元米軍大尉が教える!!軍隊式英会話術
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元米陸軍大尉が教える!![軍隊式英会話術]
   
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【軍隊式英会話術】 vol.10

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◆【軍隊式英会話術】 vol.10
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仕事で使える会話力(初級篇)                Takashi Kato
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10時間目 仕事で使える会話力(初級篇)


いよいよわれわれの目標であるILR(政府機関言語会議テーブル)のレベル2です。

このレベル2では日常生活での必要事項はもとより、ある程度は仕事もこなせなければなりま
せん。明日海外渡航し、現在の仕事を曲がりなりにも英語で切り盛りできるぐらいの語彙や文
法理解が前提となります。

仕事で使えるレベルとは言え、まだ間違えは頻繁に起こします。文法的誤りや外国訛は英語を
母国語とする人々には耳障りなこともあるでしょう。

しかし、この段階で初めて顕著になるのは「自信を持って話せる」ということです。

レベル2では、英語と言う池に置かれた飛び石、つまり語彙や文型の数が充分に増え、かなり
自由に動けるようになります。その結果、意思を伝えることに自信が持てるようになるのです。
外国語の勉強から辛さが薄れ、面白くなってくるのはここからです。

レベル2スピーカーは日常会話の要点ならほぼ把握できますが、専門用語や知識が必要な会話
では理解度が落ちます。

しかし、職場でも通常の事柄なら質問したり答えたりすることができ、また、部下に簡単な仕
事の手順を説明することも可能になります。

また、自分で間違いに気づき直すことができるので、このレベルに達すれば、あとは独力で力
を付けていくことが容易になります。

DLI(アメリカ国防省外国語学校教官)卒業時にここまで来られた学生なら、数年の日本勤
務でレベル3、つまり仕事が完全にこなせ、抽象的な話題でも自由に話せる語学力にも手が届
くのです。

学校に行かずとも、職場や日常生活の場で日本語に磨きをかけることができるからです。
武道に例えれば、レベル2は黒帯の初段だということになります。
以下、残りの必要項目を見てみましょう。

OPIで試験官が時制をチェックするときは、例えばこのように質問します。

 "Tell me how you spend a typical weekday"
 
 (平日をいつもどう過ごすか教えてください)

特定の過去でもなく未来でもない普通の日課ですね。こう聞くことで、被験者を現在モードに
入れるのです。

 "I wake up around 5 and take a shower and brush teeth.
 
 Then, wear uniform, shine boots and go to a morning formation.
 
 After that, I eat at a company dining facility.
 
 I come to school at 8 a.m. and study till 4 p.m. Monday, Wednesday and Friday,
 at my company, we have basic soldier skill training such as map reading, drills
 and ceremony, first aid and personal defense techniques.
 
 I have a few hours of free time in the evening....but I must spend time in doing
 my homework for the next day.
 
 I go to bed at latest 10:30."

動詞に注目してください。毎日の生活で使うものばかりですから、中学3年生でも知っていま
す。いつもすることを説明するときは、時制はすべて現在形、つまり、辞書に載っている原形
を使えば良いことが分かります。

次は過去形です。試験官は被験者によって質問を変えます。基礎訓練を出たての新兵なら、

 "Do you remember the day you arrived at the basic training? Please tell me
 what happened that day chronologically"
 
 (新兵訓練に到着した日のことを覚えていますか?その日になにがあったか、順を追って教
  えてください)

軍歴20年のベテラン士官や下士官なら、ウォームアップで聞き出した情報を元に、例えばこ
んな風にもっていきます。

 "It was your birthday/marriage anniversary last weekend. Tell me what you
 did that day from morning till evening" 
 
 (先週末は誕生日・結婚記念日でしたね。その日、朝から夕方まで何をしたか話してください)

いずれの場合も、文章は現在形の場合と大差ありません。注意すべきは、ある特定の時点で起こ
ったことを言う場合は、動詞を過去形にすることです。

上記の例を使うならこうなります。

 wake up → woke up
 take a shower → took a shower
 brush → brushed
 wear → wore
 shine → shone
 go → went
 eat → ate
 come → came
 study → studied
 have → had
 must spend → had to spend
 go to bed → went to bed

未来形のチェックはたいてい、

 "What is your plan after graduation? What will be your next mission?"
 
