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 目 次

プロローグ 中国文明の衰退がはじまっている 9

 中国には世界を魅了する文化も思想も希薄 9
  北京五輪以後、中国経済の破綻がはじまる 12
  共産党政権は歴代王朝の末期と酷似してきた 17
  空前のドル激安で世界経済はさらに大荒れ 19
  胡錦濤は日本に救いを求めた 23

第1章 チベット虐殺で北京五輪は失敗の怖れ 26

 西側の北京批判の大合唱を前に逆ギレ 26
  ウイグル独立運動にも抗議の火がついた 30
  中国共産党による偽ダライ・ラマ誕生という悪夢 33
  北京は五輪期間中の「テロ」を最も恐れている 39
  周到に用意された中国人の官製デモ 41
  経済失速の責任をかぶるのは温家宝首相 44
  愛国主義が毛沢東思想に代替できるか? 46

第2章 水、空気、食料汚染と人心の腐食 48

 中国人の八割が水不足と汚染に悩んでいる 48
  毒餃子事件どころではなかった未曾有の大雪被害 51
  世界的な穀物高騰で恒久的なインフレがはじまった 56
  公務員の腐敗・職権乱用が猛烈な勢いで拡大している 58
  毒入り餃子よりもっと始末が悪いニセ薬品 61
  一〇億円のブラジャー!遅れてきた世紀末バブル 63
  腐敗の温床、マカオのカジノを規制へ 67
  貧窮する農民を共産党は救えない 70

第3章 五輪以後、経済が崩壊するシナリオ 73

 こんな国に五輪を開催する資格があるのか 73
  チベット虐殺をめぐる中国非難の声が全世界に 78
  ウイグルの資源を漢族が盗掘している 81
  中国では繁栄と崩壊が同時進行中 84
  北京から離れると人々の関心は五輪以外 89
  上海近辺にイスラム教の集落ができつつある 92
  重慶市書記は知日派だが、さらなる発展は疑問 94
  当世結婚・離婚事情 98

第4章 軍国主義的市場経済の矛盾 102

 中国の軍事予算は公表されている数字の三倍強 102
  ロシアにとって中国は常に潜在的な脅威 106
  世界に飛び火する反中国感情 108
  そして中国株が危なくなった 110
  不動産関連企業の連鎖倒産がはじまる 112
  ハイテク企業の買収と台湾籍中国人のスパイ活動 114

第5章 中国投資を見限りはじめた欧米 120

 中国へ流入する摩訶不思議な投資資金の流れ 120
  世界を覆いはじめた華銭 124
  米国は日本の金融業界を見限り中国重視にシフト 127
  赤いファンドと白いファンドが世界を荒らす 128
  EUの求心力が失われ、独仏は違う道を歩みはじめた 130
  米中は経済面では相互依存体制 132
  中国経済「崩壊」への動きが顕著になりはじめた 134
  つぎは中国版サブプライム問題 137

第6章 捏造と改竄の反日記念館 141

「反日記念館」抗議に立ち上がる日本の国会議員ら 141
  日本側の訂正要求に応じる気配はまったくない 143
  反日展示はウソとデッチ上げばかり 145
  日本軍を悪魔視する改竄の手法 148
  台湾懐柔の謀略ははじまっている 150
  歴史への無知が展示のデタラメを加速する 152
  反日展示ばかりが目立ち、西洋列強への憎悪はなぜか希薄 156
  悪名高いデタラメ展示の原型は北京の「抗日戦争記念館」 158
  魯迅や周恩来の日本との関連が削除されていた 162
  毛沢東の生家に観光客が押し寄せる 165
  国民党の評価に変化が見えはじめた 168

第7章 モラル欠落、倫理の無存在 173

 歴史改竄のはじまりは撫順の「日本戦犯収容所」での洗脳 173
  B介石神話の崩壊 181
  コソボ独立宣言と台湾独立 183
  民族自決権は尊重されなければならない 186
  プーチンはユダヤ財閥を国外へ追放しはじめた 188
  プーチン一派とユダヤ人財閥のロシアの富をめぐる争い 190
  ロシア人とまじめに付き合っては損をする 193
  中国が国際的に孤立したとき、台湾独立のチャンスがくる 196
  南オセチアとアブハジア併呑の政治的野心が露わに 198

