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目 次 「まえがき」にかえて UFO信者と懐疑論者のあいだに/情報公開で揺らいだ政府当局への信頼/行き過ぎた秘密主義がもたらしたもの/かつてない混乱にあるUFO研究 第1章 UFO時代のはじまり 挫折の日々 一九四二年〜一九五〇年 最初の隠蔽工作?/幽霊との戦闘で恐慌状態に/パイロットを悩ませる「フー・ファイター」/「フー・ファイター」の謎に迫る/最初の「空飛ぶ円盤」目撃証言/UFOはソ連の新型兵器か/「幻覚でも空想でもない」/UFO調査チーム「プロジェクト・サイン」/地球外物体説に基づく報告書/軍当局が破棄を命じた幻の報告書/地球外起源説の伝道者「キーホー」/「空飛ぶ円盤は実在する」/墜落した円盤/削減されたUFO調査チーム 第2章 軍人と役人たち CIAの登場 一九五一年〜一九六六年 空軍のUFO研究「ブルーブック」/史上最大のUFO目撃事件/CIAの登場/UFO目撃がソ連の心理戦に利用される可能性/公開されなかったロバートスン委員会の報告書/「信頼できるデーターが少ないUFO目撃」/ソ連に利用されかねないUFOへの関心/UFOの歴史をねじ曲げたキーホーの創作/説得力のない空軍のUFO報告/空軍とCIAのさらなる失策/UFO現象への再評価/円盤再襲来/UFO目撃の嵐 第3章 科学者の登場 コンドン委員会の調査 一九六六年〜一九六九年 UFO研究の真剣な動き/国をあげての大混乱/新たなるUFO研究の開始/UFO信者とコンドンの対立/政治的なフットボール/先入観をもたずに調査することの難しさ/さらに深まる対立/根拠のないコンドン批判/広範囲にわたるコンドン報告書/UFO研究史上画期的な「コンドン報告」 第4章 新たなるUFO神話 混沌と多様性の時代 一九六九年〜一九八二年 UFOに関する四つの通説/あばかれるCIAの悪業/UFO懐疑派のリーダー、クラスの活動/UFOの正体は大流星?/家畜惨殺事件に乗り出したFBI/ありとあらゆる奇妙な説が生まれた/FBI捜査官の報告/日の目を見た極秘文書/「事実の半分しか告げていない」/情報公開法で浮上したUFO事件/「グラッジ報告♯13」事件/記録にない人物の作り話 第5章 UFO研究の分裂 恐怖と欺瞞、そして憎悪 一九八二年〜一九九五年 仕組まれたUFO事件/UFOを心理戦の武器として利用する/世界を震撼させるMJ‐12文書/疑わしい「MJ‐12」文書/カープの「守護者」事件/「守護者」の正体/宇宙からの残骸を回収するムーンダスト計画/米ソ宇宙開発競争から生まれた計画/国連事務総長誘拐事件 第6章 UFO研究のダークサイド 陰謀伝説の系譜 異星人の戦慄すべき計画「ベータ報告」/「ベータ報告」の奇妙な矛盾/デルタフォース対異星人の戦い?/空軍に利用されたUFO研究家ベネウィッツ/政府の偽情報操作/さらなる伝説を作り上げた「リア文書」/疑わしい「ダルシー文書」/異星人の人質「クリル」/とんでもない理論/焼き直しにすぎないクーパーの主張/TV番組「第三の選択」が与えた影響/異星人の乗り物を調査した物理学者/恐怖の巣窟の伝説/何でもありの異星人伝説/UFO研究のダークサイド/「妄想はすべてを説明する」/世界中の神話の寄せ集め/ダイクサイダーの系譜 第7章 世界のUFO事件 国際的陰謀の証拠? 外国のUFO報告/スペインの衝撃/進まぬイギリスの情報公開/ブラジルで目撃されたUFO/オーストラリアの黒いUFO/スペイン軍に目撃されたUFO/ベルギーの三角形UFO/レンドルシャムの森のUFO/待機戦術 第8章 ロズウェル事件の衝撃 世紀の大事件の真実、一九四七年 最初の報告/再燃したロズウェル事件/九〇年代のロズウェル事件/ロズウェル事件の再構築/ジェシー・マーセルの伝説/ゆらぐ自称目撃者たちの信頼性/宇宙船墜落に共通する「謎の文字」/時間とともに変化する関係者の証言/空軍が秘密にしたかったモーガルの気球/英情報機関の登場 終章 われらの時代の伝説 実在した政府の隠蔽工作 UFO報告を集める本当の理由/あるのはスパイ社会の常識だけ/都合のいい証拠だけを用いるUFO信者/ダークサイド理論誕生の裏事情/妄想の典型的なパターン/政府文書が語るもの 文書1 未確認飛行物体に関する科学顧問専門委員会の報告書 訳者あとがき |
「まえがき」にかえて 半世紀以上ものあいだ、世界各国の政府はあらゆる種類の未確認飛行物体、つまりUFOに積極的な興味を抱いてきた。第二次世界大戦によって空軍力が戦争で重要な位置をしめることが実証されて以降、各国とも謎の飛行物体を見逃すことができなくなったのである。 UFO信者と懐疑論者のあいだに 当然ともいえるが、軍の見解にたいする反応はさまざまである。強硬なUFO懐疑論者は軍の発表を受け入れ、ばあいによっては星や灯台、気球、レーダーの原因不明の輝点または誤動作、人工物、自然現象(たとえば悪戯、錯覚、蜃気楼など)がUFO現象の原因であると主張する。 情報公開で揺らいだ政府当局への信頼 開かれた政府と公的秘密の徹底的な公開を求める声に正当な根拠があるとしたら、それはUFO現象である。現在われわれがUFOという言葉から連想するような、球体もしくは円盤状で発光する謎めいた物体は、一九四二年からアメリカで目撃されている。しかし、国民の注目を集めるようになったのは一九四七年にケネス・アーノルドによる有名な目撃事件があってからだった。 行き過ぎた秘密主義がもたらしたもの 第二次世界大戦のあと、アメリカ社会は内外の敵にひじょうに敏感になっていた。とくに国内の敵に過敏ともいえる反応を示し、すべからく共産主義のしわざときめつけた。ソ連と西側諸国が緊張関係にあり、ヨーロッパでは一九四八年にソ連によるベルリン封鎖に対抗して大空輸作戦がおこなわれ、アメリカではマッカーシーによる赤狩りが猛威をふるった時期であった。 かつてない混乱にあるUFO研究 ここでもアメリカの経験が世界の人々の指針となっている。アメリカ人の心理の根底には政府への強い不信があり、憲法にもそれが穏やかなかたちで表明されている。それが、UFO研究をはじめとするアメリカの各所で敵意ある疑いとなって噴出するのである。
本書は、一九九六年にイギリスのブランドフォード社から出版されたピーター・ブルックスミス著 UFO: The Government Files の全訳である。
大倉順二(おおくら・じゅんじ) |