元米軍大尉が教える!!軍隊式英会話術
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元米陸軍大尉が教える!![軍隊式英会話術]
   
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【軍隊式英会話術】 vol.33

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◆【軍隊式英会話術】 vol.33
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ブートキャンプで鍛えよう!(4)                   Takashi Kato
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33時間目 ブートキャンプで鍛えよう!(4)


前方やや斜め右に、大きな火の見やぐらのような木造の塔(wooden tower)が建っています。
その上の台座(base)から重々しい銃声(heavy gunfire)が響いてきます。
見上げると、ドリルサージャントの丸つば帽子(campaign hat)が見えます。

軍曹は1連射3〜4発のリズムで機関銃を撃っています。三脚に載せたM60汎用機関銃
(M60 General Purpose Machinegun)です。

強力な30口径のライフル弾(rifle ammunition)を毎分550発撃てる強力な小火器
(small arms)で、有効射程(effective range)は1000メートル以上です。
何発かに1発、曳光弾が(tracer)入っていて赤い弾道(trajectory)が目でも見えます。

弾が吸い込まれていく遠くの山肌(hillside)は楕円形(oval shape)にえぐられ、赤い地肌
を見せています。何年間もの訓練で、何万発もの弾丸を受けているのでしょう。

 "Are you ready?"
 (準備は良いか?)

ドリルサージャントの声がラウドスピーカーを通して聞いてきます。

 "Yes, sergeant"

言いながら右手の親指を上げます。
O.K.(Thumb up)の合図です。

 "James, are you ready?"
 (ジェームス、準備は良いか?)

仲間の兵士(fellow soldier)がやぐらの反対側の塹壕(trench)に身を隠しながらO.K.の
合図を出しました。

いよいよ実弾(live ammo)を使った戦闘訓練の開始です。
今日の目的は、お互いを援護射撃(covering fire)しながら100メートル先の敵陣
(enemy position)に近づき、手榴弾(hand grenade)を投げ込むものです。

機関銃射撃は、訓練にリアリテイを与えるための舞台効果(stage effect)、つまり演出で
すが、音と言うより身体全体で感じる衝撃波は訓練であることを忘れさせます。

M16小銃の安全装置(safety)をはずし、ヘルメットのあご紐(chin strap)をチェック
します。ブザーが鳴りました。戦闘開始です。

 "Cover me! I go!"
 (援護しろ!行くぞ!)

日本語にもなっている cover には、「蓋をする」とか「覆いをする」とか、「題材として取
り上げる」と言う意味がありますね。

これ以外にも「守る」という意味があり、cover me(私を守って)は「弾幕を張って援護し
ろ」ということになります。

 タン!タン!タン!

戦友(comrade)のM16が応えました。
前方でプラスチック製の「敵兵」(enemy soldier)が後ろに倒れました。
ばね仕掛けで(spring loaded mechanism)起き上がってくる前に全力で走ります。

ダッシュの後は両膝をつき、銃床(stock)を地面に突き立てて、倒れこむ際の衝撃
(impact of falling)を身体の左側に流します。
柔道の受け身の要領で左に転がるような感じです。

身体が水平に戻ったところでライフルを構え(aim a rifle)、敵兵をとらえます。

 "I cover you. Run!"
 (援護する。走れ!)

引き金(trigger)を絞ると衝撃が走ります。
M16小銃は高速弾を撃ちますが、弾頭(bullet)が軽いので反動(recoil)は肩をなでるだ
けです。
敵兵に頭を下げさせておくために、1発ずつ2〜3回撃ちます。

反動が軽いとは言っても、全自動(full-auto)にすると銃身(barrel)が蹴り上げられて弾
を無駄にする(waste ammo)からです。

映画では銃によって銃声が違い、誰が撃っているのかが分かりますが、これは演出(stage
effect)です。
人間の耳には、どれも同じように聞こえます。

第一、耳栓(ear plugs)をしていなかったら初弾で鼓膜が麻痺し、あとは「キーン」という
耳鳴りがするだけです。

援護射撃とダッシュを繰り返し、敵陣に接近しました。いよいよ手榴弾の出番です。
手榴弾はサスペンダーの予備弾倉入れ(magazine pouch)の両側に1発ずつ固定されていま
す。

M16を脇において、1発とりだします。丸い安全ピンを引き抜くとレバーが跳びます。
これで手の中にある球体は時限爆弾(delayed bomb)です。数秒後には無数の破片
(countless fragments)が飛び散るのです。

 "Fire in the hole!"
 (爆発するぞ!)