 (卒業後の計画を教えてください。次の任務は何ですか)

と聞かれます。将来のことを話すときは、動詞の原形に「でしょう、だろう」を意味する will
を付ければこと足ります。

しかし、これだけだと一本調子になりますから、同じことを意味する

 I am going to +(動詞原形)
 I am planning to+(動詞原形)

を使うと表現に幅が出ます。

 I am supposed to +(動詞原形)
 I am expected to +(動詞原形)

と言えば「〜ことになっています」というような意味合いになり、軍人や会社員のように、上か
らの命令で動く職種には適当です。

次は手順の説明ですが、これはなるべく単純で熟知している事物を選ぶことが肝心でしょう。
ベテランパイロットだとしても「飛行機のエンジン起動」はやめましょう。
同様に空挺レインジャーも「軽機関銃の分解組み立て」は避けるほうが無難です。
母国語と外国語の専門用語の語彙に開きがありすぎるからです。

前述のとおり、レベル2はまだ日常会話に重きを置いた段階であることを忘れないでください。
パイロットなら、飛行服の着方やヘルメットのかぶり方、酸素マスクの付け方などを説明する
のが適当です。

歩兵ならM16小銃の撃ち方が良いでしょう。両者を例に、英語で説明してみましょう。

 "First, wear a jumpsuit and combat boots.
 Then, wear a parachute harness.
 Make sure that the harness is snug.
 Pick a helmet which is just right for your head.
 If it moves around, it is too big.
 If it is too tight, you will have a headache.
 
 Next find an oxygen mask which fits your face tightly so that oxygen will not
 leak through.
 
 When you fix your mask to your helmet, you must put your left fingers on the
 left mask retainer so that Your right hand can insert the mask pin.
 
 Because you can't see your hands, you must feel the locations of the retainer
 and the pin.
 
 Lastly, lower the visor so that it will fit the upper part of the mask"
 
 (まずジャンプスーツを着てコンバットブーツを履く。
  次にパラシュート用のハーネスをつける。
  ハーネスはきちんと締めること。
  頭のサイズにあうヘルメットを選ぶ。
  動くようなら大きすぎ、小さすぎるとじきに頭が痛くなる。
 
  次に酸素が漏れないように、顔にぴったり合う酸素マスクを見つける。
 
  マスクをヘルメットに付けるときは、右手でマスク取り付けピンを取付金具に差し込めるよ
  うに、左の指を取付金具に添える。
 
  この際、手は見えないので、取り付け金具とピンの位置を体感しなければならない。
 
  最後にバイザーを下げ、マスクの上部にフィットするようにする)M16なら、

 "First, remove a magazine.
 Pull back the charging handle and visually check that the chamber is empty.
 Insert a loaded magazine.
 Make sure your finger is outside the trigger guard until ready to shoot.
 Pull back the charging handle and let it go.
 Now the rifle is ready to shoot.
 
 (まず弾倉を抜く。
  装てんハンドルを引き、薬室が空であることを目で確認する。
  実弾入りの弾倉を入れる。
  撃ち方準備ができるまで、指は用心鉄の外側に出しておくこと。
  装てんハンドルを引き、そのまま放す。
  射撃準備完了)

となります。軍事用語だから見慣れぬ単語もあるでしょうが、動詞は中学校で習うもので事足
りているのが分かりますね。手順を説明する場合も、動詞の原形使えばよく簡単です。

レベル2の一番の難関「最近の出来事」は、前述したように When「いつ」 Who 「誰が」
Where「どこで」 What「何を」 Why「なぜ」 How「どうした」という5W1Hを使ってニュ
ースの事実関係を説明します。

語学情報士官(language trained military intelligence officer)、
下士官(language trainined non-commissioned officer)、語学兵(military linguist)
は、海外担当地域の公開情報源(open sources)、つまり新聞、雑誌、インターネット、テレビ
、ラジオ、現地の人々から基本情報要素を入手し、これを自分の言葉に直して口頭で説明できな
ければなりません。上官が現地の状況を把握するためです。

この任務をこなすためには、新聞、雑誌、テレビのニュースで頻繁に使われる語彙が必要です。
このような高度な語彙を積み上げていくためには、より体系だった勉強法が必要になります。
まず、ニュースを「事件、事故」「政治」「経済」「教育」「科学技術」「国際問題」「スポ
ーツ」などに大別します。

そして週ごとにテーマを設定し、例えば、事件の記事を毎日ひろっていきます。
テーマを絞ることで、事件を説明、描写するために必要な言葉や慣用表現、文法が自然と溜ま
っていきます。
4〜5件もこなせば、

 "according to the authority"(当局によると)とか 
 "arrested under the suspicion of murder"(殺人の疑いで逮捕)
 "indicted for kidnapping"(誘拐の罪で起訴)あるいは
 "motive is not known yet"(動機は不明)

