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◆【軍隊式英会話術】 vol.52
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元気が出る話 ?Takashi?Kato
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読者の皆様へ。
毎号、加藤教官の「軍隊式英会話」を購読いただきありがとうございます。
さて、前回(44時間目)試みました加藤教官の「ナマの講義」が好評でしたので
、今回もう1度加藤教官に「収録」をお願いいたしました。下のアドレスをクリッ
クすると音声が再生できます。
音声版【軍隊式英会話術】
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52時間目 元気が出る話
10数年来の陸軍の知人から、偶然、昇進(promotion)の知らせが同時に入りまし
た。二人とも、「絶対に諦めない」(never?give?up)という決意でプロレベルの外
国語をものにした士官です。読者自身の決意を新たにする意味もありますから、今
回はいつもの勉強を小休止し、彼らの話をしてみましょう。
若くして中佐(lieutenant?colonel)昇進を果たしたのは、90年代後半にDLI
(米国防総省外国語学校)で勉強したHさん。
日本人の母と米国人の父との間に生まれた彼女は、入校当初、幼児訛りが残ってい
ました。
「子供の頃は日本語で育ったのだから、他の学生よりは楽だろう」と考えがちです。
確かに、ごく初歩の日常会話レベルまでならいくらか有利です。
しかしそのあとはむしろハンディになることが多いのです。そこそこの語彙や言い
回しを知っているがために、「意見の主張」「仮定の話」「抽象的な話題」「説得」
など、高度な文法や語彙を必要とする勉強から逃げてしまうからです。
その結果、一生幼児語が抜けない人も珍しくありません。これでは戦友の命や国家
安全保障(national?security)を担う語学兵(military?linguist)や語学士官
(language?trained?officer)としてはとうてい役に立ちません。
聡明なH大尉(当時)は最初のカウンセリングでその危険を理解し、任務で使える
日本語を目標に努力を重ねました。
63週間後の卒業時には幼児語も消え、どこに出しても恥ずかしくない海外地域担
当士官(Foreign?Area?Officer:?FAO)に成長していました。
彼女は「なんでも一番でないと気がすまない」という、アメリカによくいる戦闘的
なA型性格エリートではありませんでした。
「あの大尉は半分日本人だから」というやっかみには一度たりとも耳も貸さなかっ
たばかりか、試験で結果が残せなかったときも「先生、すいませんでした」と頭を
下げて、足早に姿を消しました。
人知れず悔し涙を流していたのだろうと、いまは分かります。アメリカ育ちではあ
ったけれども、祖母や母上に躾(しつ)けられたH大尉は、凛とした、そのうえ礼
節をわきまえた大和撫子だったのです。
あらためて昇進式の写真を見ると、右肩に中佐の階級章をつけている白髪の人物に
は見覚えがあります。もしかすると、いや、おそらく副大統領のようです。
軍服の右胸下の丸いバッジ拡大してみると?Vice?Presidential?Service?Badge?
(副大統領服務バッジ)です。ということは、彼女はホワイトハウス要員だという
ことです。
DLI卒業生の中でも出世頭でしょう。この体験でさらに勢いに乗る若きH中佐が
、次はどこで活躍するのか興味がわいてきました。
政治と軍事の交差点、しかも日本語が不可欠となれば、行き先は狭まってきます。
次に会うのは東京かもしれません。
I大尉に始めて会ったのはDLIでした。ある日、ぼくのオフィスを訪ねてきたの
です。同時多発テロの前で、まだ入り口に検問(checkpoint)もなく誰でも自由に
出入りできた「古きよき時代」(Good?Old?Days)です。
「I入ります。突然お邪魔して申し訳ありません。加藤大尉殿、自分も米陸軍士
官を目指しています。これからよろしくご指導ください」
開口一番そう言いました。躾けを感じさせるメリハリのある日本語だったことを覚
えています。
彼は当時ミシガン州立大学のROTC(予備役士官訓練部隊)に籍を置き、卒業が
間近でした。
しかし、市民権(citizenship)が思うように取れず、大学院に進んで陸軍少尉任
官を目指し続けるべきか、それとも、保安官事務所?(Sheriff's?Office)や州警
察?State?Police)などに活路を見出すべきかで悩んでいました。
前にも書きましたが、日本とは逆にアメリカの大学は出るのが大変です。電話帳の
ような教科書を読む宿題や大小の試験に加え、毎学期リサーチペーパーが課されて
いるからです。
ある課題に関して自分の意見を述べ、それを実例で裏打ちするためには相当な読解
力と英作文能力が問われます。
ROTCはその上に課される特別教科です。ですから外国人がROTCを終了する
ためには、アメリカ人の士官候補生に比べ、文字通り2倍も3倍もの努力が必要で
す。自分の体験から、それは良く分かっていました。
「ここまで頑張って来たんだ。いま諦める手はないぞ」
「自分も、そう思っていました。絶対諦めません」
Iさんはその後、仲間の候補生が次々と少尉に任官するのを見ながら、自らは一兵
卒(enlisted?man)として米陸軍に入隊しました。
将校訓練を終了した者にとっては屈辱だったに違いありません。しかしだからこそ
「この男の決意は本物だ。必ず士官になる」と確信しました。
片目を失いかけた訓練中の怪我を克服し、I特技兵(当時)は第82空挺師団の一
員としてアフガニスタンに従軍。帰国後、大学院にもどって勉強を再開する一方、
古巣のROTCで任官を目指しました。
晴れて少尉に任官したのは2004年7月でした。それから3年と少しで大尉に昇
進したのです。
アフガン従軍、修士号をふくむ学歴、日米合同演習で発揮した語学力、指揮官とし
ての力量、それらのすべてが評価された結果でしょう。
I大尉は今後、H中佐と同じ海外地域担当士官(FAO)を目指したいと言っていま
す。適材適所とはこのことだと思います。
今回お話した二人は、たまたま軍人でした。しかし、やりがいを望むなら、仕事は
何でも良いのです。大切なのは情熱です。
何かをやり遂げる心であり、絶対諦めない決意と言っても良い。これがあれば、人
生たいていのことは成し遂げることができます。
英語をマスターするという目標を定めた読者も、ここを忘れないでください。
Never?give?up!
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