はじめに
除隊を3年後に控えたころ、知り合いの編集者から「フランス外人部隊」のことを書いてみないかと誘われた。在隊中は自分が書いても、面白い本にはならないだろうと思っていた。なぜなら外人部隊に17年半在隊し、そのうちの14年を最精鋭の第2外人落下傘連隊で勤務したにもかかわらず、一度も実戦を経験することがなかったからだ。しかも後方支援中隊の事務の仕事が11年にもおよんでいた。「戦闘経験がなく、さらに事務屋だった自分が書いた本など誰が読むのか」と、その時は考えていた。
しかし、熱心に執筆をすすめられるうちに考えが次第に変わっていった。自分には戦場体験は書けないが、長い部隊生活で得た経験は誰にも負けない。これから入隊を希望する人や若い現役の日本人部隊兵(レジョネール)へのアドバイスならできるかもしれない。そう思うようになった。
数年前から感じていたことだが、若い現役部隊兵は部隊の嫌な面ばかりを見て、良い面はあまり見えていない気がする。これでは本当の意味での外人部隊の姿を理解することはできないだろう。これは非常に残念なことだ。偉そうなことを言ったが、私もはじめは彼らと同じように、経験不足とフランス語の理解不足からマイナス面ばかりが目についた。
しかし入隊から7年目に警務課(いわゆるミリタリーポリス)に配属され、この部署で計5年半を過ごしたことで、その見方が大きく変わった。警務課の主な仕事は部隊兵に規律を遵守させ、違法行為を取り締まることである。しかも部隊兵の中には裏社会出身の者もいれば、前科者もいる。そのような彼らが、入隊後も同じ過ちを起こさないよう、密かに目を光らせるのも警務課の大事な仕事だ。この警務課で過ごす間に一般部隊兵には知り得ない情報にも数多く接した。そのおかげで部隊の良い面・悪い面がたくさん見えてくるようになり、同時に外人部隊が抱えている問題も理解できるようになった。
本書の目的は、私が警務課で経験したことを公表するためではない。守秘義務もあるし、その気もない。この本は、これから部隊を目指す若者や現役の若い部隊兵たちが、外人部隊での5年間(契約期間は最短5年から)をいかに有意義に過ごし、除隊後の人生にその経験をどう活かすかをアドバイスするためだ。
現役自衛官の中には外人部隊にあこがれる人もいるだろう。だが自衛隊という素晴らしい職を捨てて、外人部隊に入る価値が本当にあるのか、本書を読んで判断してほしい。なぜなら最近、外人部隊に入隊してくる元自衛官で、自衛隊を退職したことを後悔している者が少なくないからだ。しかも彼らの半数は一年も経たずに脱走していく。
一般読者には、現代のフランス外人部隊がどういう組織なのかをまず知ってもらいたい。いまだに「犯罪者やならず者の集団」と思っている人がいるかもしれない。過去にはそのような面もあったが、今では入隊希望者の身辺調査は非常に厳しく行なわれ、また、最近は基礎学力の高い者の入隊も多く、インテリタイプの兵士が増えている。
現在の外人部隊は過去の伝統を色濃く残してはいるものの、時代の要請とフランスの政治状況に合わせて大きく変化している。時代に適応できなければ、外人部隊の将来はないからだ。
フランス外人部隊は世界中に名の知れた部隊であり、とくに英語圏で非常に有名だ。これは何度か映画化された「ボージェスト(Beau geste)」やイギリス出身の実業家で、元外人部隊兵のサイモン・マレー氏の自伝のおかげもあるだろう。そのため欧米人に「外人部隊にいた」と言うと非常に驚かれ、興味の対象となる。そんな彼らに部隊の思い出話をすると、すぐに仲よくなれる。現役・退役を問わず「外人部隊兵」という肩書きは、うまく利用すれば非常に有効な世渡りのツールになる。
私は日本の若者がもっと海外に出て、さまざまな人種、国籍、文化と向き合いながら、新しい価値観を日本に逆輸入してほしいと思っている。外人部隊は誰にでも門戸を開いている。あとは自分のやる気次第だ。日本を出て海外で働きたいと思っている人たちにとって、外人部隊での5年間はよい踏み台になると思う。
外人部隊での長い在隊期間中、やらないで後悔したこと、しておけばよかったと思うことがたくさんある。この本で書く私の失敗や後悔は、これから外人部隊を目指す人たちの反面教師として参考にしてもらいたい。
