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◆【軍隊式英会話術】 vol.44
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アラスカ冬季訓練で鍛えよう Takashi Kato
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読者の皆様へ。
毎号、加藤教官の「軍隊式英会話」を購読いただきありがとうございます。
さて、今回は新しい試みにチャレンジしました。それは加藤教官が吹き込んだ「ナマの講義」
が聞ける特典です。読者の皆様からのご要望が多く今回実現しました。
テキストと合わせてぜひ聞いてみて下さい。
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【耳で聞く】軍隊式英会話【音声版】
http://www.namiki-shobo.co.jp/gntaisiki/mp3/guntai_mp3_1.html
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44時間目 アラスカ冬季訓練で鍛えよう
"Don't touch with your bare hands!"
(素手で触るな!)
軍曹の声に、M16小銃の取っ手(carrying handle)を握ろうとした手を思わず引っ込めました。テントの設営を終わり、数時間野外に置かれていた小銃を取ろうとしたときです。
"The metal is so cold that your skin will stick to it. If you pull
hard, the skin will come off. Whenever you touch metals, be it a door
knob or a machinegun, always wear gloves. Clear?"
(金属は冷たくなっているので、皮膚がくっついてしまうぞ。無理に引き離そうとすると、皮膚がはがれる。金属に触るときは、ドアノブでも機関銃でも必ず手袋をしろ。わかったな?)
陸軍特殊部隊(Army Special Forces)の軍曹が予備役士官訓練部隊(Reserve Officersユ Training Corp:
ROTC)の士官候補生(cadet)たちの顔を覗き込みながら言います。
ここは米陸軍北方作戦訓練センター(U.S. Army Northern Warfare Training Center)です。アラスカ州立大学のあるフェアバンクス(Fairbanks)から140キロほど南下したアラスカ山脈(Alaska
Range)のふもとに位置しています。
氷河地帯(glacier area)での行軍(marching)、野営(camp)、ロープによる絶壁降下(rappelling)、サバイバル訓練(survival
training)などを行ないます。
"In the Arctic, cold injuries and even deaths can happen everywhere"
(北極圏では、凍傷や凍死の可能性はどこにでもある)
グリーンベレー(Green beret)をかぶった軍曹が候補生全員を集め、続けます。
"Does gas freeze at 40 below?"
軍曹が言う "gas" とは日本語の「ガス」ではなく「ガソリン」のことです。ちなみにイギリスではガソリンを "petro"
と俗称します。
"40 below" は「マイナス40度」のことです。彼は華氏で言っていますから摂氏ではマイナス34度です。「ガソリンは氷点下34度で凍るか?」との質問です。
"No, sergeant. It wonユt"
(いいえ、軍曹。凍りません)
ヘレナという北欧系の女性候補生が答えました。ヘルメットの下から覗く青い目が素敵です。
"What happens then if you accidentally spill it over your feet or
worse yet exposed hand?
(では、それを間違って足や、もっと悪くして素手にこぼしたらどうなる?)
"They will be frozen solid"
(瞬時に凍ってしまいます)
"That is correct. Instant frostbiteノ.bad frostbite"
(その通りだ。一瞬で凍傷だ。重症の凍傷だ)
軍曹が頷きながら、噛んでふくめるように言います。
"Speaking of frostbite, you must change your socks every so often"
(凍傷の話だが、折を見て靴下を換えなければいかん)
"Speaking of" は「〜についてだが」とか「〜について言えば」の意味で、話題を説明するときによく使われますから覚えてください。
"But sergeant, these Bunny Boots are so warm"
別の候補生が足元を見て言います。Bunny Boots (バニーブーツ)というのは、U.S. Army Extremely Cold Vapor
Barrier Boots (米陸軍極寒防湿ブーツ)の俗称です。ゴム製の白いブーツで多少コミカルな外観です。大きな白ウサギの縫いぐるみに似合いそうです。しかし、氷点下46度で6時間は足を凍傷から守る性能があります。
"Yes, they are. Thatユs why your feet will sweat"
(そうだ。だから、足が汗をかく)
"When you stop walking, the body temperature drops and even the Bunny
Boots canユt keep the wet feet warm"
(歩くのを辞めると体温が下がって、バニーブーツでも濡れた足を温かく保つことはできない)
"Clear, sergeant"
(軍曹、分かりました)
"The same is true for other garment"
この the same is true for は「〜同じことが当てはまる」と言うときに使います。the same goes for でも良いでしょう。軍曹は(他の衣服にも同じことが当てはまる)と言ったのです。
"When we cross-country ski, the whole body sweats. If you fall and
break a leg, then, what happens?"
(クロスカントリスキーをするとき、体中に汗が出る。もし転んで足を折ったらどうなる?)
