はじめに 1
第1章 尖閣諸島の攻防最前線 9
激しさを増す尖閣諸島への領海侵犯 9
SSTに出動命令! 11
魚釣島の立ち入り調査 14
「抗議船団、出港」の知らせ 18
デモ隊、島に上陸! 20
日本を取り巻く領土問題 25
尖閣事案ビデオ流出について 26
第2章 海上保安官の仕事 29
海上保安庁発足までの道のり 29
3年がかりで海上保安庁設立 32
秘密裏に派遣された「特別掃海隊」 34
少ない人数で日本の海を守る 35
領海に関する新しい法整備 36
災害派遣や離島における救急活動 39
阪神淡路大震災時の活動 42
台風や地震時の出動について 43
密入国を監視・警戒するテクニック 44
増強される特警船と特別警備隊 47
特警隊の装備と編成 49
密輸・密航事案の対処方法 51
密輸品のトップはけん銃などの武器類と薬物 54
密輸対策の強化 55
海の覆面パトカー「監視取締艇」 58
海上だけに限らない海上保安庁の犯人逮捕 59
制限の多い陸上での捜査 61
危険をともなう海上デモの警備 63
海上テロ行為への対応 68
海賊を取り締まる国際警察官としての役割 69
海賊船はいかなる国でも拿捕できる 72
海賊を取り締まるための国内法整備 73
過激化する環境保護団体 75
海保の臨検について 76
つねに緊急出港に備える海上保安官 77
間一髪の緊急出港 79
海保の名称を前面に出せ! 82
海上保安官の階級・職種と隊員章 84
第3章 海上保安庁の装備 88
警備救難艇のすごい能力 88
巡視船艇の名称 92
念には念を入れる装備の手入れ 94
海上保安官の小型武器 95
巡視船艇の武装 99
小銃とサブマシンガン 106
犯人逮捕のための武器使用 110
第4章 領海を守る海上保安官 115
危険と隣り合わせの強行接舷移乗 115
停船と移乗方法 116
忘れられない遺体の揚収 120
警備救難艇で遺体を引き取る 124
捜索・救助活動 126
船舶火災の消火活動 127
危険な沈没後の浮上物 130
非常に難しい領海の警備 132
二度と起こさせない拉致事案 134
警備を主体にした海警隊の発足 138
ソウル五輪をテロから守れ 140
東シナ海での船員暴動を鎮圧せよ! 144
「EBキャリア号」事件から学んだ教訓 152
「蛇頭大量密航船」事件 160
第5章 プルトニウム輸送船警備 168
海上保安庁に決まったプルトニウム輸送 168
警乗隊の創設と装備の選定 174
世界の頂点に立つシールズから実技指導 176
安全管理とガンハンドリング 180
訓練に明け暮れた往路 183
いざという時は「自沈」も覚悟 188
招かれざる客グリーンピース 193
犬に負けた最新鋭装置イージス 197
シェルブール出港、いよいよ日本へ 206
オイルフェンスで航路を確保 210
第6章 特殊警備隊SST 218
世界に類を見ない海上保安庁のSST 218
洋上での長距離狙撃訓練 221
特殊部隊の装備 224
ファストロープ降下 229
要人警護テクニック 233
本物の特殊部隊を目指して 234
犯罪を未然に防ぐ抑止効果の重要性 239
指揮官の決断 240
補遺 東日本大震災に出動! 244
地震・津波の直後から始まった海保の救助活動 244
港湾の機能回復に向けた作業も始まる 247
おわりに 249
おわりに
最後まで本書をお読みいただき、ありがとうございます。
言うまでもないことですが、海上保安官を含め、すべての公務員は「国民全体の奉仕者」です。すべての公務員はそれを宣誓して職務に就きます。
そして、さまざまな業務、とくに危険な業務を完遂する場合は、つねに考えて慎重に行動することが重要です。
これは公務員に限らず、誰にも共通することですが、業務の遂行だけを考えて、周囲の状況を考えずに突き進むのは危険極まりないことだと思います。ときには「撤退」することも重要です。
私は、海上保安庁初の特殊警備隊「SST」の創設期から深くかかわり、一隊長としてさまざまな事案を遂行してきました。とくに危険な事案を担当する場合、肝に銘じていたことは、「慎重に考えて行動する」ことと「撤退する勇気」を持つということの2つでした。このおかげで部下を犠牲にすることなく任務を全うできたことが私の秘かな誇りです。
最後に私の座右の言葉とも言うべき山本五十六海軍元帥の教えを紹介して、本書を締めくくろうと思います。この教えは、海上保安官時代に私が受けた指導方法の真髄とも言えるものです。
やって見せて、言って聞かせて、やらせて見て、ほめてやらねば、人は動かず。
話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。
やっている姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。
すでに半世紀以上も経過した言葉ですが、この教えを実践できれば、海上保安庁を含め多くの実動部隊はさらなる発展ができるのものと思います。読者の皆さんも、家庭や職場でそれぞれ責任ある立場にあるとき、この言葉を思い出していただければ幸いです。
最後になりましたが、今回の「改訂版」を出版するにあたり、快く共著を受けて下さった川口大輔さんに心からお礼を申し上げます。川口さんの賛同がなければ、本書を再び世に出すことはできませんでした。海上保安庁史に関する記述は全面的に川口さんの手によるものです。
また私の拙い原稿をまとめてくださった並木書房出版部および親身に応援して下さった多くの友人たちに心から感謝します。
平成二三年四月
住本祐寿
住本祐寿(すみもと・まさかず)
1983年に海上保安庁に入庁後、第5管区に配属。87年、岸和田海上保安署関西国際空港海上警備隊員に拝命。「EBキャリア号」事件、ソウル五輪警護に従事。91年、プルトニウム輸送船「あかつき丸」に武装警乗保安官として乗船し輸送業務にあたる。94年、第1管区海上保安部特警隊規制班長として大量中国人密航事件および函館ハイジャック事件を担当。96年、大阪特殊警備基地特殊警備隊SST副隊長、99年に隊長を拝命。2000年12月退庁後、国内外にてPMC活動(訓練指導および警備業務)を行なう。著書に坂本新一の名前で『海上保安庁特殊部隊SST(協力)』(並木書房)がある。
川口大輔(かわぐち・だいすけ)
1975年、福岡県生まれ。福岡大学附属大濠高校卒業後、九州大学文学部入学。さらに九州大学大学院文学研究科に進学し、歴史学を専攻する。2003年3月に単位取得退学。軍事史学会会員。現在は翻訳業。韓国紙記事の日本語訳を手がける。「海上警備」に関するサイトを運営。 |