元米軍大尉が教える!!軍隊式英会話術
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元米陸軍大尉が教える!![軍隊式英会話術]
   
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【軍隊式英会話術】 vol.36

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◆【軍隊式英会話術】 vol.36
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エアボーンスクールで鍛えよう(3)              Takashi Kato
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36時間目 エアボーンスクールで鍛えよう(3)


 "Soldiers, you have basically made it"

黒の野球帽(baseball cap)に一等軍曹(Sergeant First Class: SFC)の階級章(rank)を
つけたブラックハットが学生に言います。

エアボーンスクール第三週目の初日です。
この場合、Make it というのは「作る」ではなく「やり遂げる」とか「成功する」です。
ですから「きみたちはおおむねやり遂げた」という励ましの言葉になります。

 "During the Jump Week, we don't harass you any more because you are almost
  Airborne. Do you follow me?"
 (ジャンプウィークではもう嫌がらせはしない。きみらはほとんど空挺だからだ。分かるか?)

最後の follow me は「後に続け」ではなく「説明についてくる」つまり「分かる」という意味
です。
口語表現で "I follow you"「分かった」 "I am not sure if I follow you"「よく分かりません」
などのように使います。

 "Do you buy that?"

後ろの学生が聞いてきました。
Buy には「買う」という意味のほかにも「賛成する」とか「信じる」の意味合いもあります。
「ブラックハットの言ったことを信じるかい?」と聞いてきたのです。

 "We will find out soon enough"

と答えてやりましょう。Find out は「自分の体験を通じて分かること」です。
Soon enough は直訳すれば「充分早く」ですが「すぐ」くらいの意味です。「すぐ分かるさ」
と答えたわけです。

 "Soldiers, we now march to the airfield. Drill sergeant, front center!"
 (これから飛行場まで行進する。ドリルサージャント、前へ!)

いよいよ本物の飛行機からの降下です。
興奮(excitement)と不安(fear)が入り混じった気持ち(mixed feelings)です。
憧れの空挺徽章と地上に激突した人形の姿が交錯します。

ドリルサージャントといえど初降下(the first jump)を控えた気持ちは同じです。
不安を吹き飛ばそうと、軍曹は空挺行進歌(Airborne cadence)を始めました。

 C-130 rolling down the strip
 Airborne daddy on a one way trip
 Mission uncertain, destination unknown,
 We don't know if we're ever coming home
 Stand up, hook up, shuffle to the door
 Jump right out and count to four
 If my main don't open wide
 I got another one by my side

C-130は米空軍で長らく使われているプロペラ4発の中型輸送機です。
Strip は細長い場所、つまり滑走路のことです。
Airborne daddy とは何でしょう? daddy は現在では「パパ」ですが、しばらく前は「奴」
とか「野郎」の意味でした。ですから「空挺野郎」ですね。
One way trip は文字通り「片道旅行」つまり「帰ってこない任務」のことです。落下傘兵の
決意が伝わってきます。
My main は my main parachute です。文法的に言えば単数形名詞ですから、動詞は doesn't
でしょう?
しかしここでは歌いやすくするためにわざと don't を使っているのです。
このほうが荒削りでタフな印象を与える効果もあります。日本語でも歌ってみましょう。

 C-130が滑走路を進んでる
 空挺野郎は片道任務だ
 任務は不透明、目的地も不明
 帰ってくるかどうかも分からない
 立て! フックアップ! ドアへ向かえ!
 飛び出して4秒数えろ!
 主落下傘が開かなかったら

ここにもうひとつあるさ民間のジェット旅客機(civilian passenger jet)を見慣れた目には
C-130 はそれほど大きな機体ではありません。

しかし、迷彩塗装(camouflage paint)を施した太目の胴体(thick fuselage)には威圧感
(intimidating)があります。

機体内部(interior)もダクトや配線がむき出しで(exposed)お洒落(sophisticated)な
旅客機とは大違い(totally different)です。
いかにも無骨な機械(rugged machine)といった感じです。

いよいよ搭乗(get on board)です。初降下は主落下傘と予備落下傘だけの軽装(lightly
equipped)ですから、歩くのも比較的楽です。
しかし二回目からはラックサックを予備落下傘の下に、小銃を身体の側面に装備しますから大
変です。

C-130へは後部の貨物ドア(rear cargo door)から入ります。背の高い兵が先頭です。降下
ドアは後ろにあるので、背の低い兵から飛び出すことになります。どうやら我々が一番手です。
エンジンがかかり機体が動き始めました。プロペラ機なのにすごい加速です。

簡易座席にすし詰め(packed like sardines)の我々は身動きもならぬまま機体後方に押しつ
けられます。通勤ラッシュの満員電車(packed train during rush hour)を思い出します。

