●著者まえがき
この本は、イギリス陸軍特殊空挺部隊SASが作戦で用いている戦闘術を解説したものである。SASの活動は多岐にわたっている。あるときは一九九一年の湾岸戦争のように敵戦線の後方に潜入し、またあるときは一九八○年のイラン大使館人質事件のように武装テロリストの手から人質を救出するため、建物や航空機に強行突入を行なう。
本書では、各章ごとにさまざまな戦闘術をとりあげているが、その章の数自体がSAS連隊の保持する戦闘術の多様さを示している。
本書を読みすすむにつれ、SAS連隊がこうした多くの戦闘術を世界じゅうの戦場でどのように活用してきたかが理解できるだろう。
SASは五〇年前に北アフリカの砂漠で創設された。それいらい、SASは多くの戦いに参加し、かならずといっていいほど勝利をおさめてきた。戦場の条件も多種多様で、しばしば驚異的な悪条件下で戦わねばならなかったにもかかわらず、SASの隊員たちは勝利をかさねてきた。
その理由は、SAS隊員がスーパーマンだったからではない。ハイテク装備や最新鋭兵器を利用することができたためでもない。
もちろん、SASはそうした兵器類を手に入れることができるが、それよりも勝利の要因は、個々の隊員が受けている広範囲で徹底した訓練にある。
隊員たちは戦争のあらゆる方面について訓練を受けているだけでなく、任務の遂行に必要な肉体的精神的強靱さを持っている。
なぜなら、SASの成功の基礎は、過去においても未来においても、それぞれの隊員自体にあるからだ。勝利をおさめるのは彼らだ――なぜなら彼らはしばしば信じがたいほどの苦境に対して、自分の命を賭けて挑戦するからである。その彼らに本書を捧げたい。
マイク・ロビンソン
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