などの慣用表現や語彙がたまり、事件記事に共通のパターンが見えてくるでしょう。

興味のある記事を見つけたら、それを5W1Hにしたがって一番簡単な英文にしてみましょう。
最初は下書きを読んでもいいですが、見ないで言えるようになるまで反復練習してください。

しかし棒読みの丸暗記ではないので注意してください。あくまで基本情報要素に基づいて、文章
をそのつど作っていく要領です。

ではここで、イラクで拉致され殺害された日本人旅行者について説明してみましょう。

5W1Hは、
 When: October 2004
 Who: Japanese tourist/ terrorists
 Where: Iraq
 What: kidnapped and killed
 Why: to scare and force foreigners out of Iraq
 How: by beheading
 In October 2004, a Japanese tourist was kidnapped and killed.
 Terrorists beheaded him to scare and force foreigners out of Iraq.
 
 (2004年10月、日本人旅行者が誘拐され殺害された。
  テロリストはイラクの外国人を脅し、国外に出すためにこの日本人を斬首した)

最初はこの程度の簡単な事実関係で充分です。

しかし、レベル2では、文章(sentences)がつながった段落単位(paragraphs)で話せるこ
とが必要なので、これがスムーズに言えるようになったら、徐々に肉付けしていきます。
例えば、

 According to the media, in October 2004, a lone Japanese tourist, a young male
 who had wished to see the war by himself, entered Iraq ignoring the Japanese
 government's warning not to.
 He was promptly kidnapped by terrorists.
 They beheaded him and aired it in internet to scare and force foreigners out of
 Iraq.
 After that, there was an outcry to blame those Japanese citizens who dare to
 enter the terrorists infested nation.
 
 (報道によると、2004年10月、日本政府の警告にもかかわらず、戦争を自分の目で確
  かめたいとイラク入りした一人旅の日本人がテロリストに即座に誘拐された。
  テロリストは日本人旅行者を斬首し、その映像をインターネットで放映した。
  イラクにいる外交人を脅し、追い出すためである。
  このあと、テロリストがはびこるこれらの国々にあえて入る日本市民に対する非難の声が
  沸き起こった)

このような要領で項目ごとにペットトピックを増やしていきます。1年間この努力が続けば、
たいていのニュースの事実関係は自由に話すことができるようになっているでしょう。

最後は「日常起こりえる、より複雑な状況」です。

「より複雑な状況」(With a Complication)とは、何らかの事情でゴールの達成が難しくな
る場合のことです。

詳しくは付録の実技編で説明しますが、ここでは典型的な「より複雑な一例」を紹介します。
状況はこうです。

あなたはアメリカに出張で来ているビジネスマン(自衛官でも可)です。
これから重要な会議が控えています。

昼食を終えて気がつくと、上着に大きなケチャップのシミがついています。近くのドライクリ
ーナーに行って、会議が始まる前にシミを落としてもらってください。
試験官がドライクリーナーの店員になります。

この程度の状況なら、レベル1+(プラス)でも充分に対処できます。例えばこのように持っ
ていけば良いでしょう。

 “Hello there. I need your help.
 Would you please remove this stain for me?"
 
 (こんにちは、ちょっとお願いできますか。
  このシミを取っていただきたいんですけど)
シミという単語を知らなくても焦らないでください。ここがコミュニケーション戦略の見せ所
です。

 "My jacket became dirty"
 (上着が汚れちゃったんです)
 
 "Could you clean my jacket?"
 (上着をきれいにしてもらえますか)
 
 "I would like you to get rid of this"
 (これを取ってください:シミを指さして)

ここでも、中学3年生の動詞で対処可能です。
ところが店員はこう応対します。

 "I am sorry ma'am/sir, our delivery truck to the washing factory had already
 come and gone.
 We can't clean it today......."
 
 (申し訳ありません、お客様。ドライクリーニングの工場にいくトラックはもう出てしまい
  まして、今日中にはちょっと……)

まずは焦らず、あいづちでもうちながら次の言葉を考えましょう。

 "Oh, I see.......I am in trouble now"
 (ああ、そうですか。困ったな)

難しく考えないで、同じ状況だったら日本でもするようにもっていってください。

 "Is there any other drycleaners nearby?"
 (このへんに他のドライクリーニングがありますか?)
 "Is there a department store or a clothing store nearby?"
 (このへんにデパートか洋服屋がありますか?)

難しい言葉も文法もいらない。相手の言うことが正しく理解でき、これまでに積み重ねてきた
ことを活用できれば、この苦境を脱することができます。

これができれば、レベル2です。


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