 "3 minutes to DZ!"
 (降下地域まであと3分)

降下長(Jumpmaster)のブラックハットが叫びます。防音の施されていない軍用機内は地下
鉄並みの騒音(as noisy as subway)です。
耳栓(ear plugs)もしているのでブラックハットの声は聞こえません。
しかし、身体が自然に反応します(the body responds naturally)訓練の賜物です。
我々も指を三本上げ "3 minutes!" と復唱します(recite)

 "Stand up!"
 (立て!)
 "Hook Up!"
 (パラシュートをフックアップしろ!)
 "Check parachutes!"
 (落下傘確認!)

自分の前に立つ兵士の落下傘を目視で確認したら、相手の腿を思い切り叩きます。これが先頭ま
で連鎖します。

来ました!降下長に準備完了のサインを出してください。そう、親指を上げる(thumb up)あ
のサインです。

 "All O.K. Jumpmaster!"
 (準備完了、降下長!)
 "1 minutes!"
 (あと1分!)

降下長がドアを上に跳ね上げました。途端にジェット燃料の臭い(fume of jet fuel)が機内
(cabin)に充満(fill)します。
降下長が機外に身をそりだすようにしてドロップゾーンの安全を確認しています(making sure
of the safety)。

 "Stand at the door!"
 (ドアに立て!)

降下長がにらんでいます。プロの目が「足がすくんで動けなくなっても蹴り出す」(Even if you
freeze, I will kick you out of my plane)と言っています。

 "Yes, Sergeant Airborne!!"
 (はい、空挺軍曹!)
 "Go!"
 (行け!)

Airborne! と叫んだつもりですが、時速数百キロの気流の轟音にかき消されました。ジャンプブ
ーツがばたばた揺れています。

 One one thousand, Two two thousand, Three three thousand, Four four thousand.

数え終わった時、肩をぐっとつかみあげられるような力を感じました。開傘したのです。

 "Check canopy!"
 (パラシュート確認!)

丸いT-10型落下傘がきれいに開いています。
カラフルな民間のものに比べ、お世辞にも見栄えがいいとはいえないオリーブドラブ色ですが、
今日ばかりは一輪の花のように見えます(looks like a flower)。

 "How quiet and peaceful!"
 (なんて静かで平和なんだ!)

思わず英語が出ましたね。そうです。今聞こえるのは、空気をはらんで降下するパラシュートの
衣ずれのような音だけです。
上空を仰げば数秒前に飛び出したC-130 がぐんぐん遠ざかっていきます(C-130 is rapidly
flying away)。
しかし、油断は禁物(inattention is a no-no)です。眼下に地面が迫っています(the ground
is approaching below)。
古タイヤを燃やして風向きを知らせるブラックハットたちや万一に備える衛生兵(medic)の姿
が見えます。

 "Face the wind! Face the wind! Watch the smoke!"

ブラックハットが拡声器を使って指導します。ここのFace は動詞で「向かう」とか「面する」
の意味ですから「風に向かえ」つまり「風上に向かえ!」です。
降下速度を少しでも殺し(slow the descent)、着地の衝撃をやわらげるためです(soften
the landing)。
「古タイヤの黒煙を見ろ」と言うのはこのためです。

 "Watch the horizon! Do not anticipate landing! Put your knees together!"
 (水平線を見るんだ!着地を予期するな!膝をそろえろ!)

ブラックハットの声が飛びます。地面を見て着地を予期すると、膝がリキんで骨折(broken
bone)の原因になるのです。

 "Almost there, soldier! Easy! Easy! That's it"
 (もう少しだ、ソールジャー!慎重に!その調子だ)

周辺視野(peripheral vision)に地面が現れた瞬間、衝撃(impact)がブーツから膝へ、そし
て身体の側面に抜けました。
訓練(training)で叩き込まれたパラシュートランディングフォール(PLF)のおかげでケガは
ありません。
パラシュートをハーネスからはずしているとブラックハットがやってきました。
直立不動の姿勢(position of attention)をとろうとすると手で制しました。

 "Well done, soldier"

Well done とは文字通り「良く」「やった」つまり「上出来」です。転じて「おめでとう」と言
うときにも使われます。

 "Thank you, Sergeant Airborne!"

するとブラックハットがゆっくり敬礼(salute)し、

 "You are Airborne too, soldier"
 (ソールジャー、きみも空挺だ)

おだやかな口調(gentle tone)です。そうです。米陸軍のエリート、空挺になったのです。

 You have done it! (やり遂げましたね)

 "Yes, I have done it! I am AIRBORNE!"


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