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◆【軍隊式英会話術】 vol.8
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最低基本会話「1+(プラス)」を目指す Takashi Kato
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8時間目 最低基本会話「1+(プラス)」を目指す
ILR(政府機関言語会議テーブル)は1+(プラス)を、日常生活のなかで会話を始め、維
持し、社会生活上必要な事柄を達成できる語学力と規定しています。
1+スピーカーの話しぶりは、短い独立した文章の連続という特徴があります。
初歩的な文法は理解しているものの安定しておらず、関係代名詞を使った修飾などで文章が複
雑になると、とたんに間違いが多くなります。
発音も向上しているのですが、日本人が苦手な音、例えば、「L」「R」「TH」「V」などはま
だ分かりづらいものです。
1+は、旅行などで異国の地に放り出された場合に必要となる、ホテルや交通機関でのサバイ
バル英語に加え、普通の生活も送れるだけの語彙、文法、慣用句を備えた語学力のことです。
まだ流れのある文脈レベルでは話せないものの、0+と比べると長足の進歩です。キャッチボ
ールのような会話の体裁が、曲がりなりにも整い始めるのはこのレベルからなのです。
前述した0+スピーカーの英語は、
Tank, station, front (戦車、駅、前)
Airplane come (飛行機 来る)
Soldier in house on hill (兵隊 室内 丘)
Mine , bridge, near (地雷、橋、近く)
Have guns? (銃 あるか?)
といった単語の羅列で、まるで電報文(telegraphic utterances)です。しかし1+になる
とこれが、
There is a tank in front of that station
(あの駅の前に戦車があります)
Enemy fighters are coming
(敵戦闘機が来ます)
Enemy soldiers are in that house on the hill
(敵兵が丘の上の家にいます)
There are anti-personnel mines near that bridge
(あの橋の近くに対人地雷があります)
Do you have any weapons?
(何か武器を持っているか?)
のように、より豊富な語彙と適切な文法を備えた文章になります。
ただし、過去・現在・未来を表わす時制の理解が不十分なので、正確に情報を伝達することに
は難があります。
戦車(tank)や飛行機(airplane)や兵士(soldier)がある場所に存在することは分かって
も、それがいつのことなのかが特定できないのです。
つまりこのレベルでは、まだ軍の任務(military mission)や責任ある民間の仕事
(responsible civilian job)では使い物にならないということです。
ILRが求める会話力は、それまでに勉強してきたことの集大成です。
レベル1のことができるようになっても、レベル0+の項目、例えば物の名前や時間、曜日、
天気の言い方を忘れてしまっては、レベル1の認定は受けられません。
したがって、1+スピーカーとしての認定を得るには、まずこれまでに見てきた0+および1
の項目すべてを定期的に復習し、考えないで使える状態にしておかなければなりません。
歩兵将校(infantry officer)になるためには、兵を指揮する能力が不可欠ですが、地図の
読み方(map reading)やコンパスの使い方(how to use a compass)、たこつぼの掘り方
(how to build a foxhole)、小銃の撃ち方(how to shoot a rifle)など、歩兵の基本
(Basic infantry skills)を忘れてしまっては、信頼される小隊長(platoon leader) にな
れないのと同じことです。
次に、レベル2の条件も部分的に満たす努力が必要です。
レベル2は仕事で使える最初の段階であるだけにハードルも高くなります。
0+から1+に達するのと、1+から2に達するのでは難易度も必要な努力も数倍だと思ったほ
うがいいでしょう。
ILRの難しさは直線的に増えるのではなく、レベルの上昇にともない幾何級数的
(exponentially)に増大するからです。
レベル2の認定を受けるためには7項目に合格しなければならなりません。
したがって1+では、このうち5〜6項目をかなり無難にこなせなければならないことになりま
す。
レベル2の項目とは:
1 ナレーション(現在) narration-present
2 ナレーション(過去) narration-past
3 ナレーション(未来) narration-future
4 描写(人物、場所、物) description
5 手順または道順の説明 instructions or directions
6 最近の出来事の説明(事実関係のみ) reporting facts about current events
