まえがき(一部)
成功した米国の起業家にして超富豪であるイーロン・マスク氏(1971〜)は、有人宇宙船による火星探査、そしてさらには火星への人類の《移住》に対して終始一貫、並々ならぬ意欲を示しています。
その根本の動機について本人がこう語っています。
地球人類がなにかの拍子で将来滅亡するときに、それまでの人類の営為や文明がぜんぶ宇宙から消えてしまう。それを考えると、とても残念であるから、今から、地球外の惑星──そのひとつとして火星──に人類文明を移植しておいて、宇宙における人類史の継続を図りたい……のだそうです。
このように、絶滅して無に帰してしまうことを嫌忌(けんき)する感情は、ひとりマスク氏にかぎらず、一神教圏では、総じて強いのではないでしょうか。
ところで、ここで私は、《確率を計算すれば必ず兆候もあるはずの宇宙人が、見当たらないのは何故か?》と問うた「フェルミのパラドックス」につき、あらためて考察を試みたいのです。
エンリコ・フェルミ(1901〜54年)は、戦前のイタリアから米国に渡り、原爆の開発にも重要な貢献をした、ノーベル物理学賞受賞者です。
そのフェルミが1950年の夏、ロスアラモス国立研究所の数名の同僚科学者たちと、世間の関心が高い「空飛ぶ円盤」が登場するSFをめぐって、食堂で座談に興じたそうです。
「空飛ぶ円盤」なんてものは本物じゃなかろうという意見で一同の見解は一致しました。が、フェルミは、「ならば、彼らはどこにいるんだ?(なぜ宇宙人はまったくわれわれに対して存在を表示しないのだ?)」という鋭い問いを投げかけたといいます。
フェルミは若いときから統計学の偉才として名前が轟いていたそうです。フェルミは、全宇宙に過去から今まで存在した地球型惑星の総数を頭の中で概算し、数学的に推理すれば、地球人よりも技術が優った知的文明がおびただしく過去から現在まで存在しているはずである、と考えました。
しかるに現実には、そんな宇宙人の誰ひとり、地球を訪問した痕跡も無いのみか、通信連絡を試みている気配も感受されていない。これは統計学的には説明がつかぬ──と、フェルミはいぶかしんだようです。
私は、この「フェルミのパラドックス」は、次のように考えることで、《謎》でなくなるのではないかと思っています。
手先が器用で知力を発達させた宇宙人は、運が好ければ、みずからの居住惑星そのものをいともかんたんに破滅させてしまうスーパー兵器の発見よりも早く、その惑星住人たちの食糧やエネルギーの不足問題──すなわち住民間の争いの原因──をすっかり解消してしまう何らかの技法を、発明し、実用化し、改善しつつ普及させ得たことでしょう。
じぶんたちの「飢餓」の恐れや悩みから工学的にじぶんたちを解放できた宇宙人は、同じ惑星の住人間で「権力」を競い合う必要がなくなったはずです。
……この機序(きじょ)ですが、もっと意味を噛み砕いて説明をいたしませんと誰もピンと来ないかと思います。のちほど、本文のページにて、合点をしていただきましょう。
目 次
まえがき──すべての地球外文明もAIとともに滅んでいる? 1
第1章 戦争の発生 13
戦争はなぜ起こるのか? 13
古代人類は、なぜ古代文明を築く必要があったのか? 24
国防とは何の関係もなさそうな「ピラミッド」のような建築物を、なぜ古代エジプト王朝は巨費を
投じて建設したのか? 27
古くからの先進文明を誇ったペルシャ帝国はなぜ砂漠出身のアラブ人の支配を受け、イスラム化し
たのか? 33
中国の儒教は、どんな権力風土に奉仕したのか? 37
儒教はどうして近代の国際政治と折り合いがよくないのか? 44
どんな人が「リーダー」として集団を支配したり指導するのだろう? 50
どのようにして戦争は終わるか? 55
なぜ戦争はこの世からなくならないか? 56
そもそも政治とは何か? 58
第2章 戦争の指導 62
弱そうな小国に何か要求をつきつけ、それを呑ませ、相手をして長期の持久抵抗には訴えさせな
