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●目 次

まえがき

第1章 パソコンをつまらなくしたのは、ユーザーがメーカーを知らないからである

今日買ったパソコンが、明日には旧型になってしまう不思議?
最新スペックだからいいパソコンという定説の不思議?
パソコンを買うということはそのメーカーを買うということでもある
人にキャラクターがあるように、メーカーにもキャラクターがある

第2章 どちらを選ぶ?天才パソコンと平凡パソコン

天才パソコンをつくるメーカーと平凡パソコンをつくるメーカーの違い
天才パソコンとは? 平凡パソコンとは?

第3章 パソコンはメーカーの履歴書である――メーカー別マシンの系譜

富士通
FM‐7 古き良き富士通らしいマシンの栄光と転落
FM‐TOWNS ハードにこだわる富士通魂が息づく最後のマシン 
デスクパワー 登場したDOS/Vのアベレージマシン
ビブロ そこそこの価格でそこそこのスペックが人気の秘密
シャープ 
MZ‐80K ユニークすぎて惜しくも国産一号機を逃したマシン
MZ‐80B 社長直属のパソコン好き者集団がつくり上げたマシン 
MZ‐700 とにかく安くを合言葉につくったシャープの異色マシン
X1 かたいパソコンとやわらかいテレビとが融合した家電化パソコンの第一号 
X68000 愛称ペケロク、それはシャープの持ち味の結晶だった
メビウス 液晶技術を世に知らしめるためのデモンストレーター 

NEC(日本電気)
PC‐8001 パソコンに社運を賭けたNECの本格パソコン第一号機
PC‐8801 パソコン界の大衆車カローラのハイデラックス版、戦略価格で発進
PC‐6001 NECのパソコン戦略の犠牲になったあだ花
PC‐9801 NECの野心をかたちにした国民機 
PC‐100 NECのパソコン好きがつくった、先進的超豪華超高価マシン
PC‐9801VX NECのわが世の春を築いたマシン 
PC98バリュースターNX NECの最初のDOS/Vマシン
ラビィ 没個性、安全運転がコンセプトの平均点マシン 
エプソン
PC‐286 皮肉にもNECの強さを証明した、98互換機
エンデバー NEC対策から生まれた、ダイレクト(通信)販売用マシン
東 芝
ダイナブックJ‐3100SS 当時のザ・ノートパソコン
ブレッツア 日本市場に送り込まれたブレッツア(旋風)に、追い風吹かず
リブレット 東芝のさいごの砦、小型パソコンの戦略兵器 
日 立 
ベーシックマスター 日の丸パソコン第一号、名機だがベストセラーとなれず 
プリウス 戦略商品か看板代わりか?液晶付きデスクトップの愁眉をひらくマシン
三菱電機 
マルチ16 戦略なき戦術もなきプロダクトのあわれ、ここに極まる
ペディオン すごいが、そっぽを向くマーケット、バイオの血を輸血したい
松下電器 
JR‐100、MSX 松下製パソコン、最初の敗北、そして第二の敗北 
ウッディ 泣くな松下、明日がある。発想は家電的で見どころあるマシン 
レッツノート 家電のライバル東芝のダイナブックがターゲットのノートパソコン 
沖電気 
if800 もしも売れたらいいなあという意味で、ifと命名したのかも!?
ソード
M‐23、M‐5 天才パソコン、豊作貧乏に泣く
セ ガ
テラドライブ 大風呂敷の中身は、空っぽだった
トミー、バンダイ、タカラ
ぴゅう太・ガンダム・M5 お子さまにそっぽを向かれた、オモチャ的パソコン
ソニー
SMC‐70 デザインは最先端、その遺伝子は一五年を経てバイオに受け継がれる
バイオ 遅れて打席に立った、ソニーが放った大ホームラン!
IBM 
IBM PC 緊急指令、あの目障りなリンゴのマークを叩きつぶせ! 
IBM PC/AT DOS/Vへと続く、スタンダードパソコン 
アプティバ 巨人の「迷い箸」 
シンクパッド IBMの世界戦略兵器、A4ノートパソコン、日本で誕生
アップル
アップル・ パソコン界のアメリカンドリームのはじまり 
リサ LISAがなければマックは生まれなかった。マックがなければアップルはなかった 
パフォーマ ジョブズ抜きのアップルが引き当てた、イエローカード 
パワーマック8500 アップルに、名誉の孤立路線を捨てさせたマシン
iMAC ミスターアップルのジョブズ復帰で登場した「ザ・アップル」
コンパック
プロリニア3/25ZS コンパックのコペルニクス的転回
プレサリオ2254 閉鎖的な日本システムをこじあけたホンモノの黒船
コモドール
PET2001 安い・うまい、パソコン黎明期にウケた吉野家的マシン
VIC‐1001 二一〇〇万台売れながらコモドールの白鳥の歌となったマシン
タンディ・ラジオシャック
TRS‐80 8ビットのスタンダードCPU「Z80」を世に出したマシン
テキサスインスツルメント
TI‐99/4 みごとなできだが、やる気のない会社に袖にされた悲しきマシン
パッカードベル
フォース ダイエー中内イズム版パソコン登場、しかし価格破壊通じず
ゲートウェイ
DELL
マイクロン

