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作者ノート

 私は陸上自衛官OBで、当然戦車には興味があり、いつか戦車が主役の漫画を描きたいと以前から思っていました。いろいろと構想を練っていたのですが、ある日、ウォーゲーム仲間でもある大木毅氏が『戦車将軍グデーリアン』を出版し、一読したところ大変面白く、これならグデーリアンと戦車に関する漫画を描けそうだと思うようになったのです。大木氏に漫画の監修をお願いしたところお忙しいにもかかわらず快く引き受けていただき、早速描き始めました。
  描いているうちに驚いたのは、以前持っていたグデーリアンの軍神的なイメージがかなり違うということでした。歴史の研究は終わりがなく、新しい資料が発見されれば常に書き直されていくということを改めて認識させられた次第です。
  戦車に関しては、自衛官時代、第7機甲師団や装備実験隊での勤務で、ある程度知識はありました。新しい戦い方や装備の開発は大変な苦労がありますが、グデーリアンも若いころは同じような苦労をしたのではないかと共感するところがありました。
  グデーリアンは指揮官として、タイフーン作戦まで参戦していますが、その後は第一線から退き、病気療養ののち、戦車の運用や開発の総元締めのような補職につき、さらに参謀総長代理としてドイツ陸軍全般をみる立場になります。よってスターリングラードの戦い、ハリコフの戦い、クルスクの戦いなど独ソ戦の後半のクライマックスは間接的にしか経験していません。この時期は絵的にもとても面白く、よりダイナミックな戦車戦のシーンがいくつもあるので、今まで何回も映画や漫画のテーマになってきました。本書の後半では壮絶な戦車戦のシーンが少なくなるので、将来、最新の資料をもとに新しい視点からハリコフ戦やクルスク戦の戦いを描いてみたいと思っています。
  本書の完成には、大木氏に大変お世話になりました。特に最新の研究によるグデーリアンの情報やドイツ軍に関する情報は大変参考になりました。深く感謝申し上げます。
  ほかにも多くの人から激励をいただき、新型コロナという悪条件のなか、なんとか完成させることができました。この場を借りて御礼申し上げます。(石原ヒロアキ)

目 次

〈監修者のことば〉
漫画で示される新しいグデーリアン像(大木 毅)
グデーリアン略年譜
第1話 第1次世界大戦
第2話 ドイツ装甲部隊に誕生
第3話 戦車に注目せよ!
第4話 ポーランド侵攻
第5話 フランス侵攻
第6話 バルバロッサ作戦
第7話 タイフーン作戦
第8話 装甲兵総監
第9話 参謀総長代理
付録:第2次世界大戦後の機甲戦
作者ノート
主な引用・参考文献




大木毅(おおき・たけし)
現代史家。1961年東京生まれ。立教大学大学院博士後期課程単位取得退学。DAAD(ドイツ学術交流会)奨学生としてボン大学に留学。千葉大学その他の非常勤講師、防衛省防衛研究所講師、国立昭和館運営専門委員等を経て、著述業。『独ソ戦』(岩波新書)で新書大賞2020大賞を受賞。主な著書に『「砂漠の狐」ロンメル』『戦車将軍グデーリアン』『「太平洋の巨鷲」山本五十六』『日独伊三国同盟』(以上、角川新書)、『ドイツ軍事史』(作品社)、訳書に『戦車に注目せよ』『「砂漠の狐」回想録』『マンシュタイン元帥自伝』『ドイツ国防軍冬季戦必携教本』(以上、作品社)など多数。



石原ヒロアキ(本名:米倉宏晃)
1958年、宮城県石巻市生まれ。青山学院大学卒業後、1982年陸上自衛隊入隊。化学科職種幹部として勤務。第7化学防護隊長、第101化学防護隊長を歴任。地下鉄サリン事件(1995年)、福島第1原発事故(2011年)で災害派遣活動に従事。2014年退官(1等陸佐)。学生時代赤塚賞準入選の経験を活かし、戦争シミュレーション漫画『ブラックプリンセス魔鬼』および自衛官の日常を描いた『日の丸父さん』(電子書籍で発売中)、『日米中激突!南沙戦争』『漫画クラウゼヴィッツと戦争論』『漫画マハンと海軍戦略』(以上、並木書房)を発表。現在、名将マンシュタインを題材に執筆中。