ただしこれだけは言っておきたい。くれぐれもフランスに渡る前に最低限の基礎体力とフランス語力を身につけ、さらに「なぜ外人部隊に入隊したいのか?」「除隊後はどんな仕事に就きたいのか?」をよく考えておいてほしい。除隊後の明確な目標を持たないと、私のようにだらだらと日々を過ごすことになる。それではせっかくの5年間がもったいない。
目的と強い意志を持って入隊した外人部隊での5年間は今後の長い人生の中で、最もスキルアップするための時間が持てるはずだ。一般の人が思っているほど、軍隊は忙しい職場ではない。時には寝る間もなく勤務につくこともあるが、いつも非常時でいるわけではない。どちらかというと平和で退屈な時間が長い。だから、その時間を有効に活用してほしい。
また、外人部隊を「戦闘に参加するための手段」としてとらえるのではなく、世界中から集まるバックグラウンドの異なる若者たちと付き合うことで、日本では決して得ることのできない経験を積むための「人生の学校」として、フランス外人部隊をとらえてほしい。実際、私のように長く在隊しても、実戦に参加できない者がほとんどなのだ。
本書は、これまで出版されたフランス外人部隊関連の書籍とは、まったく違う視点で書き進めていきたい。これから入隊を目指す人や、現役日本人部隊兵の意識を少しでも改革できれば幸いだ。規律正しく真面目な日本人部隊兵が増えることで、後述する外人部隊が抱える問題が少しでも改善されると信じている。
なお、本文中の1ユーロは135円で換算している。また、本書では外人部隊とフランス正規軍を、便宜上別々に記述しているが、外人部隊もフランス正規軍に含まれる。フランス正規軍における外人部隊の組織・編制は次ページのとおりである。
《フランス外人部隊の命令系統》
外人部隊総司令部はフランス陸軍総司令部の直轄だが、その権限は、後方支援連隊に含まれる第1外人連隊、第4外人連隊、外人部隊徴募隊の運用に限られ、ほかの連隊に直接、戦闘命令や海外派遣命令を出すことはできない。上記の図のように、それ以外の外人部隊連隊は、陸軍の各旅団の隷下にあり、海外派遣、訓練などのプログラムはそれぞれが所属する旅団ごとに決められる。
たとえば、第1外人騎兵連隊、第1外人工兵連隊、第2外人歩兵連隊はともに第6軽機甲旅団に属し、同旅団に割り当てられている海外派遣地に送られる。2016年6月以降、同旅団に第13外人准旅団も加わるだろう。
本土外の部隊も同様に、その地域に展開するフランス軍隷下にある。
このように外人部隊独自で立案し、作戦を実行することはない。
◆目 次◆
はじめに 1
第1章 目指せ!フランス外人部隊 10
1 外人部隊兵の心構え(宣誓書)12
2 ミリタリー好きと海外へのあこがれ(私の志願動機1)14
3 1冊の本が進路を決めた(私の志願動機2)16
4 志願者に求められる最低条件 18
5 選考時のスポーツテストと必要書類 20
6 選考時の健康診断 22
7 学歴は求められない 24
8 大学を出てから外人部隊を目指すべきか? 26
9 最低限の基礎体力をつけてから志願しよう 28
10 外人部隊兵に求められる基礎体力の作り方 30
11 外人部隊は走る軍隊だ! 32
12 世界中にファンがいる日本の武道(入隊前にやっておく格闘技1)34
13 腕力がものを言う(入隊前にやっておく格闘技2)36
14 フランス語が上達しない日本人部隊兵 38
15 なぜ日本人はフランス語が喋れないのか? 40
16 他国出身の外人部隊兵のフランス語能力 42
17 基礎教育訓練で必要な能力とは? 44
18「死」を覚悟して志願する 46
19 両親や家族とは必ず対話の機会を持とう 48
20 息子が「外人部隊に志願する」と言ったら… 50
21 入隊前から除隊後のことを考えておく 52
22 目的にあった連隊を選ぼう 54
23 渡仏に際し持っていく物 58
24 いよいよパリの徴募所へ 61
25 オバーニュの本部連隊での最終テスト 63
第2章 現代のフランス外人部隊 65
26「質より量」の外人部隊創設期 66
27 後方支援連隊―外人部隊連隊(1)68
28 戦闘部隊―外人部隊連隊(2)71
29 フランス海外県の連隊―外人部隊連隊(3)74
30 フランス領外の連隊―外人部隊連隊(4)77
31 志願兵教育連隊カステルノダリでの生活 79
32 甘くなった外人部隊の新兵教育 81