第4章 パソコン世紀末の激震と21世紀への予言

CPUはRISCチップがCISCチップにとって代わる
揺らぐウィンテルの天下、CPU・OS戦線に異状アリ
パソコン界の異端児アップルは本当に復活できるか!?
マイクロソフト期待の星「ウィンドウズCE」は標準となるか?
インターネット専用機は定着するか?
戦国時代真っただ中の記憶メディア
消えゆくショップ・ブランド
どうなる通販(直販)?
多様化するパーソナル・コンピュータ

[コラム]
パソコンはテレビより壊れやすい
出よ! メーカーをふるえあがらせる「パソコン雑誌」
マルチメディアとアルチメディア

「あとがき」に代えて 本書の書名について


●まえがき

 なんとも、奇妙なことです。
 これほど長期間にわたり時代の寵児とうたわれ続け、これほど生活や社会に溶けこんだパソコンであるにもかかわらず、その特徴、その有り様、その背景について、包括的に取り組んだ書物がありません。
 ならば、書いてみようではないか。
 某大手メーカーで、パソコンの企画や開発、マーケティングから販売にまで携わっていた筆者の視点でまとめれば、斬新で役に立ち、これまでにない面白い「パソコン読本」ができるだろう。
 それが、本書の出発点であります。
 ・これからはじめてのパソコンを買おうと思っている人
 ・ そろそろパソコンの買い換えを考えている人
 ・メーカー主導の小刻みな買い換え戦略に疑問を感じる人
 ・ 購入はしたが、ホコリをかぶったままになっている人
 ・ パソコンが好きで好きでたまらないマニア
 ・パソコンのこぼれ話を知りたい人
 ・ 通り一遍でない、パソコンの真の歩みを知りたい人
 この本は、そんな人たちを読者に想定してまとめました。
 考えてみると、パソコンユーザーのなかで一体どれほどの人がそれを使いこなしているでしょうか。そして、使って楽しんでいるでしょうか。
 けっして安い買い物ではないのに、使えなかったり楽しめなかったりするのは、残念なことです。
むづかしいから? それもあるでしょう。忙しいから? これは仕方ありませんが、筆者は人間同士に相性があるように、パソコンと使い手の間にも相性があると考えています。
 ところが、その辺をとりもち、案内してくれる雑誌や本を見かけないのです。ページを開けば、どれもスペックとカテゴリー別の分類、専門用語の羅列に終始するばかりで、ユーザーとパソコンとの接点が一向に見えてきません。
 たとえば、同じCPUで同じウィンドウズ98を搭載していても、メーカーが違えば、使用感や味付けはおどろくほど異なるものなのですが、大多数のユーザーはこの事実を知りません。
 どんな人間にも得手不得手があるように、メーカーにもメーカーごとに得手不得手があり、個々のパソコンはそのメーカーがいかなる考え方や伝統でモノづくりにあたっているかのカガミでもあります。
 しつこいようですが、たとえ同時期の同じスペックのパソコンでも、メーカーが違えばけっして同じではありません。本書が相性の良いパソコンとの良い接点をさがす一助になれば幸いです。


