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目次

 

序章 いま強いリーダーが求められている  9

現場の気持ちを国政に伝えたい
その思いで自衛官から政治家へ 10

リーダー不在の時代
このままの日本で良いのか 13

 

第1章 民主党に政権交代して  17

政権交代から1年余が経過
問題山積となった民主党政権 18

リーダーとして意志薄弱だった鳩山前総理
リーダーなのに部下に責任を転嫁する菅総理 19

目先の幸せしか考えず
個人へのバラ撒き政策に終始する民主党 22

現代人の内向き指向を加速させ
問題の多い政策を推進する民主党 24

日本国への帰属を否定する
地球市民による政権運営 28

普天間基地問題を
途中で放り出した鳩山前総理 31

民主党政権に問う
普天間基地問題と尖閣諸島問題の本質 34

日本人は内向き指向を脱却し
広く世界の現状を認識せよ 39

 

第2章 リーダー不在の日本  43

毎年替わる総理大臣
リーダー不在のまま漂流する政界 44
「人を使った仕事」の経験がない人間に
国のリーダーは務まらない 45

リーダーなら嫌われることを恐れるな
「5つのなぜ」で原因を追及しろ 50

若者のリーダーシップを鍛えるには
団体生活と、命と向き合う経験が必要 53

強力なリーダーの下で団結した組織なら
組織体と機能体を変幻自在に使い分けられる 59

日本の覚悟が試された尖閣諸島問題
状況を変えるには国民一人ひとりの自覚が必要 61

 

第3章 日本の現状と課題  63
〜安全保障と教育〜

リーダーはどうあるべきか
自衛隊生活から学んだ危機管理の基本 64

アフガニスタン視察
肌で感じた政治的安定の重要さ 67

安全保障や国防の話題が
日本ではどこか遠くに追いやられている 71

国土を正しく理解していない
領土問題に関心が薄い日本国民 73

国家を悪しき存在と考える民主党に
外交・安全保障はできない 77

安全は人が作るもの
隊員のお母さんの涙が部隊を結束させた 80

一歩の後退は限りない後退に繋がる
強い意志のない者に国はまとめられない 85

自分さえ良ければいいという風潮
それを正すのは教育だ 93

外国人参政権付与は亡国の政策
日本を外国に売り渡しても良いのか 96

「自分の国は自分で守る」という意識
今こそ日本人の当たり前の価値観に戻るとき 99

 

第4章 ふるさと、父、自衛隊生活から
学んだこと  103

懐かしきふるさと
私の人格形成に影響を与えた福島 104

尊敬すべき恤揩フ存在
絶対に追い越すことはできないだろう 105

部活に心血を注いだ防衛大学校時代
勝って流す涙は美しい 110

「清貧」と「がむしゃら」の精神で
自衛隊入隊後に再チャレンジ 112

私の人生を大きく変えた
外務省への出向とカンボジアPKO 114

ゴラン高原からアメリカ留学
そしてイラクへ 116

自衛官から政治家へ
縁と絆によって導かれた人生 119

 

