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目 次

序章 ロボット軍時代の国際法はどうなる? 5

第1章 海洋戦闘のロボット化 12

武装無人ヘリの必要性と有効性 12
初期の無人ヘリ「DASH」の目的と開発経緯 15
「DASH」運用の実際と、それが教えてくれたこと 21
次に無人化される海上任務は何か? 26
無人救難機の可能性 31
ニュージーランド企業すら健闘できるUAVビジネス 33
無人機の普及で生じる洋上哨戒機の基地不足 37
復活近い「航空用ディーゼル・エンジン」の歴史を振り返る 38
ドイツが先鞭をつけた航空用ディーゼル・エンジンの実用化 43
諸外国のディーゼル・エンジン開発の試み 47
クリーンな舶用ディーゼル・エンジンも活躍する 52
掃海ロボットと機雷敷設ロボット 55
無人武装水上艇 61
対艦弾道ミサイルによる対支反撃オプション 62

第2章 空対地作戦のロボット化 65

B‐17を改造した無人特攻機「BQ‐7」 65
B‐2やF‐22の後継機は、プラスチック製の無人機か? 69
どの国も真似できない巨鳥「グローバルホーク」 72
有人機に取って替わる「グローバルホーク」 76
シナ軍はすでに戦術偵察UAVを持っている 82
弾道弾技術並みに輸出が規制されそうな万能無人機「プレデター」 84
対テロ作戦に実績を上げる「プレデター」 89
進化、高性能化を続ける「プレデター」 95
継続監視なら無人飛行船が得意だ 98
高性能UAVは友好国にも輸出が許されぬ場合があり得る 101
「前路偵察」に特化したUAVがアフガンでは求められている 102
パキスタン軍すら国産UAVで戦うというのに…… 107
無人輸送機や「ロボット・グライダー」も可能である 110
「ハドレー循環」とF‐22級最新鋭機の無用性 115
SF作家レムが着想したUAVの「スウォーム」戦術 121
恂ウ人機のスウォーム揩フ可能性 124
マイクロUAVの将来的な脅威 128

第3章 地上戦闘はどう変わるか? 130

迫撃砲の砲側員がまずロボット化されるだろう 130
陸自はGPSにどこまで頼るかを早急に決める必要がある 132
車両の火力自衛システム 136
地上偵察ロボット 138
自律式の輸送業務ロボット 139
補給・兵站業務のロボット化 143
NBC災害派遣と無人機 147
有人では危険が伴なう地雷原啓開作業 152
インド陸軍が無人戦車に挑む 153
車載ディーゼル・エンジンはエコ軍備競争を制する 154
軍用車両へのディーゼル・エンジンの応用 163
乗用車用小型ディーゼルは無人兵器にも革命を起こす 175
ロボットは騒音にも悪臭にも平気である 185
戦車用エンジンと防御レイアウトの未来図 187
戦車にとって新たな脅威とは? 191
燃料電池とミニ・ディーゼルはどちらがロボット向きか? 194

あとがき 197


あとがき

 本書は、無人機や軍用ロボットを使うことがあたりまえとなる近未来に向けて、戦場と銃後の何がどう変わろうとしているのか、国民の中の未だ開発されざる「感覚」を刺激する想像の素材として、ざっとまとめてみた。

 2008年末のいわゆる「田母神論文」に関して日本の政治家の誰一人、上等な批評ができないという醜態を、わたしたちは2009年前半に目撃させられた。
  挙句、どうやら日本の「核武装」など、半永久に不可能なのだ――と、わたしは予見する外になかった。
  国民の中の、軍事外交・国防国策のイメージのレベルが、いかにも低きに過ぎるのはなぜなのだろう? そのイメージを豊かに高める仕事を、わたしは疎かにしていたのではないか――とも三省をした。
  オタク読者の「ツッコミ」と称する自己主張に付き合うのが億劫なあまり、近年の論壇では、武器について学ぼうという態度を保持しているライターほど、武器について何も書けなくなるという悪循環が生じていたのだ。

 無人兵器やロボット兵器は、機能や性能が、これからどこまで拡大し進化するか、誰にもわからない。
  確かなのは、それは徐々に戦略級の仕事まで担任するようになり、年月とともに、その政治面での重要性が増すに違いないことだ。
  わたしは、「ロボット兵器は、遠い将来には、核兵器の代わりにすらなり得る」と断言して憚らない。
  しかるに日本国は、いまや全世界がこぞる、この無人兵器の開発レースで、早くも数周回遅れの、断然ビリっケツの地位を、ものの見事にキープしている。米国などとは言うもおろか、第三世界の数カ国と比べてすら、ロボット兵器の製造と運用の双方で、わが国は重大な立ち遅れを喫してしまっている。
  そして、そうでありながら、それを政府も野党も、少しも深刻に考えていないのだ。
  これはマスコミの責任でないとしたら、学者や評論家や専門ライターの責任だろう。兵器オタクのツッコミを気にしている場合ではない。

 日本の民間には、ロボット機械に対する表面的な親和性が認め得る。けれども、『我こそは世界最先端の軍用ロボットを開発し、国家の生存のために貢献しよう』といったモチベーションを抱く個人やベンチャー事業家は、根っから欠けている。
  これは偽憲法を戴いた社会の宿命かもしれぬが、だからといって事態を傍観していれば、日本という国家はお終いになる。その先に待っているのは「アフガニスタン化」だろう。

