元米軍大尉が教える!!軍隊式英会話術
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元米陸軍大尉が教える!![軍隊式英会話術]
   
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【軍隊式英会話術】 vol.32

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◆【軍隊式英会話術】 vol.32
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ブートキャンプで鍛えよう!(3)                Takashi Kato
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32時間目 ブートキャンプで鍛えよう!(3)


ブートキャンプの目的は、兵士に不適格な者をふるい落とすこと(screening out those who
are not soldier material)です。

そのためには何が一番効果的な試練だと思いますか?
それは、睡眠時間を削ること(cutting short one's sleep)です。

野営中(bivouac)も歩哨(sentry)に立たなければならず、ふだんからの肉体的な消耗もく
わえ、野外演習2日目には全員殺気立って来ます。

こういうとき、泣いたりわめいたりして感情の抑制ができなくなる者、仲間より楽をしようと
する者をドリルサージャントたちは冷徹なプロの目で見ているのです。

軍隊で成功するためには、ランボーのような超人的能力(super human abilities)もいらな
ければ、ジョン・ウェイン的英雄(a hero like John Wayne)を目指す必要もありません。
辛くて弱音を吐きたくなったとき、ぐっと堪えれば(suck it up)良いだけのことです。
8割がたの人間が不平不満に明け暮れるとき冷静を保てる者は、それだけで尊敬の対象になる
からです。

このような状況下で、戦闘訓練(combat training)が行なわれます。映画でおなじみの、催
涙ガス室体験や実弾を使った敵陣制圧(suppressing the enemy position)訓練です。
ちょっと不安ですが、これも軍隊体験です。

危険が伴う訓練ですから、ドリルサージャントの指示を一句とも聞き逃さないでください。
いわゆる「ガス室」(Gas chamber)というのは防護マスク(Protective mask)に対する
信頼感を養うための訓練です。

もちろん致死性の有毒ガスではなく、警察などが暴動鎮圧用に使うCSガス(催涙ガス: tear
gas)が使われます。
日本でも市販されているペッパースプレーのような効果がありますが、ガス状です。

 "First squad, fall in. Parade rest!"
 (第一分隊、整列。休め!)

 "Gang, listen to me carefully"

ドリルサージャントが "gang" という表現を使いました。もちろん日本語にもなっている「ギ
ャング」の意味もありますが、ここでは「みんな」というような身内意識、仲間意識をこめた
言い方です。

訓練が進むにつれ、一人前の兵士になりつつあるのです。プロ中のプロにこのように呼ばれる
と、何が何でも期待に応えたくなります。

 "Gas chamber is hard. But if you put your mind to it, there is nothing to it. Just
  don't panic"
 (ガス室は難しい。でもやる気を持てば、大したことはない。パニックを起こすな)

"Put your mind to it" は文字通り「心を入れる」の意で、意訳すれば「やる気をだす」とが
「気をしっかり持つ」になります。

"Nothing to it" は逐語訳でも「それには何もない」つまり「大したことはない」とか「なん
ていうことはない」ですね。

 "I say again. Don't panic"
 (もういちど言う。パニックを起こすな)

ドリルサージャントが念を押します。軍では言ったことを繰り返すときに repeat は厳禁でし
たね。必ず Say again です。覚えていますか?

 "Yes, sergeant!"

ガス室の中に入りました。霞がかかったように部屋中真っ白です。これが催涙ガスです。しか
し、防護マスクのおかげで普通に呼吸できます。

 "Now, I want you to remove the mask. State your name and social security
  number. Put your mask back on. Clear the mask. I say again, clear the mask"

防護マスクには音声伝達装置がついているのですが、それでもくぐもった音にしか聞こえませ
ん。スターウオーズのダースベイダーが話しているみたいです。

実際、マスクをしていると人の顔の特徴が失われ、あたかもサイボーグかエイリアンと向かい
合っているようです。それでも、なんとか次の単語は聞き取れました。
Remove State Put back Clear でしたね。どれも簡単な言葉です。
それぞれ「取り除く」「言う」「付け直す」「障害物を除く」という意味です。

問題は最後の言葉です。辞書には clear の動詞の意味として「障害物を取り除く」「きれい
にする」とか「のどをすっきりさせる」とあります。

しかし軍隊の文脈ではもっと特殊な意味になります。
この場合「障害物」に当たるのはマスク内に入ったガスのことです。これが潜水学校(Scuba
School)でのことならマスク内の水のことになります。

つまり、息をマスク内に強く吐いて残っているガスを吹きだせ、という指示なのです。これが
分からないと、もうすぐ大変惨めな思いをすることになります。

 "Take a deep breath and remove your mask"
 (深呼吸をしてマスクをはずせ)

ドリスサージャントに肩を叩かれ、指示に従います。

 "Takashi Kato. Social Security # is XXXXXXX"

目を硬く閉じたままそれだけ言うと、マスクを付け直して息を強く吐き、マスクと顔の隙間
からガスを吹きだしました。呼吸は普通にできます。上手くいったようです。

おや、隣の兵隊の様子が変です。地団駄踏んでいます。見ると、レンズの奥で目がかっと見
開かれています。マスクをクリアーしないで呼吸してしまったので、催涙ガスが肺に入った
のです。パニックを起こしています。

 "Clear the mask! Clear the mask!"

大声で言ってもパニック状態の仲間には聞こえません。彼は今にもドアに向かって突進しそ
うです。何もできない自分にこっちまでおろおろしてしまいます。
しかし、自責の念に捕われる必要はありませんでした。ドリルサージャントが、

 "Everybody, remove your mask and sing!"
 (全員マスクを取り、歌え!)

と命令したからです。たちまち辺りで激しい咳が始まりました。細かいガラスの破片が目や
喉の粘膜に刺さったような痛みがおこり、涙と鼻水がとめどなく出てきます。

 "Kato, what do you want to be?"

歌っていなかったぼくにドリルサージャントが聞いてきました。
「何になりたい?」もう紋切り型の答えしかありません。

 "I want to be an Airborne Ranger, Sergeant!!"
 (空挺レインジャーになりたいです、軍曹!)

痛みがいっそう増し、堪えきれなくなったときドアが開きました。みな、一目散に外を目指
します。ドリルサージャントの声が追い討ちをかけてきます。

 "Breathe deeply! Don't touch your eyes! Don't panic and you are a go at this
  station!!"

催涙ガスは一過性なので、飛散してしまえばその効果はたちどころになくなります。だから
訓練下士官が「深呼吸しろ」と言ったのです。
目の痛みでこすりたくなりますが、これは逆効果です。むしろ目を思い切り開けて空気に触
れさせることで、ガスの効果を失くすことができるのです。

最後の "You are a GO at this station" は新兵訓練独特の表現で、 "GO" は「合格」の意
です。

「この訓練でお前は合格だ」と言うことです。
 "You are a NO GO at this station"
 (この訓練でお前は不合格だ)と言われるのが新兵にとって一番辛いのが分かりますね。

さて次は実弾射撃(live fire)訓練です。
これも"You are a GO at this station" を目指して頑張りましょう。


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