●「あとがき」に代えて
  本書の書名について

 筆者はパソコンの黎明期から、この世界にかかわり、何冊かの書籍も出させて頂きましたが、本書ほど、題名の決定に迷ったことはありませんでした。
 本書の企画は、私が「DOS/Vマガジン」というパソコン雑誌に連載記事を書いておりますが、その中にコラムとして「過去の名機を紹介する」部分がありました。これを見た友人や知人から「なかなか面白いから単行本にすれば」という意見を頂いたことが、引き金となり、どうせなら新規に書き下ろそう、と決心したものの、インターネットなどで遊んでいるうちに月日が流れていきました。
 一九九八年の夏になり、やはり知人の中の一人である、菊地秀一氏から「もしよければ、原稿のまとめくらいは手伝うから、今年中に本にしましょうよ」との熱心な勧奨を受け、本書を書くことになりました。読者に見てもらいやすくするため、随所に工夫をこらしました。とくに第3章は、基本的にひとつのマシンを見開きに収めるため、同氏に大変な負担をかけました。
 本書は同氏の協力がなければ、こう見事にはまとまらなかったことでしょう。まずは菊地氏に、お礼を述べておきます。
 さてこうして本書を書きましたが、書き終わった時点でも、まだ書名は未決定でした。
 最後まで読んで下さった読者には、筆者の真意が伝えられたと思いますが、こういう本は、読者ならどんな題名をつけられますか?
 当初は「パソコンの血統書」とか、「パソコンの血脈」とでもしようかと思いましたが、これでは書店に並んだ時に、違和感がありすぎるなとボツにしました。
 次の案は「パソコンの素性」でした。これも読んでみなければ判らないので、パッと見てなんのことかわからない。
「パソコンにはメーカーごとに個性がある」では書名としては長すぎる。かくて迷いに迷い、いつまでたっても決断がつかない、これでは題名のない本になってしまう。と困っていたところ、出版元の人が「パソコンの裏事情」ではどうですかと、意見を出してくれました。かくして滑り込みセーフとなりました。
 映画の題名に苦労した話などはよく聞きましたが、自分の本の題名に苦労したのは初体験です。やはりユニークな書物を目指すと、こんな難問も出てくるのですな。
 でもあなたが本書を買って、読んで下さったわけですから、これで良かったのだと思います。
 最後になりましたが、写真や資料を提供して下さったメーカーの方々、とくに古い資料の件で協力して下さった、田代 信氏にお礼を申しあげます。
 また本書の出版を、快く引き受けて下さった、並木書房出版部にも感謝します。
 

●宮永好道(みやなが・よしみち)
1930年、神戸生まれ。京都大学にて応用数学を学ぶ。その後、各地の研究機関などを経て、コンピュータサイエンスの道を歩む。(株)東芝の委嘱により、同社系コンピュータ会社にて、主として小型コンピュータ(ex.TOSBAC1100・1200・1500など)のコンサルタントをつとめる。パソコン時代のはじまりとともに、シャープ(株)顧問となり、MZ-80シリーズをはじめ、X1シリーズ、X68000シリーズなどのコンサルテーションにあたる。1982年から約6年間にわたり、テレビ番組「パソコンサンデー」(テレビ東京系)に、キャスターの小倉智昭氏らとともに出演(主席講師として)。その後、複数のパソコン関連会社の顧問を歴任するかたわら、よりよきパソコン社会を願い、パソコンと社会とをつなぐパイプ役としてJPUC(日本パーソナルコンピュータ・ユーザーズ・コンソーシアム)を結成し、活動を展開している。著書は『ホームコンピュータ入門』(1978年、徳間書店刊)、『楽しく学ぶBASIC』(1982年、廣済堂出版刊)など多数。また、『DOS/Vmagazine』(ソフトバンク刊)に長期にわたりコラムを連載中。秋葉原界隈では「パソコン仙人」の異名をもつ。1999年1月死去。