜ができる」を表すのはPotential(可能形)です。

人に何かを「させる」と言う場合に必要なのはCausative (使役動詞)で、

 "Make him study more"
 (もっと勉強させてください)
 "Let me do it"
 (自分にやらせてください)
 "Have him come here"
 (彼にここに来させてください)

となります。

英語の受身形、可能形、使役動詞などが、どのような場合に使われるかを文法で理解しても、
実際に文章が組み立てられるかというとそうではありません。

日本人がこのような文章をつくる場合「いま受身形を使っている」とか「これは使役動詞で言
わなければならない」とか意識しているわけではありませんね。

どのような文型がどのような働きをするかが、つまり、音と意味が強固につながっているから
、「受身形」などの文法上のレッテルは必要ないのです。

逆に英語だと、レッテルを覚えたことで音と意味がつながったような錯覚を起こしがちです。
だから本物の状況に置かれて緊張すると、これらのレッテルが入り混じって混乱し

 "I stole a wallet"(財布を盗みました)とか
 "A man ate a shark" (男がサメを食べました)

とやってしまうのです。

 "Let me buy you a drink"(一杯おごらせてください)を 
 "Buy me a drink"(一杯おごってください)

と間違えるぐらいなら笑い話ですむでしょうが、
日米の連絡将校が

 "We are surrounding the enemy"(われわれは敵を包囲しています)と
 "We are surrounded by the enemy"(われわれは敵に包囲されています)

を間違えたら多くの人命にかかわります。

つまり、外国語を学ぶとき、いちばん効率がよく自然なのは、前述の受身形、可能形、使役動
詞にしろ、それが必要な状況下を想定し、実体験と言葉を結びつけて反復練習をすることです。
体で覚える(Learning by doing)と言っても良いし、声帯という筋肉に音と意味を浸み込ま
せると言っても良いでしょう。

DLIの学生が苦労する自動詞、他動詞でも同じことで、「脱出ハッチが閉まっています」
「脱出ハッチが閉めてあります」「脱出ハッチを閉めてください」「電気がついています」
「電気をつけてください」というように文章の中で「が」「を」と動詞を一緒に覚えろと連日
言い聞かせています。

DLIでの日本語教育は、明日から使える「生きた言葉」を基本としています。軍隊式英会話
術の学習も同じことです。

語学習得期間(Language Acquisition Window)を逃してしまった者が、外国語を習得する
ことが不可能かというとそんなことはありません。

英語でも日本語でも、まず「話せるようになりたい」という情熱、ついで上達のテクニック、
それに充分な時間があれば言葉は必ずできるようになります。

ここで言うテクニックとは前述した「体験と言葉を結び付けて覚える」とか「言葉は文章のな
かで覚える」という単純なテクニックのことです。

中学、高校時代を通じ、英語授業は丸暗記が主で、I, my, me, mine. You, your, you, yours
と年がら年中やらされたものです。

試験のときならこれでも良いでしょうが、アメリカでの日常会話で「彼女に来てほしいんだけ
ど」と言いたいとき、she, her, her, hers と唱えてから代名詞の目的格はなんだったか、と
文法で考えていたのでは間に合いません。

"I want her to come" という文章のなかで her を覚えてしまうのです。
相手が男性なら "I want him to come"
複数なら "I want them to come"とすればいいのです。

このような例文を多数覚えることで、さまざまな状況に即応できるコミュニケーション戦略
(communication strategies)が養われていきます。

これらの例文は、英語という大きな池に置かれた飛び石(Stepping Stone) のようなものです。
石の数が増えるにしたがい、動ける範囲が少ずつ大きくなっていきます。

時間をかければ石と石の間は詰まり、やがては走り回ったり飛び跳ねたりすることができる大き
な土地にもなるのです。

情熱といくらかのテクニック、そして時間があれば、英語をものにすることはそれほど難しいこ
とではありません。

まずは飛び石をいくつか置いてみることから始めましょう。

次の授業に進む。

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