33 気の合う仲間を見つけて基礎教育を乗り切れ! 83
34 基礎教育のプログラムの概要を知っておこう 85
35 なぜまわりの隊員からバカにされるのか? 87
36 東洋人に辛くあたる東欧出身の部隊兵 89
37 部隊兵が恐れる外人部隊の警務部「DSPLE」91
38 入隊時の「仮の身分」から本名に戻す 94
39 さらに厳しくなった入隊者の身元調査 96
40 今も受け継がれる「アノニマ(偽名)」制度 98
41 外人部隊が独身の志願者を望む理由 102
42 外人部隊への志願者数と入隊者数 104
43 パリ襲撃事件後、兵員削減の流れは変わった 106
44 なぜネパール人志願者が急増したのか? 108
45 書き直された「外人部隊兵の心構え」110
46 外人部隊出身の将軍たちの影響力 112
47 フランスの軍事作戦を支えるピュガ大将 114
48 ワインの飲み過ぎには注意しよう 116
49 麻薬には絶対に手を出してはならない 118
50 無責任な部隊兵が増えた理由 120
51 ジブチ勤務は「バカンス気分」? 122
52 外人部隊で最大の記念日「カメロン祭」124
53 宗教を超えた外人部隊のノエル(クリスマス)126
54 イブの夜は部隊兵の寸劇で盛り上がる 128
55 家族持ちが増えてノエルの意義が薄れてきた 130
56 外人部隊に女性を入隊させないわけ 132
57 女性外人部隊兵の誕生はあり得るか? 134
58 フランス人に頼りにされている「外人部隊」136
59 外人部隊兵はフランス女性にモテるか? 138
60 ソーシャルメディアと軍人の付き合い方 140
第3章 フランス外人部隊の日本人兵 142
61 日本人志願者の合格率は今も昔も高いが… 144
62 犯罪歴のある日本人でも入隊できる? 146
63 日本の「ワル」と世界の「ワル」の違いは? 148
64 日本人が入隊することで部隊にプラスになる 150
65 帰国後、警察官を目指したK君の険しい道のり 152
66 反日国家出身の部隊兵との関係 155
67 5年任期を超えて勤める日本人が増えてきた 157
68 最も部隊兵らしい日本人。文武両道の好漢 159
69 正規軍よりも知能指数が高い外人部隊兵 161
70 自衛隊を辞めたことを後悔する日本人部隊兵 163
71 部隊で活躍する元自衛官。決め手はフランス語 165
72 外人部隊の裏が見える警務課での経験 168
73 部隊の嫌われ者? 警務課という仕事 170
74 警務課はストレスの溜まる仕事 172
75 軍曹の危機を救った警務課中尉の熱い思い 174
76 ジブチの戦闘訓練所で過ごした充実の1年 176
77 最も楽な仕事で、最も退屈だった郵便係 180
78 郵便係に配属された本当の理由 182
79 部隊の活動を記録!連隊付きカメラマン 184
80 上官の信頼を裏切って脱走した日本人部隊兵 186
81 優秀であるがゆえに脱走する? 189
82 誰でもできる外人部隊兵の見分け方 191
83 部隊兵の中にも麻薬に手を出す者がいる 194
第4章 外人部隊の経験を将来に活かす 196
84 特技課程へ─入隊後も問われ続ける過去 198
85 希望する特技課程に進めないのにはワケがある 200
86 除隊後も役立つ特技課程は何か? 202
87 どちらを選ぶか? 週末の過ごし方 204
88 長期休暇は年間45日! 海外渡航する際の注意点 206
89 休暇で使える部隊専用の宿泊施設 208
90 長期休暇─第二の人生に備えて趣味を極める 211
91 長期休暇─フランス語を習得して活動の場を広げる 213
92 語学留学の心得─「英語も話せます」215
93 一時帰国の手続き─家族が病気になったら? 217
94 大災害が日本で発生したらどうするか? 220
95 若い時についた浪費癖は直らない 222
96 部隊兵はいくら給料をもらえるか? 224
97 誰もがうらやむ長期海外派遣 226
98 給与支払いの新システムが導入されて大混乱 228
99 日本人現役部隊兵は国民年金を納めるべきか? 230
100 日本人部隊兵向けのファイナンシャルプラン 232
101 部隊が認めればフランス国籍を取得できる 234
102 日本とフランスの架け橋になる 236