第5章 いま求められるリーダー像  123

自衛隊という教育機関
ここでの人間教育が現在の私を作り上げた 124

リーダーとして必須の思考ツール
状況分析のために「METT-T」 126

リーダーのプラス思考が
グループの最悪の事態を回避する 131
焦らず本物を目指せ
要領の良すぎる人間は出世しない 134

指揮官と参謀は表裏一体
参謀として優秀な人材は指揮官としても優秀 135

個室とは思考環境の整理のために与えられるもの
偉くなればなるほど孤独になる 139

私のリーダー教育論
「アンダースタンド」の勧め 140

あとがき 147


序章 いま強いリーダーが
求められている

現場の気持ちを国政に伝えたい
その思いで自衛官から政治家へ

「強い責任感をもって専心職務の遂行に当たり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努め、もって国民の負託にこたえることを誓います」
  これは自衛官が入隊時に行なう「服務の宣誓」です。私は自衛官として任官して以来24年間、この宣誓の言葉を胸に刻んで職務に邁進して来ました。私は自衛官として、同じ思いを持った仲間たちと、祖国日本の独立と平和を守るため、そして世界の幸せのために汗をかいてきました。
  災害派遣の現場では、家族や親戚が身内の無事を懸命に祈っている中を、その願いに応えるべく、泥だらけ、ずぶぬれになりながら、部下たちと必死に不明者の救出に当たりました。また、国際貢献任務の一員として、カンボジア、ゴラン高原、イラクのサマーワに派遣された際には、度重なる戦争や内戦に苦しむ住民を目の当たりにし、日本人がいかに平和と繁栄を享受しているか、日本がいかに世界から期待されているかを肌で感じました。
  私は「日本人の善意の代理者・実行者」として、現地住民の生活を少しでも楽にして自立を促すため、また、その国の将来を担う子どもたちの教育のために、できることを精一杯させてもらいました。私は今でも自分が自衛官として職務に当たって来たこと、自衛隊の仲間たちと一緒に共に歯を食いしばり、困難を克服してきたことを誇りに思っています。
  しかし、部隊の責任者として海外に派遣された際、政治家にあまりにも現場感覚がないため、隊員に多大な負担を強いることになり、状況によっては隊員の安全を脅かし、かえって国益を損なう状況にもなりかねなかった事態に直面しました。実は、この頃から、私は自衛官としての職務に限界を感じ始めたのです。
  カンボジア、ゴラン高原、イラクでの活動を通じて私が抱いたのは、「なぜ現場の気持ちをわかってくれないのか」「なぜ現場の声を聞きに来ないのか」という、何とももどかしい気持ちです。それは自衛官だけではなく、海上保安官や警察官、消防官なども感じる思いでしょう。
  現場で汗をかく人間には、たとえ自分の命を犠牲にしてでも国や国民を守り、任務を遂行する覚悟があります。しかし、彼らの決心がいかに固くてもそれだけでは国を守れません。なぜなら、彼らの行動はすべて政治家が決めているからです。彼らの任務も、人員の数も、装備も、派遣先についても、最終的には政治家が決定します。これを文民統制(シビリアンコントロール)というのですが、その方法が実情と合っていなければ、いかに現場が汗をかこうともどうにもなりません。ところが、肝心の政治家は現場のことをよく知らないし、なかなか関心を持とうとしてくれません。
  私がイラクで復興支援業務に就いていた7カ月間、他の国は大領領や大臣クラスの政治家が足繁く現場を訪れている一方で、日本の政治家は誰ひとりとしてサマーワの土を踏むことはありませんでした。現場の状況では政治判断と合っていないことが非常に多く、ぜひ日本の政治家にも視察に来てほしかったのですが、私の思いが伝わることは派遣中ついにありませんでした。おそらく、現場では、今でも政治家に「こうしてほしい」と思っていることがたくさんあるはずです。でも、政府に入った政治家は、なかなか現場に足を運んで実情を見ようとはしないのです。
  もちろん、現状を急に変えるには政治的な制約もあり、難しいことも理解しています。現場が政治に従属する、すなわちシビリアンコントロール下にあることも重要でしょう。しかし、現場を知らずに政治を行なうことも、また危ういのではないでしょうか。
  国の根幹を成すのは安全保障と教育です。これらは政治がリードして法を整備し、政策を推し進め、結果を出す必要があります。しかしながら「現場感覚の薄い議論」では実効性が伴いません。こうした現状を変えるには、現場を知る誰かが国政の場で実情を伝え、実際的な議論を行なうことで結果を出して行くしかないのです。それこそが現場で職務に当たる人々や、それを支える家族の期待に応えることになると、私は考えたのです。
  そこで僭越ながら、これまで現場の第一線に立つ機会を多く与えられた私が、その役割を果たすことが「定め」であり「義」であると思い、慣れ親しんだ自衛隊の制服を脱いで、自衛官から政治家へと転ずる覚悟を決めたのです。

