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本書のテキスト部分は、主に竹越與三郎先生著『二千五百年史』(明治42年の第19版)に取材し、兵頭の私見に従って叙述をしたものである。
  副次的に参考にしたその他の文献をいちいち挙げ得ぬことは遺憾とする。
  かく断るからといって、本書中にあり得る誤断や誤記を、たとい部分的にでも竹越先生、その他の参考書の責に帰せしめようとの魂胆は有しない。脚色・加筆・定言・校閲の責任は全く兵頭にある。特に「日本国の始まり」の叙述は『二千五百年史』を大きく逸脱するであろう。
  本書のマンガ部分は、兵頭が『二千五百年史』を繙く以前に想像に基づいてシナリオを書き、それを小松直之氏が作画した。つまりシナリオ部分はことごとく竹越先生の見解とは無関係であるから、その点も、予めご注意ありたい。

 

第1章 ヤマト国と大和政権  5

1 日本国の始まり 6
2 半島からの侵略に備え、徴税と徴兵が始まる 10
3「やまとたけ」の遠征 33
4 神功皇后の外交 36
5 皇統断絶の危機 40
6 新羅の間接侵略にしてやられる 42
7 安全保障の代金として仏教が渡る 44
8 聖徳太子の軍制改革 49
9 軍師「中臣の鎌足」と英雄「中の大兄の皇子」 51
10 官僚制国家と「国民」の誕生 53
11 初の「本土決戦」準備 57

第2章 平城京から平安京へ  59

12 皇族が天皇の首をとる内乱 60
13「藤原の博嗣」の乱 65
14「藤原の仲麻呂」の外征戦争 66
15「吉備の真備」の退場 68
16 藤原「摂関家」の日本支配 73
17「平の将門」の乱 77
18「藤原の道長」の登場 83
19「やまとごころ」の勝利 84

第3章 武士の時代  87

20 武家としての源氏と僧兵 88
21 保元・平治の乱と、平氏の勝利 94
22 後白河法皇の火遊びが始まる 101
23 英雄の晩年の悩み 103
24「源の頼朝」の挙兵 106
25 義仲式「雪ダルマ」戦略の限界 109
26 おそるべき後白河の呪縛 114
27 三光将軍「義経」 116
28 平家のチャンスはいかにして喪なわれたか? 119
29 鎌倉「幕府」という政体革命 123
30 奥州藤原氏の滅亡 128
31 北条幕府が日本の政治道徳を完成させた 132
32 突如やってきたモンゴル皇帝からの降伏勧告使 137
33 二度の元寇をしりぞける 140
34 執権北条時宗の悩み 165

第4章 南北朝の争乱  167

35「両統迭立」時代のはじまり 168
36 護良親王の幕府開設の願望 170
37 東北軍が京都を一時制圧 174
38 南北両朝の和平工作実らず 177
39 明帝国との外交 181

第5章 戦国時代  187

40 公卿、ついに乞食に落ちぶれる 188
41「槍」が弓にとってかわる 192
42 武田信玄の登場と退場 197
43 鉄砲とキリスト教の伝播 202
44「甲州流」軍法の自滅 207
45 豊臣秀吉のカトリック追放政策 209
46 なぜ対明国戦争は失敗したか 212

第6章 天下泰平からグローバル戦の時代へ 217

47 徳川政権による出入国統制 218
48 上方より関東へ 220
49 失業者の叛乱――慶安事件 225
50 失業者の鬱憤晴らし――討ち入り 227
51 ロシア帝国の東漸 232
52「日本国とは何か」の自問 235
53 ロシア人の南下 237
54 フランス革命とオランダの衰退 241
55 捕鯨船、太平洋に進出 242
56 外国船撃攘令と阿片戦争 245
57「雷汞」と「雷管」の製造 249
58 クリミア戦争とプチャーチン 250
59 鎖国政策を終わる 256
60 シナの崩壊はじまる 257
61 南北戦争と軍用小銃市場の激変 258
62「攘夷」の名の下に「倒幕」が始まる 260
63 戊辰戦争から朝鮮戦争まで 263

マンガ 神武天皇の脱出(古代)13
マンガ 必敗と必勝は紙一重(元寇)144
マンガ 半島がまた敵になる日(朝鮮戦争)272

あとがき 289



あとがき

 竹越與三郎先生の『二千五百年史』は、慶應3年10月の大政奉還で記事がおわっている。
  かねて、「本朝歴代天皇戦記」といったおもむきの手軽に読める通史はないのかと探していた兵頭は、この『二千五百年史』(明治42年の第19版)の古本を読んで、あらたに刺激されるところがあり、竹越先生の着眼を大いに参考にさせていただきながら、けっきょくじぶんで小著を構成することにした。
  当初は、日本戦史を古代から現代まで、できるだけマンガで総括して提示するという企図だったのだけれども、小松直之氏お一人にその作画をお願いするのは、作業時間と報酬の釣り合いの関係で、到底無理だとすぐに分かった。
  そこで、やや変則的かもしれないが、小松氏の画筆による3篇の「シーン」を本文の中に挿入する体裁にした。ひとつ大方のご諒承を賜れば幸いである。
  小松さん、どうもお手数をおかけしました。

 歴代天皇が「萬世一系」だったかといえば、そうでもないことは、秘密ではなかった。西洋の史書も渉猟していた竹越先生は、明治時代に、さりげなく、それを書いた。
「三種の神器」もまた、長い時間の中で、古代のオリジナリティが損なわれてしまっているのかもしれぬ。
  ならば、日本の天皇制を、かくも長く担保してきた力の源は何だろう?
  それは、生物学ではなくて、むしろ地理的な「信仰」だろう。
  無私の存在と人工的に規定されるところの神聖酋長を上御一人として戴く「古代南洋天皇制」は、われわれが住んでいる島国にふさわしく、日本が群島国家である限りは、その神髄は文化のどこかに温存されて、幾度でも復活できるのではないかと思える。

 
兵頭二十八(ひょうどう・にそはち)
1960年長野市生まれ。高卒後、北海道の陸上自衛隊に2年間勤務し、1990年、東京工業大学 理工学研究科 社会工学専攻博士前期課程修了。現在は評論家。著書(共著含む)に、『あたらしい武士道』『精解 五輪書』(以上、新紀元社)、『属国の防衛革命』、『日本の戦争 Q&A』(以上、光人社)、『やっぱり有り得なかった南京大虐殺』(劇画原作、マガジンマガジン)、『【新訳】孫子』『【新訳】名将言行録』『自衛隊「無人化計画」』(以上、PHP研究所)、『逆説・北朝鮮に学ぼう!』『ニッポン核武装再論』『陸軍戸山流で検証する日本刀真剣斬り』『予言日支宗教戦争』『もはやSFではない無人機とロボット兵器』(以上、並木書房)など多数がある。

小松直之(こまつ・なおゆき)
1980年秋田県旧若美町立払戸中学校卒業。県立秋田高校卒後、東北大学工学部を進級年限終了退学。文学座演技部研究生、(株)テレパック映像制作補等を経て、94年より月刊「コミック・アレ!」(マガジンハウス)に『電脳巡警』などを連載。兵頭氏原作劇画は他に『イッテイ・13年式村田歩兵銃の創製』(四谷ラウンド)がある。近年の主なマンガ・挿絵作品に、平山隆一著『たった一人のテロ対策』、杉山穎男著『使ってみたい武士の作法』『真似てみたい武士の妻の作法』(いずれも並木書房)、兵頭二十八著「グリーンミリテクが日本を生き返らせる」(メトロポリタンプレス/表紙制作撮影)など。