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●目 次

まえがき

パート1 ウォーキングの達人に訊く

[一人で歩く]
高原散策のすすめ 
半生をかけ、山ひと筋に歩く
街中のそぞろ歩きでリラックスする
渓流釣りで川をさかのぼって歩く
心の山のそばに住んで歩く
観光ガイドに載らない素顔の街をたずね歩く
[二人で歩く]
夫婦で登る山の楽しみ
海外トレッキングで得た感激
キノコや山菜を求めて山を歩く
[グループで歩く]
低山の縦走ハイキングで歩く
文学・歴史のゆかりの地をたずねて歩く
仲間を連れて山の手ほどきをする
仲間どうしでの語り歩きのすすめ

パート2 ウォーキングの用具を選ぶ

あなたにぴったりの一足を選ぶ
一六社二四足を履き比べてみる!
山仲間直伝「私が愛用する靴」
ウェアは着こなしを考えて選ぶ 
行動予定に合ったザック、シュラフを選ぶ 
たった九八〇円のトレッキングシューズで登山にチャレンジ!

パート3 実践的歩き方ガイド

大菩薩を案内しながらウォーキングのハウツーや魅力を語る
低山冬山へ行こう!
古い街並みのひと味違う歩き方
母と娘、親子が二人三脚で行く
ズブの初心者が山歩きに挑戦!

コラム
ちょっと寄り道 たくましく神秘的な、東京巨木紀行 
ちょっと寄り道  ウォーキングみやげに冷たいミネラルウォーターはいかが 
ちょっと寄り道  寅さんの歩き方
ちょっと寄り道 さあ、目的地を決めずに街に出よう
ちょっと寄り道  四国巡礼の旅に出る
ちょっと寄り道 哲学者カントの散歩に学ぶ
ちょっと寄り道  いいことづくめの水中ウォーキング
ちょっと寄り道 TVゲームの中のウォーキング
ちょっと寄り道 道の歴史(ローマ編)
ちょっと寄り道  道の歴史(日本編)


●まえがき

 歩くことは、別にむづかしいことではありません。なにかを手でつかんだり、耳をそばだてたり、周囲に視線を配るのと同じように、ふだんの生活に欠かせない動作のひとつとして、だれでもしています。
 この日常生活における「歩き」と、最近空前の盛り上がりを見せる「ウォーキング」とは、一体どこが同じでどこが違うのでしょうか。もし違いがあるとすれば両者にどれだけの開きがあるのでしょうか。
 最初に申し上げておきますが、筆者は両者には大きな違いがあると信じています。
 まず、生活の中での歩きを考えてみましょう。居間に行くため、買い物のためにバス停まで歩く、商談で相手方の会社へ行くというように、日常の中での歩きには、常に必要に迫られた目的があります。
 たしかに、ウォーキングにも、どこまで行こうとか、こういうテーマで歩こうというような、目的がないわけではありません。でもそれは絶対的な必要には迫られたものではないはずです。歩き続けるのも、途中で歩くのを止めるのも自由なのが「ウォーキング」なのです。
 このことは、一度でもウォーキングの経験のある人なら、うなずいてくれることでしょう。
 だれに強制されるでもなく、なんの気兼ねもなく、自由にのびのびと歩くのは、とても楽しいことです。たとえ、難行苦行の登山でも、同様です。この楽しさがこたえらなくて、またウォーキングに行くという人は多いはずです。
 なぜなら、自由なフィールドは、思う存分個性の発揮できる場所だからです。
 歩きの楽しみ方は、人それぞれです。
 達人たちの歩き方もまた、それぞれ違います。それだけに、楽しく歩くためにたどりついたノウハウも、またそれぞれに人となりがちらりとのぞき、味わい深く、実に示唆に富んでいます。
 本書では、まず、さまざまな世代、仕事、環境にある「歩きの達人」のみなさんに取材をし、その歩き方やそういう歩き方に至ったいきさつ、楽しく歩く流儀(ノウハウ)、歩くよろこび、ひいては、ライフスタイルを、個々の達人ごとにまとめました。
 読者のみなさまの歩き方や歩きへの思いや流儀と重なる点もあるでしょうし、異なるところもあると思います。類似したところにうなずき、異なる点をあたまにとどめ、参考にしていただければ幸いです。
 次いで、用具の選び方。さらに実践的な歩き方のテクニックを紹介してあります。いずれも、一般的にいわれるノウハウにとどまらず、筆者や筆者を取り巻く歩きの仲間たちの成功や失敗をもとに編み出した用具選びのテクニックや歩きのノウハウを出し惜しみすることなく紹介しました。
 どの項も、ぶつ切りで無味乾燥な案内ではなく、楽しく読みながら自然にテクニックやノウハウが身につくように、筆者なりに工夫を重ねました。読むにつれ、足がうずうずし歩きたくなってきたら、筆者の努力は報われたも同然です。
 さて、本書を手に取ってくれたすべての歩く人にメッセージしたいと思います。次は、すでに達人であったり、あるいはまた達人となったみなさんの歩き方や、歩きへの思い、歩きの中でつちかったノウハウを聞かせてください。願わくば、どこか、自由な歩きのフィールドで、ともに歩きながら――。


●あとがき

 ようやく肩の荷がおりたというのが、いまのいつわらざる心境です。企画のスタートから、早くも一年半。この間、あちこちに取材をお願いし、そして、快く受けていただきました。さらに実践的な内容とするため、筆者自身もカメラマンや編集担当とともに、歩きなれた山を歩きました。取材のために歩いた日々を思い浮かべると、なつかしくもあり、楽しくもあります。
 しかし、ひとたび取材メモや写真を並べ、机に向かうと、苦しみの連続でした。毎度毎度思うことですが、本づくりとは、もっともっとの連続です。もっとこうしようああしようという思いが募るにつけ、非力な自分を思い知らされ、思い知らされれば知らされるほどなにくそという気概がこみ上げ、力が入るのです。そういう意味では、わたしの山歩きにどこか似ていなくもありません。
 そんな本づくりの道々で出会い、いただきを目指す筆者とともに歩き、話しをし、また歩きましょうと笑顔でわかれた達人のみなさんの、ひとりひとりの歩きへの思いや、その思いに培われたノウハウ、そして、生きる姿が少しでも、読者のみなさまに伝われば、筆者としてはこれ以上の喜びはありません。
 最後に、快く取材に応じてくれたみなさま、ご助言をいただいた方々、そして、より密度の濃い内容とするため、ベタ遅れとなった執筆作業を、辛抱強く待ってくださり、要所要所で的確なアドバイスをいただいた並木書房編集部に感謝の言葉をお送りします。
 おかげさまで、「最善を尽くした、胸張って行こう!」という本にできたと、ひそかに自負しています。あとは、読者のみなさんの審判を待つばかりです。


●菊地秀一(きくち・しゅういち)
作家、ライター。さまざまなペンネームを使い分け『アウトドア』(山と渓谷社)など、アウトドア関連誌や一般誌に執筆。アウトドアに限らず、幅広い分野で単行本も多数。趣味は、登山、渓流釣り、スポーツ観戦。カルディネ代表。