103 名前をフランス人風に変える? 240
104 フランス国籍申請を拒否されることもある 242
105 フランスのために血を流した者は自動的に帰化できる 244
106 圧倒的に高い落下傘連隊の負傷率 246
107 ケガをしたら決して無理はしない 248
108 入隊後すぐに生命保険に加入させられる 250
109 保険金の支払いを受けるための手続き 252
110 軍人の当然の権利、傷痍軍人手当の申請 254
111 ケガはしないに越したことはない 256
112 どこにいても死ぬまでもらえる軍人恩給 259
113 自衛隊も恩給制度を採用したらどうか? 262
第5章 除隊後のフランス外人部隊兵 264
114 外人部隊が発行する最重要書類「CBC」266
115 外人部隊の互助組織「アミカル」268
116 除隊後はスローライフを夢見る部隊兵 270
117 必要に迫られて危険な仕事に就く元部隊兵 272
118 除隊後の人生は在隊中から始まっている 274
119 途上国出身者の台頭で海賊対処の仕事も激減 277
120 日本人セキュリティ・マネージャーを目指せ! 279
121 世界に広がる外人部隊のネットワーク 281
122 外人部隊の老人ホーム「ピュルビエ」283
123 入隊から死ぬまで部隊が面倒を見てくれる 285
124 老後は養護院で働きながら余生を送る? 287
125 外人部隊のワインを日本人にも飲んでほしい 289
おわりに 291
おわりに
読者のみなさま、つたない私の文章を最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
フランス外人部隊は、私のようなごく普通の日本人にも、多くのチャンスを与えてくれました。人種や国籍、文化、価値観の違う仲間と接することで、得難い経験も積むことができました。彼らと付き合うなかで、当初はまったく意識していなかった日本を再認識するとともに、日本人であることに誇りを感じるようになりました。
この本を読んで、自分もチャレンジしてみようと思う人がいるかもしれません、それが私の求めるところでもあります。世界は広く、それを人生の中で実感できないことは非常に残念なことだと私は思います。
またそれを最も実感できる時期は、やはり若いうちしかないでしょう。だから日本の若い人たちにはもっと海外に出てほしいと思っています。その足がかりとして、フランス外人部隊を利用するのもよいでしょう。
部隊で過ごす5年間(1任期)は、長い人生の通過点にすぎませんが、非常に濃密な時間となることは間違いありません。部隊兵としてさまざまな経験を積み、見聞を広め、除隊後の人生を豊かなものにしてほしいと思います。
そして、将来、日本人初の士官が生まれることも期待しています。いつの日か士官の立場で部隊のことを語ってほしいと思います。この本とはまったく違う内容になるでしょう。
ただひとつ心配なことがあります、最近の日本人部隊兵の中には、日本人であることを意識するあまり、他国出身者の価値観を受け入れることができずに、「こんな連中とは付き合っていられない」と、壁を作ってしまう者が一部に見られるからです。
日本でしか通用しない狭い価値観で相手を判断していては、日本を飛び出した意味が半減してしまいます。それでは間違いなく外人部隊の本質を見誤ってしまいます。「郷に入っては郷に従う」。このことを忘れずに日々勤務してもらいたいと思います。外部から新しい物(価値観)をとりいれたら日本風にアレンジしてさらに価値を高める。それができるようになれば、除隊後の人生はより楽しくなるのではないでしょうか。
これから私は、部隊での経験や人脈、ネットワークを活用しながら、次の人生を始めるつもりです。部隊で素晴らしい経験ができた反面、外人部隊という厳しい制約のなかで生活してきたので、できないこともたくさんありました。
自由な生活を楽しみながら、今までやれなかったことにも挑戦しようと思います。その第一歩がこの本の執筆です。次に第2外人落下傘連隊に関する電子書籍を写真入りで出そうと計画しています。
再就職もせずに、こんな気楽な生き方ができるのも、死ぬまで支給される軍人恩給のおかげです。そして「人生に行き詰まったらピュルビエがあるさ!」という一種の保険があるからです。本文で紹介したように、養護院「ピュルビエ」は、身寄りもなく、帰る場所を失った元部隊兵を養護する施設のことです。ここで健康状態に応じてさまざまな作業に従事しながら自活することができます