リーダー不在の時代
このままの日本で良いのか

 これは私の考えなのですが、これまで「国を守る」という当たり前の議論が進展しなかった理由は、人々の国防に対する意識の問題もあるのですが、それ以上に政治家の資質の問題が大きかったのだと思います。
  例えば、政治家には機密の保持という概念を持たない人が驚くほど多くいます。秘密が漏れるのはたいてい政治家からで、官僚が朝説明したことが夕方には新聞に載っていたりすることが珍しくありません。公務員には守秘義務が課せられていますが、政治家にはそれがない。だから、秘密漏洩に関する罰則でもない限り、真剣な安全保障に関する議論などできなかったのです。
  また、普天間基地移設問題、尖閣諸島沖中国漁船衝突事件、ロシア大統領の北方領土渡航などに対する民主党政権の対応を見ていますと、彼らのリーダーシップのあり方にも疑問を感じます。
  それを象徴しているのが、2010年1月に鳩山前総理が行なった施政方針演説です。私は野党の議員ですが、それでも我々の代表、日本国民の選出した総理大臣ということで、施政方針演説を期待して聴きました。ところが、その最初の出だしは「命を守りたい」です。総理は43分間の演説中に「命」という言葉を24回使いました。けれども、「国を守る」という言葉は1回もありませんでした。国を守ることによって国民を守るっていうのが国家としての基本なのに、それがない。彼は日本国の総理大臣です。県知事でも市長でもないのです。
  しかも、自衛官出身の私からすると、言葉の使い方も間違っていると思います。リーダーが「命を守りたい」では駄目なのです。最低でもこの場合は「命を守る」と使うべきでした。もっと強い意志を出すのであれば「命を守り抜く」とか「命を守りきる」と言わないといけない。この鳩山さんの言葉には心底がっかりしました。リーダーが明確な意志を打ち出さなければ、誰も信用してくれないし、ついて行こうとはしないでしょう。
  国のトップとしてのあり方という点では、菅総理にも大いに不満があります。我々の同胞が北朝鮮に拉致されて、行方も確認できないでいます。それに対する抗議としてブルーリボンのバッジがあります。ところが、菅総理は横田ご夫妻と会ったときだけは着けていましたが、会見が終わったら外してしまった。そういう所作からも、菅総理から「日本国民の命を守る」という決意が感じられません。そして、その心構えが一連の領土問題に対する菅総理の姿勢に現れているのです。国のトップがこんなありさまだから、国民の間に拉致被害者への支援が広がらないし、領土・領海問題も外国の好き勝手にされてしまうのです。これらは政治家のリーダーシップが欠如していることに起因します。
  現在、NHK大河ドラマをきっかけにした空前の「龍馬」ブーム、あるいは26年ぶりに復活した『宇宙戦艦ヤマト』など、テレビや映画の世界では、強力なリーダーのもとに仲間が一致団結して困難に打ち勝つ物語が再び人気を集めています。それは日本を覆い尽くした閉塞感を打ち破る、強力なリーダーの出現を人々が期待していることの表れでもあります。しかし、現実社会に目を向ければ、強力なリーダーが現れるどころか、日本社会はリーダー不在のために機能不全を起こしているように思えてなりません。
  国政の惨憺たる現状は前述した通りです。しかし、職場や学校、地域コミュニティなど、我々の身近な所で似たようなことがたくさん起こっています。日本社会に馴染まない過度な成果主義を導入した結果、職場で働く仲間同士のチームワークが崩れて、リーダーシップを発揮する人がいなくなり、かえって以前よりも業績を落としている企業も少なくありません。また、教師が子どもたちをまとめきれず、学級崩壊や陰湿化するイジメなどの問題によって、子どもたちの教育の場として成り立たなくなった小中学校は数多くあります。地域コミュニティの崩壊も、住民が面倒を嫌って町内会などが機能しなくなった結果とも言えるでしょう。
  私がリーダー論について本を書こうと思ったのは、こうした日本社会の危機的な状況を前にして「このままではいけない」と強く感じたからです。
「国民の国防意識を越える防衛力は作れない」、これは長年、国防の現場で汗をかいてきた私の基本的な考え方です。リーダーシップについても同じことが言えます。「国民のリーダーシップを超えるリーダーは現れない」のです。今あらためて私たちは、リーダーおよびリーダーシップのあり方について考える必要があると思います。

佐藤正久(さとう・まさひさ)
昭和35年 福島県生まれ。佐原小、西信中、福島高校卒
昭和58年 防衛大学校(27期・応用物理)卒
昭和59年 第4普通科連隊(帯広)
平成4年 外務省アジア局出向
平成6年 第5普通科連隊中隊長(青森)
平成8年 国連PKOゴラン高原派遣輸送隊初代隊長
平成10年 米陸軍指揮幕僚大学卒(カンザス州)
平成16年 イラク先遣隊長、復興業務支援隊初代隊長。
第7普通科連隊長兼ねて福知山駐屯地司令
平成19年 参議院議員(全国比例区)当選
平成25年の任期満了まで全力疾走を誓う
さいたま市在住
所属委員会・役職
<参議院>外交防衛委員会理事、災害対策特別委員会
<自民党>「影の内閣」防衛副大臣兼ねて国防部会長代理
防衛政策検討小委員会委員長