元米軍大尉が教える!!軍隊式英会話術
メルマガ登録・解除 ID: 0000229939
元米陸軍大尉が教える!![軍隊式英会話術]
   
バックナンバー powered by まぐまぐトップページへ
1時間目の授業に戻る。


【軍隊式英会話術】 vol.17

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆【軍隊式英会話術】 vol.17
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
プロの聴解力を目指して                         Takashi Kato
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


17時間目 プロの聴解力を目指して
─レベル2 仕事で使える聴解力(初歩)─


日本の高学歴社会を生き抜いてきた読者なら、中学3年間、高校3年間、大学4年間の計10
年は英語を学んでいる勘定になります。ずいぶん長く感じられますが、実際にはどのぐらいの
時間をリスニングに費やしているのでしょう。

ぼくは70年代に中学高校を出ましたが、分からない英語の発音を耳が痛くなるまで聞かされ
た覚えはありません。

聴覚ラボに行っても時間つぶしの色合いが濃く、苦手な音が聞こえるようになるまで全神経を
集中するといったことはなかったように思います。

この個人体験が一般的なものだとしたら、聞けない理由は簡単です。
英語を聞く「絶対量」が足りない。これに尽きます。

聞けない音を意識し、そこに集中しないと効果のある聴解練習にはなりません。
聞き流すだけでは駄目なのです。

しかも、人があることに精神を集中できる時間には上限があります。
したがって、DLI(アメリカ国防省外国語学校)の日本語学生が卒業直前になってリスニン
グに重点を置いても遅すぎます。
よしんば1日5時間費やしても、大半は疲労で無駄になってしまうからです。

土壇場であがいても、レベル2に必要な「リスニングの絶対量」には達しません。
英語を聞き取る能力養成にも近道(shortcut)はありません。

英語を聞き取る耳を育てるには、初日からこつこつ積み重ねていくしかないのです。

これは野球の打撃フォームやゴルフのスイング、ダンスのステップ、武道の形をモノにするの
と同じです。苦労なくプロになれるスポーツなどありませんね。

退屈な反復トレーニングを黙々と続けられる者だけが、プロの域に達することができるわけで
す。

同様に、もし聞き流すだけで英語が聞けるようになったら一億総通訳になるはずですが、現実
はそうでないことを示しています。

レベル2の認定を受けるには、外国人の英語に慣れていない者(英語教師、外交官、旅行関係
業者などを除いた一般人)が普通のスピードで話すことを理解できなければなりません。

反復や言い換えなどの頻度も、1〜1+(プラス)より少なくなります。
話題は個人や家族関係のことばかりでなく、一般に知られた「最近の出来事」
(current events)や日常職務(routine business matters)についても聞き取れなけれ
ばなりません。

過去、現在、未来の聞き分けも、ほぼ完全にできることが前提になります。
最近の出来事について聴解のコツを見てみましょう。

次の文章を、英語を母国語とする知人に吹き込んでもらって教材にしてください。

 According to the Japanese top secret document, out of approximately 100,000
 
 special operation personnel in North Korea, 2,500 operatives are thought to
                        ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 specialize in activities in Japan. There are also sleepers who have infiltrated
 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 into Japan for many years. At the time of the Great Hanshin Earthquake,
 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 weapons such as mortars, which appeared to belong to such sleepers, were
 
 discovered from the wreck.

太字のところ(●から●まで、何か変化を付けて!)がキーワードで、聴解練習ではここに全
神経を集中します。

 (2500人の工作員は日本での活動を専門にしていると考えられる。休眠工作員もいる。武
  器が発見された)

聞こえるようになるまで、10回と言わず20回と言わず聞き続てください。
ここが分からないと、文章の意味がいつまでたっても取れません。

聞き取れたキーワードの意味が分からない場合のみ、辞書を使います。
けっしてすべての単語を調べようとしないこと。

時間がなくなりますし、また、この段階での聴解練習は、キーワードをあぶりだす、言ってみ
れば「取捨選択の耳」(selective listening)を鍛えることにあるからです。
いったんレベル2の耳さえできてしまえば、分からない単語はすべて書き出すことができます。
語彙が爆発的に増えるのはこのときからです。

