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◆【軍隊式英会話術】 vol.30
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ブートキャンプで鍛えよう! Takashi Kato
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30時間目 ブートキャンプで鍛えよう!
初めて本物の軍隊に遭遇するのが新兵訓練です。英語で Boot camp と言います。Bootは軍靴
(ぐんか)のことで、新兵の意味もあります。
ごつい軍靴で足にマメを作ったり、服装検査 (uniform inspection)に備え朝夕顔が映るぐ
らいピカピカに磨かなくてはならないブーツは、民間人生活との決別の象徴です。
そのブーツを履いて野営や駐屯地(Camp)生活を送る。そんな意味もあってブートキャンプと
言うのかもしれません。
Drill Sergeant(ドリルサージャント:訓練下士官)に四六時中小突きまわされるブートキャ
ンプは、不適格な者をふるい落とすスクリーニングであると同時に、ゆるんでいた生活習慣や
人生観のタガを締めなおす修練の場でもあります。
運動不足(lack of exercise)で、たるんだ腕や腹もまたたく間に引き締まります。
映画やドキュメンタリーで見ると、ちょっと怖い通過儀礼(rite of passage)ですが、旧日
本軍で横行した新兵いじめのような、理不尽で不合理なものではありません。
耳元で炸裂するドリルサージャントの怒号すら、実は入念に計算され、何回となくリハーサル
された絶妙の演技なのです。
えっ、好奇心が湧いてきた? 自分を変えてみたい? メタボに別れを告げたい?
了解しました(Roger that)。では、一日入隊してみましょう。
軍隊の朝は早いのですが、新兵訓練はことさらです。朝4時ごろ、プレスのきいた野戦服にピ
ストルベルト、丸つば帽子のドリルサージャントが兵舎に現れます。
この丸つば帽子は新兵に Magic hat(魔法の帽子)と呼ばれています。ドリルサージャントが
言うことは魔法のように何でもかなう、つまり、訓練下士官には決して逆らえないという意味
です。
"Wake up, people! Move! Move! Move!"
(起きろ!ベッドから出るんだ!)
Peopleは「人々」とか「民衆」の意味ですが、ドリルサージャントが使うとやや相手を下に見
る響きになります。「お前たち」に近いでしょうか。
"PT formation in 5 minutes at the parade ground. Better hurry up!"
(練兵場で整列。あと5分だ。急げ!)
PT は "physical training" の略で体力練成です。
まだ暗いうちから大隊全員が体操のために整列するのです。
文法的には "You had better hurry up!" なのですが、軍隊英語は早口なので "Better
hurry
up!" に聞こえます。
新兵訓練を行なう基地はどこも同じような作りで、行進などをする練兵場を囲むように各中隊
の兵舎(Barracks)が並んでいます。
日本語になっているバラックは「掘っ立て小屋」を意味しますが、兵舎は建物の作りが粗末な
わけではありません。
多くは今でも二階建ての木造で、大部屋で大人数の新兵が共同生活を送ります。
鉄パイプと網でできた実用一点張りの二段ベッドを bunk と呼びますが、Bunkmateといえば
ベッドの上と下で寝起きを共にする兵隊仲間のことです。
軽いウォームアップのあと、朝礼台のドリルサージャントが直立不動の姿勢
(position of attention)になって言います。
"The next exercise is the push-up!!"
(次の運動は腕立て伏せ!)
Push-up は文字通り(身体を)押し上げるということです。新兵たちが最も嫌う種目です。
"One, Two, Three, One. One, Two, Three, Two. One, Two, Three, Four........."
1秒に1回ぐらいのゆっくりしたペースですが、これが一番辛いのです。勢いがまったく殺さ
れ、筋肉の力だけで全体重を支えなければならないからです。
25回に達するころには、そこここでうめき声が漏れはじめます。もう駄目だ、というところ
で、
"Halt!"
(止め!)