7 日常起こりえる、より複雑な状況に対処する survival situation with a complication
ここでは、4番目の「描写」にしぼって見てみましょう。
Oral Proficiency Interview: OPI とよばれる口答試験では、二人の試験官が交互に質問を行
ないます。
学生にとっては十字砲火(cross fire)を浴びているようなもので息つく間もありません。
歴戦の勇士やトップガンの卒業生でさえ、冷や汗を浮かべたり、紅潮したりするほどです。
最初の数分はウォームアップで、たいていは学生に自己紹介させます。
軍歴(military background)、学歴(academic background)、家族構成、海外任務
(overseas mission)、趣味(hobbies)などについての情報を引き出すためです。
これをもとに「描写」の対象を探り、あとに続く質問を出していくわけです。
例えば、潜水艦の乗員(submariner)だった学生には
"What does the inside of a submarine look like? Please describe
the area you are
most familiar with"
(潜水艦の内部はどんな風ですか? 一番良く知っている部分を説明してください)
と持っていきます。
海外任務が豊富なベテラン士官や下士官には、
"Which country did you like best?"
(どの外国が一番好きですか?)
"In that country, which area do you remember best?"
(その国でどの地方を一番良く覚えていますか?)
"In that area, did you have a favorite city or town?"
(その地方で、お気に入りの町か村がありましたか?)
"In that town, did you have a restaurant you frequented?"
(その町で、常連だったレストランがありますか?)
"Describe the restaurant so that if I were to go there, I would
recognize it"
(わたしが行ったら分かるように、そのレストランを描写してください)
というように対象を絞り込んでいきます。
学生が一番よく覚えている場所なり、建物なりを特定するのです。
新兵訓練出たて(fresh out of basic training)で人生経験の浅い二等兵や一等兵なら、基礎
訓練時の兵舎(barracks)を描写させるのも良いでしょう。
最初に親元を離れ、ドリルサージャントに昼夜の別なく小突き回された場所は、誰しも覚えてい
るものだからです。
家族の一人を選ばせ容姿を説明させることもあれば、毎日顔を突き合わせていた小銃(rifle)
や多用途車(multi-purpose vehicle)、戦車(tank)、戦闘機(fighter)、軍艦
(military ship)を描写させることもあります。
いずれの場合も、描写のコツは「ビデオを撮るように」上下左右まんべんなく特徴を追っていく
ことです。初対面の待ち合わせの際、電話で自分を説明したり、目印になる風景や物を描いたり
するときの要領です。
「描写」は建物や乗り物、人の身体の部分の名称を覚え、それを修飾する big small,
long/tall, short, wide, narrow, blue, brown, black, white, quiet, noisy,
beautiful, pretty, gentle, kind などの形容詞(adjectives)を増やす絶好の練習になり
ます。
また、and, or, so, as well as, on top of that, besides, not only, but also
など
文(sentence)と文をつなぐ接続詞( conjunction)も同時に覚えられます。
印象に残る風景、人物、物を見たら英語で描写するクセをつけてください。
新聞雑誌の切抜き(newspaper clipping)や、インターネットのイメージを使うのも良いで
しょう。
例えば、エジプトのピラミッドを描写してみてください。
子供でも分かるやさしい言葉を使います。
「三角」「四角」「石」「建物」「古代」「王様」「墓」の英単語が分かればあとは簡単。一
番目立つところから始めます。
"This is a large building made of many stones."
(これはたくさんの石でできた大きな建物です)
"It has four triangle sides and the bottom is a square"
(三角の面が四つあります。底は四角です)
"This stone building is a grave of an ancient Egyptian king"
(この石の建物は古代エジプトの王様の墓です)
思ったより簡単にできるでしょう?
みなさんも身の回りの簡単なものから始めてみてください。
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