そう叫ぶと、戦友が援護射撃を始めます。
敵が塹壕(trench)に隠れた隙に、上体を低くし砲丸投げの要領で手榴弾を投げ込みます。
ところで、Fire in the hole というのは面白い表現でしょう?
直訳すれば「穴の中に火がある」ですね。いったいどういう意味でしょうか?

語源(etymology)には諸説あります。
むかし、炭鉱(mine)で発破をかけるときに仲間の鉱夫に注意を促したというもの。つまりこ
の場合の hole は炭鉱の穴になります。

たこつぼ(fox hole)に手榴弾を投げ込まれたとき、戦友に叫ぶ注意だという説もあります。
また、初期の大砲(early cannon)では砲尾(breech)にある穴に、火のついた点火棒を押し
当てて発射したからだという人もいます。

いずれにせよ、爆発が近いと言う場合に使う言葉です。花火(firework)をするときにも便利
そうですね。

両手でヘルメットを押さえ、地面に突っ伏した瞬間、爆発が起こりました。
しかし土煙(dust)が収まると再び機関銃の弾幕射撃(barrage)が始まりました。

 "The enemy position has not been destroyed. I say again. The enemy is still there!"
 (敵陣はまだ破壊されていない。繰り返す。敵はまだいる!)

ドリルサージャントの指令に、ジェームスが手榴弾を取り出すのが見えます。

 "Fire in the hole!"

ジェームスが叫びました。戦友が上体を立てる前に援護射撃をしてください。

 "I cover you!"
 (援護する!)

そう、その調子です。

2回目の爆発のでケリがついたようです。

 "Cease fire! Cease fire. The enemy was neutralized. Cease fire"

「撃ちかたやめ!」は以前、射撃場に行ったとき覚えた表現ですね。
しかし、neutralized というのは妙な表現です。
日本語にもなっている「ニュートラル」は「中立」「中性」と言うような意味ですが、それを
動詞にしたものです。

直訳すれば「中和する」「効力をなくす」ということになります。
するとこの文章は受け身形ですから「敵は中和され、効力を失った」になります。

しかしこれではいかにも逐語訳です。「敵は無力化された」とでも訳したら良いでしょうか。
実際には「敵は殺害された」と言うことなのですが、殺伐とした語感を和らげるために、このよ
うな表現を使うことがあるのです。

日本でも昔は潜水艦を撃沈する軍艦を駆逐艦(destroyer)と呼びましたが、海上自衛隊ではも
っとソフトな印象の「護衛艦」(Escort ship)と言っています。同じような心理なのでしょう。

 "Remove the magazine. Pull the bolt to the rear. Then report to safety NCOs
 immediately"
 (弾倉を抜き、ボルトを後ろに引いたら、直ちに安全管理下士官に報告せよ)

訓練場の出口で、GO(合格)をもらった兵たちが一列に並んで安全担当のドリルサージャント
の点検を受けています。

軍曹の前に立ったら予備弾薬入れを確認して「弾薬、薬きょうなし、軍曹!」と申告してくだ
さい。
弾薬が残っていると、今後の訓練で思いがけないときに実弾が発射されるかも知れず大変危険
(very dangerous)です。

それを防ぐためのチェックです。
弾薬は ammunition と言いますが、省略して ammo ということが多いようです。

 "No ammo. No brass, sergeant!"