取捨選択能力(selective listening)を養成するコツは次のとおりです。

日本語は動詞が最後に来ます。日本人の耳はこれに慣れきっているので、漫然と聞いていると
、主語のすぐ後にくる英語の動詞を聞き逃してしまいます。

だから、頭を英語モードに切り替えます。(実際に「これから英語モード」と呼称し、耳の上
にある仮想の英語モードスイッチをひねる動作をしてみてください。自己暗示でもなんでも総
動員しましょう)
主語が聞こえた瞬間、つづく動詞に耳をそばだてる癖をつけるのです。

生まれてからずっと慣れ親しんできた言葉の習慣は、おいそれとは変えられません。
リスニング英語モードをモノにするためには、相当の時間と忍耐がいることを覚悟しておいて
ください。

下線の部分(●から●同様)は新聞に多用される慣用表現で、これらはさまざまな記事を読み
進めるうち、じき慣れますから、いま分からなくても心配しないでください。

次の2例は軍事関係です。

 According to the U.S. Forces stationing in Iraq, two roadside bombs exploded in
                          ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 Bagdad at two separate locations and four U.S. soldiers were killed and three were
 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 injured. The total number of Killed In Action since the beginning of the war has
 ~~~~~~
 reached 3,000.
 (2つの路上爆弾が爆発した。米兵4人が死亡、3人が負傷した。開戦以来の戦死者数は合計
  3000人に達した)

 According to the U.S. NAVY spokesperson, a Chinese conventional attack submarine
                       ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 approached the career battle group including Kitty Hawk without being detected
 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 last October. The sub was discovered by a U.S. recon plane but it was already in the
 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 torpedo range.
 ~~~~~~~~~~~
 (中国の通常型攻撃潜水艦が空母戦闘群に接近した。潜水艦は米偵察機に発見されたが、すで
  に魚雷の射程内に入っていた)

最後は最近の政治トピックを取り上げてみましょう。

 President Bush had a press conference at the White House on the 8th and announced
 that Secretary of Defense Rumsfeld resigned. President nominated Mr. Robert Gate
 as the successor, who was a former director of the Central Intelligence Agency.
 (ブッシュ大統領は記者会見を開き、ラムスフェルド国防長官が辞任したと発表した。大統領
  は後任にロバートゲイツ氏を指名した)

いずれの場合も要領は同じです。
主語を聞き、次に来る動詞に全神経を集中します。
そして、主語と動詞の関係を理解して、もっとも基本的な文意を取るのです。

このとき、ニュースの内容を日本語でも熟知していると、主語と動詞を結び付けやすくなります。
だから、前もって知っているニュースや、関心の深い話題を選んで教材に使うのが良いでしょう。

キーワードが聞け、意味が瞬時に出てくるようになったら、主語や目的語についている
which, that, who, whom などの関係代名詞(relative pronoun)に注目します。
最初の例文で説明しましょう。

 At the time of the Great Hanshin Earthquake, weapons such as mortars, which appeared
 to belong to such sleepers, were discovered from the wreck.

ここでは主語に関係代名詞 which がつき修飾しています。
日本語には関係代名詞はありませんから、修飾部は説明される名詞の前に来ます。
英語では後に来るわけです。だからここでも頭を英語モードに切り替える癖が必要になります。

具体的には which appeared to belong to such sleepers の部分を weapons such as mortars
の前に持ってきて、最後にwere discovered from the wreck をつけてしてやれば意味が通り
ます。
 (休眠工作員の物らしい迫撃砲などの武器が瓦礫の中から発見された)
最後に「当時」にあたるAt the time of を付ければ、
 (阪神大震災当時、休眠工作員の物らしい迫撃砲などの武器が瓦礫から発見された)
完璧なリスニングです。

同様に、
 sleepers who have infiltrated into Japan for many years
も who have infiltrated into Japan for many yearsをsleepers の前に持ってくれば、
 (長年、日本に潜入している休眠工作員)
となります。

焦らず、欲張らず、キーワードの把握と意味付けを徹底することがリスニング上達の鍵です。

次の授業に進む。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
DLIでの授業風景はこちらからどうぞ。
http://www.namiki-shobo.co.jp/gntaisiki/guntaiphoto.html

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

DLIでの授業風景はこちらからどうぞ。
DLI写真館

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【著書の紹介】
米軍将校時代の体験をまとめた本「名誉除隊-星条旗が色褪せて見えた日-」を発売してい
ます。
興味のある方はぜひご一読下さい。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
topに戻る