力の抜きどころを心得た軍曹の一言に救われます。しかしすぐさま「気をつけ」の姿勢で、
"More PT, drill sergeant, more PT. We like it. We love it. We want
some more of
it. Make us sweat, drill sergeant. Make us sweat."
(軍曹、もっと運動させてください。運動が好きです。もっと汗をかかせてください!)
と全員で大合唱です。ドリルサージャントはおもむろに、
"Yes, we will"
(もちろんそうする)
と答え、次の種目に移ります。
ところで、ここでの make は「作る」ではなく「させる」を意味する使役動詞として使われ
ています。
それなら have や let でも、いいはずですが、やはりここでは一番意味が強い make なので
しょう。
ついたてもカーテンもない浴室でシャワーを浴び、野戦服に着替え、兵舎の清掃を終えると
朝食です。
軍隊では食事のことを chow とか、mess と言い、兵隊食堂なら mess hall。
士官食堂なら officers' mess。下士官食堂なら NCO(Non Commissioned Officer)
mess、そして食堂を管理する炊事係軍曹は mess sergeantになります。
mess には「まずい食事」とか「ごたごた」「混乱」という意味もありますが、「まずい食
堂」とか「士官のごたごた」「混乱した軍曹」などと訳さないようにしてください。
chow は「飯」とか「食い物」みたいな意味で、こちらもあまり食欲を誘いません。
しかし訓練中は次の食事が唯一の楽しみになります。卵と肉、パン類をコーヒーで流し込む
軍隊飯(Army chow)ですが、まんざらでもありません。
もっとも食べ過ぎるとあとの訓練でえらい目にあいますからほどほどに。
一息つくと行進の練習(marching practice)です。号令を瞬時に理解することができない
と、懲罰の腕立て伏せが待っています。
"Fall in!"
(整列!)
ドリルサージャントの凛とした号令が腹まで響きます。小隊の列についてください。
軍曹たちの軍隊英語では"Attention!"(気をつけ!)は「ハッテー、ショ!」。
"Right, face!"(右向け右!)は「ラー、フェ!」としか聞こえません。
"Left, face" (左向け、左!)は「レー、フェ!」。
"About, face!"(回れ、右!)は「アッバー、フェ」です。最初の音に耳を集中すると聞き取
れます。
"Right, face!"
"Left, face!"
"About, face!"
ドリルサージャントが1人1人の動作を入念にチェックしています。
周りの兵隊の真似をしても駄目です。プロの目は、一瞬のためらいも見逃さないからです。数
百人からなる大隊が一糸乱れぬ行進をするためには、全員がシンクロナイズドスイミングのよ
うに動かなくてはならないのです。
たった1人の間違いでも、パレードの中では目だってしまいます。
だんだん反応が速く、正確になってきました。ドリルサージャントの軍隊訛りにも慣れてきた
ようです。
聴解力は、このように動作と結びつけるとぐんぐん伸びます。
音と意味が、「身体の記憶」になると言ってもいいでしょう。こうして覚えた言葉は忘れない
ものです。
次回は cadence(行進歌)に挑戦してみましょう。
次の授業に進む。
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ど古い歴史を持ち、国の歴史とともに、1つの王朝が連綿と続いているのは日本の天皇しか
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なのでしょう。知っているようで意外に知られていない天皇・皇室の世界を、日本人の精神
史の語り部、斎藤吉久が事実に基づいて、できるだけ分かりやすくお話します。
斎藤吉久(さいとう・よしひさ)のプロフィール
1956年、福島県生まれ。弘前大学、学習院大学を卒業後、総合情報誌編集記者などを経て、
現在はフリー。オフィス斎藤吉久を主宰。得意分野は、天皇・皇室、宗教、歴史、食文化な
ど。雑誌「正論」平成19年9月号に「靖国問題を問い直す9つの視点」、同10月号に「昭
和天皇の『不快感』は本当か」、同11月号に「信仰を忘れた聖職者たち」を執筆。最近の雑
誌発表記事などは「斎藤吉久Webサイト」で読める。
「斎藤吉久メールマガジン」をmelma!より発信中。
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