 いかにも、近隣国には、ロボット機械を発達させるための社会インフラが不十分だという憾みはあるかもしれない。しかし、彼らの指導者層とベンチャー事業家のヤル気が、社会インフラも創り出す勢いを示している。なにより、彼らの社会には、「軍用商品開発」に関する禁忌が無いのだ。しかも、立法家が、巨大輸出企業の下僕に成り下がることもない。

 彼らの国家指導層は、日本の財務省のように怏゚去の装備表にないものに急に大きな予算はつけられません揩ネどとも言わない。官吏と政治家の既得権構造が、新分野への公共投資シフトに抵抗することも、無い。

 不勉強な日本の政治家は、「一部大手輸出メーカーの経営」と「国家国民の経済」を、何も考えずに同一視している。
  それが日本国民をますます困窮疲弊させ、日本人の労苦の結晶たる富を無為に米国やシナへ転送させ、日本全体を貧しく不幸な境涯へ追い遣る。彼らはそれに、すすんで手を貸してしまっているのだ。
  賃金水準の割安な外国から労働力を日本に招致しても、日本社会は豊かにはなり得ない。なぜなら、人間は、いつまでも他よりも悪い待遇で我慢して働く動物ではないからだ。人間は自身で情報を収集できる。正当な扱いを受けているかどうか、己れで判断できるのが成人だ。やがて日本国内の企業は軒並み、外国人労働者から、賃上げ要求やら福利厚生保障の要求をつきつけられる。ケツを拭かされるのは、地方自治体と全国の納税者だ。

 近い将来には、軍隊だけでなく、たとえば住宅まるごとが、またたとえば自動車そのものが、すべてロボット化するのだ。これは近代技術の趨勢なのである(自動車オタクにも、ここは見えていないようだ)。
  もしそれらの根幹ソフトウェアを端からぜんぶ米国におさえられてしまったなら、日本人は巨額のパテント使用料を未来永劫に米国企業に貢ぎ続けねばならなくなり、国内メーカーの輸出競争力も衰え、ついには国民が必要とするエネルギーと食糧を輸入するための外貨にすら事欠くようになるかもしれない。
  そうなってしまう前に、原子力と自前のロボット技術とにより、日本国民の総合安全保障を確保しておかなければならない。それが、「天下を安んずる」政治の眼目であろう。
  日本が原発を大増設し、乗用車を小型ディーゼル化し、石油依存度の低いロボット国防軍を建設し、海外石油への依存度を漸減させて限りなくゼロに近づける道を進むことにより、日本を「属国」たらしめてきた米軍への全人格的な依存心理からも、われわれは脱することができる。その妾根性が、たとえば日本の「兵器オタク」にも、一風変わった自我を植えつけてきたのである。
  こうした決心をせずに、漫然と時を過ごせば、近隣諸国の止むことのないロボット軍拡のために、日本は辺境から「アフガニスタン化」して行く虞れすらあるだろう。

 UAVのUは「アンマンド」、つまり「無乗員」の意味で、「無人」と訳すのは不正確である。じっさいには地上で管制する人間が1人以上、必要だ。撃ちっ放しの「巡航ミサイル」の方向へ進化しないとすれば、UAVは、人間の感覚や意思力との接続を、活躍の場において断たないものであろう。とすれば、UAVや、その他の無乗員兵器の活動/不活動を決定する、戦争行動の意志的判断の主体が、どこかに存在しなければならない。
  戦争行動は政治行動だ。政治の目的は権力である。権力とは、飢餓と不慮死の可能性からの遠さである。しかるに機械は飢えや自己破壊を苦痛とも思っていない。よって機械は権力も求めない。よって戦争行動の主体が機械自身となることはあり得ないのだ。
  高度にロボット化された軍隊は、アマチュアの司令官や、未訓練なオペレーターによって動かされてもなお国民に勝利を約束するものでは、少しも無い。当然に、国防の無人化に至る道では、いささかも無い。逆に、無乗員兵器の指揮運用について習熟したプロフェッショナルを何万人も育成しなければ、列強の進度についてはいけないのだ。だから、急がねばならない。

 無人兵器の開発や配備や訓練の競争には、すべての先進国が巻き込まれるので、一国だけ傍観していることは「安全・安価・有利」ではない。無視をきめこむことは、不可能もしくは不合理であり、その先には、国土の「アフガニスタン化」しかないだろう。
  一人でも多くの士が、本書によって覚醒してくれることを切に望む。
  2009年11月
                                     兵頭 二十八 識

 

兵頭二十八(ひょうどう・にそはち)
1960年長野市生まれ。高卒後、北海道の陸上自衛隊に2年間勤務し、1990年、東京工業大学 理工学研究科 社会工学専攻博士前期課程修了。現在は評論家。著書(共著含む)に、『あたらしい武士道』『精解 五輪書』(以上、新紀元社)、『属国の防衛革命』、『日本の戦争 Q&A』(以上、光人社)、『やっぱり有り得なかった南京大虐殺』(劇画原作、マガジンマガジン)、『【新訳】孫子』『【新訳】名将言行録』『自衛隊「無人化計画」』(以上、PHP研究所)、『逆説・北朝鮮に学ぼう!』『ニッポン核武装再論』『陸軍戸山流で検証する日本刀真剣斬り』『予言日支宗教戦争』(以上、並木書房)、など多数がある。