元米軍大尉が教える!!軍隊式英会話術
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元米陸軍大尉が教える!![軍隊式英会話術]
   
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【軍隊式英会話術】 vol.7

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◆【軍隊式英会話術】 vol.7
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英語を止めたくなったときには……                   Takashi Kato
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7時間目 英語を止めたくなったときには……



規律が信条の軍隊とはいっても、人は厳しさだけでは育ちません。

厳格さと力の抜きどころ(time to be strict and time to relax)を縦横に織り交ぜ、希望
を与え情熱を持たせてやるのもDLI(アメリカ国防省外国語学校教官)の技なのです。

ここでいう情熱とは「日本語を自在に操れるようになりたい」という気持ちのことです。
「日本語で意志を伝えたい」という願望といってもいいでしょう。

  情熱があれば努力ができるものです。
 (With a passion, you can make efforts)

同時多発テロ後、アメリカの情報機関が人的情報(Human Intelligence: HUMINT)を軽視し
ていたことが明らかになりました。

衛星や偵察機などによるハイテク情報収集(Electronic Intelligence: ELIENT)を過信し、
土地の言葉の分かる人間が、実際に人々の動向を肌で感じ取って得る情報の重要性を忘れてい
たのです。

この反省から、人的情報戦の尖兵(Advanced Guard)を育てるDLIにも巨額の予算がつく
ようになりました。

黒板、チョーク、映写機、VCRはスマートボードに取って代わられ、紙の辞書は配布はされ
るものの、学生は手のひらサイズの電子辞書を手放そうとしません。

しかし、教室環境がどれほどデジタル化されようと、覚える先から忘れてしまう単語や文法を
、歯を食いしばって自分のものにしていくのが学生本人であることに変わりはありません。
こればっかりは先生が代わりに覚えてやれることではないのです。63週間の試練を耐えてい
くうえで、日本語にかける情熱が何よりも大切だという所以(ゆえん)です。

初日のショックで不安げな学生を前に、これから始まる語学習得(language learning)を弓
道(Japanese Archery)になぞらえることにしています。

 「弓をひくプロセスが勉強の過程で、矢が上達のことだとしよう。
 (Let's say pulling the bow is the process of studying and the arrow means
  the progress)
  弦の引きが足りないと矢は遠くまで飛んでいかない。これから先の63週間は、この引き
  の期間だ。基礎が身につくまではどんなに努力しても上達が実感できないものだ。でも、
  矢が放たれる日が来ると信じて頑張ることだ。引きが充分なら、日本語は必ずできるよう
  になる」

この喩(たと)えは気休め(lip service)や空元気(false confidence)を与えるためのも
のではありません。自分の体験からの親身の助言(sincere advice)です。

留学当初、ぼくも語学習得の三重苦、つまり「聞けない、話せない、読めない」のフラストレ
ーションに苦しみました。電話帳のような分厚い教科書をまえに、知らない単語や文法があま
りに多すぎました。

毎晩図書館にこもり週末返上で勉強したのですが、いつまでたっても英語は切れ目ない未知の
音の羅列でした。試験のあとなど、逃げ出したい衝動にかられたものです。
そんなとき、日本留学経験のある英語教授が声をかけてくれました。

 「カトーさん、教科書だけ読んでいたのではダメだ。
 (Reading just textbooks won't get you anywhere)

  ニューズウィーク、タイム、新聞も2〜3紙読みなさい。
  テレビのニュースも見るとイイヨ」
 (You had better read Newsweek, Time and a few papers as well. It would be
  even better if you take a look at news on TV, you know)

 「でも先生、時間がありません」
 (But sir, I don't have time)

 「キミのように一字一句すべて辞書で引いていたら時間はなくなる。量をこなせば、どれが
  大切な言葉なのかが自然と見えてくる。
  辞書はそういうキーワードが分からなかったときだけ引くようにするんだ」

日本では、新しい単語はすべて単語帳に書き出し丸暗記(mechanical memorization)せよ
と教えられてきました。教授の言うことは正反対(total opposite)だったのです。
半信半疑でしたが、すがる思いでした。そうするしかなかったのです。

この日から、学校の勉強とは別枠で40〜50分とり、新聞雑誌に目を通し始めました。分かろ
うが分かるまいが、とにかく毎日ページをめくったのです。

自宅でも車の中でもラジオをつけっ放しにして、生の英語(real English)のリズムに慣れよう
としました。

約1年後、努力は唐突に報われました。

運転中BGMとして「聞き流して」(paying no attention)いたニュースに、ぼくは無意識に
うなずいていたののです。

なぜうなずいているかに気づくまで、たっぷり数秒はかかったと思います。

 「分かった……」
 (I got it ........)

歓喜がジワリと湧いてきました。一人前になれたようで誇らしく、なぜか、恋に落ちたように素
敵な気分になりました。

 (I felt wonderful as if I fell in love)

それまでは「音」を聞き「意味」を探し出して貼りつけ、主語、動詞、目的語の「関係」を英文
法を駆使して理解しようとしていました。英語を聞いてはいたのですが、「理解する作業」その
ものは置き換えられた日本語で行なっていたのです。

二度手間の聴解では、アナウンサーの切れ目ない英語(seamless English)についていけるは
ずはありませんでした。

この日は違いました。
簡単なニュースでしたが、英語で「分かって」いたのです。
翻訳していなかったのです!
この日を境に英語が楽しくなりました。

何を言われているのか、何を質問されているのかが分かるから、受け答えに詰まることが目に見
えて少なくなっていきました。

何度も同じことを聞き返さなければならない煩雑と屈辱(くつじょく)が消え、貯めに貯めてき
た語彙や言い回しをここぞとばかり使いまくったのです。

映画から失敬した気の聞いたセリフ(handy, dandy expressions borrowed from movies)
を使っては、相手の驚く様子を見て「通じている」手ごたえに歓喜しました。

「矢」が放たれた瞬間でした。
「弓を引き絞る努力は無為ではなかった!」

東京に尻尾を巻いて逃げ帰ったり、途中で力を抜いたりしていたら決して味わうことのできなか
った喜びでした。

「キミたちも卒業までに何回も壁にぶつかる。努力にもかかわらず試験に失敗し落ち込むことも
 ある。上達が感じられず焦ることも間々ある。
 そんなとき、この弓のイメージを思い浮かべ、今は弓を引いているんだ、と自分に言い聞かせ
 ることだ。いいね?」

そこで言葉を区切って学生たちを見やります。

歴戦の勇士(War Hero)も高卒の新兵も、その表情はなごみ、目には希望が灯っています。
「力の抜きどころ」が功を奏したようです。

止めたくなったとき、読者の方々もこのエピソードを思い出してください。


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DLIでの授業風景はこちらからどうぞ。
http://www.namiki-shobo.co.jp/gntaisiki/guntaiphoto.html
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【著書の紹介】
米軍将校時代の体験をまとめた本「名誉除隊-星条旗が色褪せて見えた日-」を発売し
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http://namiki-shobo.co.jp/military/shosai/military043.htm
興味のある方はぜひご一読下さい。
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