養護院「ピュルビエ」があるからこそ、外人部隊は完全に自己完結した組織と言えるでしょう。入隊から除隊後まで、本人が望めば一生を部隊で終えることもできます。こんな軍隊はほかにありません。本書を読んでもらえれば、外人部隊兵は「捨て駒」ではないことを理解していただけると思います。
サン・シャマ前総司令官が、第2外人落下傘連隊の部隊兵を前に語った言葉が今でも忘れられません。
「フランス外人部隊は守らなくてはならない大切な宝物だ。決して奪ってはならないし、奪われてはならない。我々の手で守っていかなければならないのだ」
1831年に創設され、伝統あるフランス外人部隊は、部隊兵自身の手で守っていかなければならないのです。それにはどうすればよいか? とても簡単なことです。部隊兵1人ひとりが規律正しく毎日を過ごし、与えられた仕事(任務)を確実にこなす。これだけです。
除隊後、旅行と取材を兼ねて各地をまわり、現役の部隊兵や、アフリカなどで働いている元部隊兵、また彼らの家族・友人からも貴重な話を聞くことができました。今まで会ったことのない人たちと出会い、彼らの話を聞くたびに、私の「外人部隊の情報網」はどんどん広がっていくのを感じます。除隊後も、このようなネットワークにアクセスできることこそ、私が長く部隊に勤務して得られた最高の宝物と言えます。除隊してからあらためて外人部隊の凄さ、長く在隊できた幸運を実感しています。
この本を出すことで、一般の方たちが抱いていた外人部隊への偏見が少しでもなくなれば幸いです。
最後に、これから入隊を希望する人に、私の好きな言葉を贈ろうと思います。エリードゥ・サンマールは外人部隊の伝説的な士官の一人です。第2次世界大戦、インドシナ戦争、アルジェリア戦争を戦い、青春のすべてをフランス、そして外人部隊のために捧げた方です。
確実なものは何もなく、容易であることも存在しない。
誰かから与えられる物などなく、無償で手に入る物もない。
このことは知っておかなければならない。
すべては努力して獲得されるべきであり、それらを得るに相応しくあらねばならない。
何かを犠牲にしないかぎり、何も得ることはないのだ。
Il faut savoir que rien n’est sur, que rien n’est facile, que rien n’est donne, que rien n’est gratuit. Tout se conquiert, tout se merite. Si rien n’est sacrifie, rien n’est obtenu.
エリードゥ・サンマールは、アルジェリアでのフランスに対する軍事クーデターに参画、のちに投獄。恩赦で出獄後は外人部隊での経験を元に精力的に執筆活動を続けました。部隊をこよなく愛し、その素晴らしい思い出を胸に91歳で老衰のために死去。
本書の執筆に際しては、部隊の上官、同僚、日本人元部隊兵の先輩方から多くのアドバイスをいただきました。私の求めに応じて快く写真を提供してくれた方々にもあらためてここで感謝申し上げます。
まったく経験のないままに書き進めてきたので、思いのほか時間がかかってしまいましたが、そんな私を叱咤激励してくださった並木書房編集部に深く感謝しています。
2016年2月
カポラルシェフ(上級伍長)合田洋樹
◆著者経歴◆
合田洋樹(ごうだ・ひろき)
1978年神奈川県生まれ。都内の高校卒業後18歳で渡仏。1997年フランス外人部隊に入隊。計17年半勤務し2014年11月除隊。最終階級は上級伍長。在隊中は主に第2外人落下傘連隊に所属し、ジブチの第13外人准旅団にも計3年間在隊。長い在隊期間中の約11年間を後方支援中隊にて事務員として勤め、そのうちの5年半を警務課で勤務。外人部隊を深く理解するうえでこの部署での経験が非常に役立つ。現在は第2外人落下傘連隊についての電子書籍を執筆中。
《長期派遣歴》
1997年〜1998年ジブチ
2009年〜2011年ジブチ
《短期派遣歴》
1999年ボスニア
2000年ガボン
2001年ジブチ
2002年ギアナ
2004年ジブチ
2006年ジブチ
2010年カタール
2011年ウガンダ |