本書「パート1」では、自衛隊統合部隊が主導する東日本大震災の被災者救援活動を支援した在日米軍統合部隊による「トモダチ作戦」と、それに参加した在日米軍統合救援部隊員たちの活動を、アメリカ各軍の広報写真を時系列に再構成することで明らかにした。
したがって、アメリカ軍の6倍の規模の大部隊を編成し、より長期にわたって救援活動に従事している自衛隊員の活躍については触れていない。
「パート2」では、「トモダチ作戦」という日本と米国の軍隊によって実施されたHADR(人道支援・災害救援)作戦から、どのような軍事的教訓が引き出せるか、そして、それを日本の将来にどう活かすことができるのかを論じている。
未曾有の大災害からさまざまな教訓を学び取り、将来に向けてそれらの教訓を役立てることこそ、多くの同胞の犠牲を無にしないことであると確信する。
本書を記した2011年3月中旬時点では、アメリカ軍各レベル(国防総省、太平洋軍、太平洋海兵隊、太平洋艦隊、太平洋空軍、第7艦隊、第V海兵遠征軍、第31海兵遠征隊など)が編纂した「トモダチ作戦」に関するまとまったレポートの類いは未だ公表されていない。
そこで、本書「パート1」を構成するすべての写真と情報は、アメリカ海兵隊ウェブサイト(「アメリカ海兵隊ニュース」、「アメリカ海兵隊写真集」)、アメリカ空軍ウェブサイト(「アメリカ空軍ニュース」、「アメリカ空軍写真集」)、アメリカ海軍ウェブサイト(「アメリカ海軍本日のニュース」)、アメリカ太平洋軍ウェブサイト(「アメリカ太平洋軍ニュース」)、アメリカ国防総省ウェブサイト(「アメリカ国防総省ニュース」)、アメリカ陸軍ウェブサイトに掲載された公開情報から得たものであり、誰でも確認することが可能な情報である。
そもそも、軍隊や国防関係の政府発表情報というものは極めて限られたものという概念は、共産党政権や独裁政権の国家、かつての大本営発表の悪弊から脱却できていない日本に特有のものといえる。
数年前に、アメリカ陸軍のフォースタージェネラル(4つ星:陸軍トップに近い将軍、大将)が「日本防衛当局と中国人民解放軍は情報を公開しないという点で極めて似通っている。もちろん米軍とて、秘密情報は少なくないが、できるだけ幅広い情報を公開する努力とシステムは維持している」と筆者に語ったことがある。実際に、現代の軍事情報の9割以上がオープンソースから得られると言われている。
ただし、必要な情報をすべて引き出すのは困難なほど、アメリカ政府やアメリカ各軍のウェブサイトでの公開情報は極めて膨大な量であり、細部の不明点や確認事項は筆者の友人の海兵隊関係者や海軍関係者に照会して誤りを極小にするように努めた。
アメリカの軍事関係シンクタンクでアメリカ海軍ならびに国防総省の情報分析に関与している筆者は、そのようなルートによって海軍関係者とコンタクトを取り合っているが、それ以上に助けになってくれるのは海兵隊の友人たちである。
筆者とアメリカ海兵隊との関わりは全く私的なものである。筆者の日米同盟論はシーレーン防衛と海兵隊(本書「パート2」で触れる併用戦能力ならびに緊急展開能力)を重視しており、日米同盟を重視する海兵隊将校たちと意気投合した結果、筆者は何ら日本の国防当局に関係するものではないにもかかわらず、互いにコンタクトし合って助け合う関係が続いている。
海兵隊将校たちと海兵隊の“宝物”である「WARFIGHTING」(海兵隊ドクトリンの総論)の日本語版を作成することを約束し、筆者の妻が翻訳して筆者が解説を加えて日本で出版したことからますます協力関係は深まった。
なぜ筆者がアメリカ海兵隊に関心を持つかというと、日本に自主防衛能力が欠落している以上、アメリカ海兵隊の誇る併用戦能力と緊急展開能力は日本防衛にとり必要不可欠だからである。
本書「パート2」で概要を記したが、「トモダチ作戦」でアメリカ海兵隊の持つ併用戦能力や緊急展開能力が、ほんの一部分ではあるものの、多くの日本国民に具体的な形で示された。これを機に、日本の国防当局をはじめとする日本政府、政治家たちが、日本の防衛にとってアメリカ海兵隊が、そしてそれを特徴づける併用戦能力が不可欠であるとの認識を持っていただけることを念願している。
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