兵隊が次々に検査を受け、射場(range)から出て行きます。外で待っているドリルサージャン
トはある人数が集まると1人を指名して言います。

 "Soldier, you are in charge. Bring them to the next station!"

Be in charge というのは「責任を持つ」とか「担当する」と言う意味です。担任の先生なら
teacher in charge ですし、当直士官または担当士官なら officer in charge(OIC)になり
ます。

つまり軍曹が言ったのは「お前が指揮を取れ」ということです。
軍隊では階級(rank)が同じでも、上官に「指揮」を任されたならば、その人間の命令に従わ
なければなりません。

Bring them to the next station(次の訓練ステーションにつれていけ)は規律正しく、隊列
を組んで行進して行けという意味で、1人1人が好き勝手に歩いていけということではないので
す。

ところで、新兵訓練(boot camp)では1人で歩いているとき以外はすべて隊列(formation)
と見なされます。

ですから全員の左足が同時に地面を踏むように、指揮に当たっているものは "Your left, your
left, left right left!" というように拍子(rhythm)をとります。

 "Detachment, attention. Right face. Forward march!"
 (分遣隊、気をつけ。右向け右。前へ進め!)

指揮官代理の兵が号令をかけます。けっこう様になっています。
次の訓練ステーションが見え始めたころ、フォーメーションの後ろのほうでおしゃべりが始ま
りました。ドリルサージャントがいないので気がゆるんでいるのです。たちまち歩調が崩れ、
列もバラバラになってしまいました。

 "This is a mob!"

いつの間にやってきたのか、ドリルサージャントが真後ろに立っています。
Mob は統制の取れていない群集または暴徒の意味です。大目玉(be chewed up)を食いそう
です。

 "Detachment, halt! Left face. Parade rest!"
 (分遣隊、止まれ! 左向け左。休め!)
 "You disappointed me, soldiers. No, you people are not soldiers, a bunch of civilians!
 Shame on you!"
 (失望したぞ。お前たちは兵士じゃない。ただの民間人だ。みっともない!)

きつい言葉がツブテのように飛んできます。兵士になるために辛い訓練を耐えてきた新兵にと
って「民間人」と言われることぐらい悔しいことはないのです。

Shame は「恥」の意ですから on you 「きみの上に」で「恥を知れ」とか「みっともないぞ」
になります。

 "You two, fall out!"
 (お前たち2人、隊列から出ろ!)

おしゃべりを始めた2人です。軍曹はちゃんと見ていたのです。

 "Hold your M16 in front of you, arms extended!"
 (腕を伸ばしM16小銃を前に持て!)

罰則(gig)です。軽量のM16ですが、こうして持たされるとものの数分で腕の筋肉に鈍い痛
みがたまり、そのうち痙攣し始めます。

大の男が、うめき声を上げながら銃を水平に保とうとするのですが、徐々に下がっていきます。
ほとんど銃が足に付きそうになったとき、ドリルサージャントは

 "Hold your M16 above your head arms extended. Run around the formation and say
  'No talking in the formation!'"
 (腕を伸ばしM16を頭の上に持て。「フォーメーションではお喋りはしません」と言いながら
  周りを走れ!)

と命令します。ほっとした表情は、使う筋肉が変わったので痛みが嘘のように消えたからです。
2人は言われたとおり、再び行進を始めた分遣隊の周りをライフルを掲げながら走ります。

 "No talking in the formation! No talking in the formation!"

仁王様 にも見えるドリルサージャントは、しかし、力の抜きどころ(when to pull back)を心
得ているのです。

次回は米国陸軍空挺学校(U.S. Army Airborne School)に挑戦します。


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ど古い歴史を持ち、国の歴史とともに、1つの王朝が連綿と続いているのは日本の天皇しか
ありません。しばしばテレビのニュースなどに登場する天皇は、本当は何をなさっている方
なのでしょう。知っているようで意外に知られていない天皇・皇室の世界を、日本人の精神
史の語り部、斎藤吉久が事実に基づいて、できるだけ分かりやすくお話します。
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