第8章 馬英九の台湾はどこへ行く? 201

 台湾産業界の中国大陸への投資はまだまだ続く 201
  国民党大勝を素直に喜べない理由 204
  北京におもねるように米国は台湾に圧力をかけ続ける 207
  中国も米国を利用して台湾を恫喝する 209
  また突発事件が重なった台湾の総統選挙 210
  中国と台湾の「共同マーケット」は実現するのか? 213
  新総統への期待は景気回復と財布の中味が増えること 216
  早急な中台統一はありえない 219
  なぜ「中国が民主化されたあとで、話し合いをすればいい」と言えないのか 220

第9章 かくも軽き日本の存在! 223

 米国は日本に過度の期待をすることをやめた 223
  ウォール街は日本というライバルを容赦なく蹴落とした 226
「根拠なき悲観」が日本の市場をおおっている 230
  米国主導のグローバリズムが日本の経済力を弱めた 231
  IT社会が日本人の情緒の破滅をもたらした 233

エピローグ 中国のご都合主義 236

 中国人に善意や誠意は通じない 236
  中国の歴史は権力者の創作である 238
  日中友好という幻想に騙されてはいけない 240




プロローグ(一部)

 かくして本書の第一の目的は巷間持て囃される俗論を排し、一歩でも中国の闇と真実に近づこうとする目的で編まれた。
  せっかくの北京五輪の年は世界の株価大下落で幕が開き、チベット問題で欧米には北京五輪ボイコットの動きが活発化した。そして五月一二日の四川省大地震。
  世界経済はサブプライム問題と中国問題が中心となっての大波乱を迎えるだろう。それも震源地はウォール街から北京五輪以降は中国へと確実に移行する。
  夏の北京五輪まで中国経済はなんとか持ちこたえるだろう。
  ソウルもアテネもシドニーも、五輪までは経済成長が凄まじかったけれども、競技会が終わって世界のテレビが去るとGDP成長率は必ず鈍化した。とくに韓国はソウル五輪の翌年にマイナス六%を記録した。
  潜在的な経済成長破壊の第一の武器はサブプライムの悪影響が中国をもろに襲いつつあることだ。
  世界先進国を急襲したサブプライム問題で最低に見積もっても二三兆円の損出を欧米投資筋はこうむった。急遽、欧米金融界は危機回避の共同作戦を展開し、イギリスは有力銀行の一つ「ノーザン銀行」を国有化した。米国のポールソン財務長官は北京へすっ飛んで「資金協力」を要請した。
  経営責任を問われ、メリルもシティもベア・スターンズもCEO(最高経営責任者)が交替した。天下の名門クレディ・スイスさえも赤字に転落し、日本でもみずほ銀行、野村証券、武富士など最低見積もって合計一兆五千億円の被害がでた(〇八年五月時点)。
  中国の銀行も軒並みこのサブプライムの損出に頭を抱えていることが判明した。
  上海株式市場は二〇〇七年一〇月までの一八カ月間で四倍の株価に急膨張したが、〇七年一一月五日のペトロチャイナ上場、翌日のアリババ(IT企業)上場で天井をつけ、その後は大幅な「調整」局面に入った。過去半年で五〇%の株価下落を記録し(〇七年一〇月一六日から〇八年四月一七日までを比較)、さらに下落含み。株式の理論であるPBR(一株あたりの資産倍率)分析値から言ってもピークの四分の一まで暴落するだろう。
  中国株ブームは大きく後退、ちなみに〇八年二月二一日、上海浦東開発銀行が五六億ドルの増資を発表するや、一〇%も同行の株価が下落する有様となった。三月に判明した事実とは有力企業(中国鉄道建設など)のIPO(新規株式公開)に投資家のカネが集まらず、業界第三位の中国太平洋保険などは上場を延期する始末となった。
  さらに中国は次のような脆弱な構造を持っている。
  第一に過去の不良債権問題が再燃しつつあり、〇八年三月現在、不良債権比率は六・六三%から六・七二%と不気味な上昇カーブを描いて市場を脅かしている。
  二年前までに国家が二六〇〇億ドル(およそ二八兆円)を出資して債務を肩代わりし、国有銀行の不良債権率を五〇〜六〇%から三%弱へと革命的に下げたはずではなかったのか?
「当局は二桁成長が続くのだから、不良債権の多少の増加など問題ではないなどと強がりを投資家に言ってきたが、サブプライムの余波が弾丸となって中国を撃っている事実は隠しようがない」(「ヘラルド・トリビューン」〇八年二月二一日)