い、うまい算段はあるだろうか? 62
モンテスキューは、国家と国民を勝たせてくれる政体についてどう結論したか? 65
大市場を抱える近隣国との経済的なつながりが深くなれば、その侵略から、わが国を守る必要は、
なくなるだろうか? 69
なぜ国や自治体にとって「市街の不燃化・難燃化」は優先政策に位置づけられねばならないか? 77
ロボットや、それを動かすAIが、それを設計した人間に反乱したり、人類全体を支配しようとす
る未来は、来るだろうか? 83
戦争はどのようにして起こらなくなるか? 86
一国の戦争指導部は、エネルギーの生産・貯蔵・搬送・流通に、どのていど配意するのが正しいのか? 87
第3章 台湾をめぐる攻防 114
なぜ米ソ冷戦後、北京政府は台湾を征服したがるのか? 114
なぜ2030年代に向けて台湾をめぐる米中緊張は高まらざるをえないか? 126
ロシアと中国のどちらが、対日戦争能力が大きいのだろうか? 132
中国は本当に戦争を開始するだろうか? 134
中華人民共和国は、わが国や米国とは近代的な価値観を共有していないのか? 137
日本国民が合意している価値観は西洋近代と共通なのか? 139
中国は現代世界のパワー・バランスを変更できると考えているのだろうか? 140
米国と中国は、いずれ戦争しなければならないのだろうか? 144
マッキンダー地政学が予想した「全ユーラシア大陸の制覇」は、簡単なことだろうか? 149
「認知戦」は、いつから始まったのだろうか? 151
なぜ中国はベトナムの支配にてこずってきたのだろう? 152
「米ソ冷戦」の終焉は米中関係をどう変えたのか? 161
将来の米国政府が、中国市場を重視するあまり、中国べったりの路線を選ぶことは、あるのだろうか? 166
米軍はこれから先の数年間、どのようにして中国軍の海洋進出に対抗しようと考えているのだろうか? 173
米軍の「エアシー・バトル」ドクトリンは、台湾の防衛に関しても適用されるのだろうか? 180
ペンタゴンは、日本列島の上にミサイル部隊を布陣させたいと思っているのだろうか? 186
中共による台湾武力占領シナリオにはどんなものが考えられるか? 191
米有力シンクタンクは、台湾防衛に向いたハードウェアとして何を挙げているか? 205
「安保・防衛3文書」とは何か? 211
第4章 無人機は未来戦争を支配するのか 220
低速の自爆ドローンや、非ステルスで亜音速の巡航ミサイルをこちらがいくら放っても、中国海軍
の軍艦はノー・ダメージ? 220
米軍は、台湾をめぐって中国軍と開戦した暁には、何を最も優先するつもりだろうか? 225
日本の政党や公人が、武器輸出を悪いことのように主張することがあるが……? 229
罹災地へ届ける救恤機材にもなり、地域の防衛部隊を補強する機材にもなるアイテムには何がある
だろうか? 231
今日の戦場で、古めかしい「サイドカー」のような車両に、アドバンテージはあるのだろうか? 237
少子化のこれから、「人的潜在力」をどのように活用することが、人々を安全にする道だろうか? 244
戦車はドローンの前に価値を失っただろうか? 251
まず市販のDJI製クォッドコプターが「爆撃機」に改造された 252
旧式戦車は、移動砲台として役に立つ 254
精兵の数が足りない国家は、ひたすら砲兵を強化すべし 256
長距離片道自爆機の成功作「シャヘド136」258
UAVを安く量産できない国は敗ける 262
西側製の戦車も、現代戦場では生き残れなかった 265
戦略報復兵器を援助してくれる外国など、どこにもない 269
ボール紙製の特攻無人機も登場 273
現代国家は砲弾をマスプロし難い理由がある 277
電子妨害を無効化する「マシン・ヴィジョン」279
光ファイバーを10km繰り出しながら飛べるUAV 287
あとがき 289 |