"I will freeze to death on the spot"
(その場で凍死します)
"Affirmative"
(そうだ)
Affirmative は軍隊式の Yes に当たります。
その素気ない調子に候補生たちは互いを不安そうに見やります。
"That brings up another important point. That is the buddy system"
(ここでもうひとつ大切なポイントが出てくる。2人1組のシステムだ)
"Just like in scuba diving, in the Arctic too, you must use the buddy
system at all times so that you watch each other. Clear?"
(スクーバダイビングと同じように、北極圏でもいつも2人1組でいることだ。お互いに気をつけ合う。分かるな?)
"Yes, sergeant!"
"Very well, cadets! Now we practice snowshoeing using the buddy system"
(大変結構、候補生諸君!ではこれから2人1組でかんじきの訓練をする)
バニーブーツだけでも底が厚くて歩きづらい(hard to walk)のに、米陸軍のスノーシューズ(かんじき)はかなり大きいものです。普通に歩くと反対側のかんじきを踏んでしまい、転倒します。しかも小銃を肩にかけているので、よけいバランスが取りにくいのです。
今回は、軍曹の指示でヘレナと組みました。氷河もみえるアラスカ山脈の荒野(the wilderness of the Alaska Range)を美人候補生と行軍するのですから、内心、悪い気はしません。
5キロぐらいのコースを一周するだけですが、バランスをとりながら深い雪の中を歩くので、けっこう堪えます。おのずと息が荒くなり汗ばむぐらいです。
"This is harder than it looks, you know"
(見るより難しいな)
"I am out of breath"
(息が切れるわ)
ヘレナの頬(cheeks)は上気して赤みがさしています。形の良いアーモンドのような碧眼が、深呼吸するたびに前髪から見え隠れしています。森の妖精(fairy
of the wood)が目の前にいます。
"Letユs go back to the base camp before it gets dark"
(暗くなる前に前進基地にもどろう)
そういって再び歩き出した矢先でした。ヘレナがバランスを崩してつんのめり、倒れまいと駆け足になりました。その拍子で、首にかけていた認識票(dog
tag)が躍り出ました。
アルミ製のタッグは大きな弧を描いて彼女の左頬に当たると、そのまま張り付いてしまいました。氷点下30度の空気にさらされた薄い金属片は瞬時に冷え、それが上気した皮膚に接触した瞬間、凍り付いてしまったのです。
ヘレナが反射的に(automatically)手をのばしました(tried to touch it)。
"Donユt touch it!"
(触るな!)
振り返るヘレナに言います。
"Your skin will come off"
(皮膚がはがれてしまうぞ)
妖精の顔に恐怖が走りました。無理もありません(That is understandable)。陶磁器のような肌に大きな傷が付いてしまいまうからです。パニックを起こさせないことです(It
is important not to let her panic)。
"Donユt worry, Helena. You will be all right"
(ヘレナ、心配要らない。大丈夫だ)
その調子です(Thatユs it)。元気付けてください(Cheer her up)。
要は認識票を温めてやれば良いのです。人間の身体の中で一番熱があるのはどこですか?そう、わきの下です。だから寒いとき、人は無意識に手をわきの下に挟むのです。
"Helena, come here slowly.....so that you wonユt fall"
(ヘレナ、転ばないようにゆっくり来て)
そうです(Way to go)。落ちつかせてください(Make her calm down)。防寒服の前を開けてください。認識票が張り付いた彼女の頬をわきの下に挟むのです。
"Helena, place your cheek with the dogtag underneath my left armpit,
o.k.?"
(ヘレナ、認識票が張り付いた側の頬をぼくの左のわきの下に持ってきて)
何のことか分からず躊躇(she is hesitating)しています。説得するのです(Talk her into it)。
"Just do it, Helena. Trust me"
(いいからやるんだ、ヘレナ。ぼくを信頼しろ)
"I trust you"
ヘレナがおずおずと顔を防寒服の下に持ってきました。認識票を動かさないように、ゆっくり彼女の頬をわき腹に当ててください。
防寒服を彼女の頭の上に被せ、外気を遮断します。彼女の頭を、服の上から抱きかかえる形です。数分経ちました。彼女はじっとしています。完璧な信頼を感じます(Feeling
the complete trust)。
しかし、傍から見たら2人はどう見えるのでしょうか?
"O.K. Helena, come out slowly"
(よし、ヘレナ、ゆっくり顔を出して)
恐る恐る顔を出しました。認識票はまだ付いたままです。
"Is it still there?"
(まだ付いてる?)
彼女の口がそういった時、ドッグタッグがポトリと落ちました。頬には少し長方形の赤みが残っていますが大したことはありません(nothing too
serious)。
"It is gone"
(もうないよ)
青い瞳に安堵とそして喜びが溢れ、きらめきます。
"Thank you! Thank you so much!"
言いざま、ヘレナが今度は本当に抱きついてきました。防寒服を隔てた、不器用な抱擁(awkward embrace)です。しかし、これが戦友同士が助け合うと言うことです。
もっともヘレナとなら、戦友以上の抱擁もしてみたいものですが。
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