  第二に中国国有企業の六五%前後の株は依然として中国政府が保有し、市場へ流通している株数が制限されるうえ、上海の時価総額の半分が上位一五社(全体の上場企業は一五〇〇社)で占められている。
  この異常な実態も一億五千万人と推定される「股民」(個人投資家)は構造分析などに興味がなく、狭いパイへ過剰流動性のカネを投げ入れたからだ。こうして鉄火場のような市場の歪みは権力者と組んだトレーダーらの株価操作を容易にする。
  第三に情報公開が曖昧で市場に透明性がないため、世界に例を見ない悪質なインサイダー取り引きが横行しやすい。
  とくに共産党員の七割(五千万人)が株に手を染めており、高額所得の上位九〇〇名がGDPの一六%を寡占している。
  だとすれば中国政府は急激な株価暴落を回避するためにPKO(プライス・キーピング・オペレーション=株価維持作戦)を行なわざるを得ない。これが欧米の強者投資家たちの狙い目だ。しばし中国の株は鉄火場として稼ぐことができるのでカネが乱舞して上海や深C、香港に吹き溜まったのだ。
  この状況も暗闇の霧のごとく謎が濃くなるばかりである。
  第四に不動産バブルが方々で爆竹のように破裂している。中国全土で爆竹連鎖型で不動産価格の本格暴落がはじまっている。
  不動産の簿価が下がり、さらに米国のサブプライムと同様に信用の低い中間層はローンを返済できなくなる。すると二年前にようやく立ち直ったばかりの国有銀行や保険会社が軒並み簿価の修正に追い込まれ、連鎖スパイラルは悪性の恐慌を招きかねない。
  中国の熱狂的な不動産投機は北京五輪まで続くと見られたが、すでに最大最強の投機集団=「温集商人」が北京、上海、広州などの物件あさりをやめて地方都市に対象を移している。都心の豪華マンションには空きが目立ちはじめ、商業ビルも空室が多い。
  第五は治安の悪化である。
  経済の破裂は時間の問題と断言してもよいが、つぎに北京五輪はマスコミ報道とは一八〇度異なって盛り上げをまったく欠いている。旅客激増をあてにした北京のホテルは予約が少なく、ダンピングをはじめてもなお集客情況が悪いという。このゴールデン・ウィーク中の海外旅行者の数字をみれば一目瞭然、中国行きのパック旅行はガラガラだった。ちなみに筆者も中国へ行っていたが、上海行き、広州帰りの往復ともにJAL機は空席ばかりが目立った。
  道路、交通インフラの建設が遅れているばかりか土地整備にともなう暴力的立ち退きによって自宅を取り上げられた市民の怨嗟の声が強まり、いまや北京の中枢部にさえ暴動が起きそうな気配である。五輪サッカー会場となる遼寧省の瀋陽ではすでに数万規模の暴動が発生した(〇八年一月初頭)。
  スーダンの大虐殺を非難して北京五輪ボイコットを訴えるハリウッドからの声は全米のリベラル、草の根の人権運動を巻きこみ、世界に飛び火した。
  北京五輪を五つの手錠のデザインにしたTシャツも飛ぶように売れており、実際に北京の繁華街でボイコットのTシャツを着て歩く外国人までが頻繁に目撃されている。人権活動家、環境活動家が五輪反対に合流しており、共産党政府の公害無策にも批判の芽を向けている。
  映画監督のスピルバーグはとうとう北京五輪芸術顧問を辞退した。「南京」「靖国」「教科書」では騒いでも欧米の北京五輪ボイコット運動の急拡大を日本のマスコミが大きく伝えないのは妙である。今後の判断を誤らせる懼れがある。

宮崎正弘(みやざき・まさひろ)
昭和21年金沢市に生まれる。早稲田大学英文科中退。『日本学生新聞』編集長、月刊『浪曼』企画室長をへて、昭和57年に『もう一つの資源戦争』(講談社)で論壇へ。以降、『日米先端特許戦争』『拉致』『テロリズムと世界宗教戦争』など問題作を矢継ぎ早に発表して注目を集める。中国ウォッチャーとしても知られ、『中国人を黙らせる50の方法』(徳間書店)、『出身地でわかる中国人』(PHP新書)、『世界新資源戦争』(阪急コミュニケーションズ)、『崩壊する中国 逃げ遅れる日本』(KKベストセラーズ)、『中国は猛毒を撒きちらして自滅する』(徳間書店)、『世界“新”資源戦争』(阪急コミュニケーションズ)、『中国のいま、3年後、5年後、10年後』『2008年世界大動乱』(並木書房)など多数。そのうち数冊が中国語訳されている。ホームページはhttp://miyazaki.xii.jp/