目
次
はじめに 1
第1章 M4小銃の基礎知識 7
第2章 M4小銃の整備 17
第3章 M4の弾薬5.56mm弾 31
第4章 M4のセットアップとカスタム 41
第5章 M4小銃の製造工程 55
第6章 光学照準器・夜間暗視装置 63
第7章 M4小銃射手の装備 78
第8章 ゼロイングと弾道 93
第9章 キャリー・ポジションとレディ・ポジション 108
第10章 立射姿勢 122
第11章 膝射姿勢・座射姿勢 126
第12章 伏射姿勢 133
第13章 リローディング 139
第14章 マルファンクション・クリアリング 146
第15章 実射ドリルと射撃試験 151
第16章 ログブックと射撃記録 160
第17章 未来の制式小銃 163
あとがき 172
あとがき
私が米陸軍に入隊してから、早いもので7年以上の月日が流れた。士官候補生時代を含めると、すでに10年以上の期間を訓練に費やしたことになる。
ミシガン州北部での士官候補生訓練、ジョージア州フォート・ベニング基地での歩兵基礎訓練、ノースキャロライナ州フォート・ブラッグ基地での第82空挺師団の訓練、アフガニスタンでの実戦、ストライカー旅団での最新の市街戦訓練、そしてプライベートでの射撃訓練と、それらを経て最近ようやく自分の戦闘テクニックに自信が持てるようになった。
常に上を目指して修行する身であるために、完璧という言葉は使いたくないが、ある程度完成したと思っている。
それを確認するために、一冊の本にまとめてみたくなり、筆をとったのが本書を執筆した動機である。
また、個人による小銃の所有がほとんど認められていない日本においては、同様の技術を習得するのは不可能に近い。政府機関といえども技術の習得は限られている。
通常の射撃場での射撃訓練は、一列に並んで射座があり、ダウン・レンジ(Down Range:射撃方向)というものが定められていて、その方向以外に銃口を向けるのは規則外である。
横一列に並んで一斉に射撃する、初期の銃撃戦はそれでよかったかもしれない。だが現代の実戦ではダウンレンジも何もない。敵は360度全方向から不規則に撃ってくる。だから既存の訓練方法のみを行なっていたら、犠牲者が続出するのは火を見るより明らかである。
このことは2001年直後の米軍がそうであった。よってそれ以降、米軍の訓練方法はより実戦に近いものへと急激な変化を遂げている。いや、変化させなければならなかったというのが適切な表現だろう。
360度方向に向けて銃を撃つのは危険、と考える人間がいるのは確かだ。だが危険と思われる訓練をこなしていないと、いざ実戦になった時に余計に危険な状況に陥ってしまうのだ。
日本の侍も、道場では竹刀や木刀を使って訓練に励んだが、真剣での素振りを絶対に欠かさなかったという。真剣を持ったことのある者ならば分かるが、鉄製の真剣は重く、いくら竹刀をうまく振れる者でも同じようにはいかないのだ。
なお、本書では薄明かりでのフラッシュライトを使用したLow Light Shooting や、コーナーや階段などを押さえるCornering
Technique、片手で撃つOne Hand Shooting Technique、左手に持ち換えるTransition Technique
などは、あえて削除した。
これらは射手のM4小銃を扱う基本というよりは、どちらかというと戦術(Tactics)であるためだ。また、インストラクターの出身部隊などによって考え方が違ってくるため、筆者の習得した技術との間に相違点が出てくる。応用技術であるために、別にどちらが正しく、どちらが間違っているという訳ではない。これらについては、また別の機会に述べてみたいと思う。
本書ではM4小銃を扱う上で、不動不変の基本技術のみを述べてみた。
逆に言えば、本書に記された全ての技術を習得してはじめて一人前の射手といえる。一読すれば理解してもらえると思うが、一朝一夕にして身につくものではない。最低数年間の軍隊経験(正規軍)と、数万発単位の弾薬を効果的に消費して、はじめて身につく。
銃をただ撃つのは誰にでもできるが、プロフェッショナルに扱うのは、専門の訓練を受けなければ絶対にできないし、映画のようには行かないのが現実である。
本書で紹介したテクニックはあくまでも紹介であり、素人が安易な考えで真似をすると非常に危険である。例えば銃器に関しての初心者がグアムやタイなどに行って、レンタルのM4を借り、本書で紹介したテクニックを見様見真似するのは危険極まりない行為なので、絶対に行なってはならない。必ず専門のインストラクターから講習を受けて、専用の訓練射場で行なうことをお奨めする。もちろん事故が起こった際の責任は、筆者および出版関係者は一切の責任を負わないことを、お断りしておきたい。
今回の本を製作するに当たって、複数の関係者から多大な協力をしていただいた。プライバシー保護のために、あえて名前は出さないが、関係者方々の協力がなければ本書は完成しなかった。
最後になったが、近い将来戦地に赴く戦士および現在戦場に立つ者たちにGood Luckの言葉を贈りつつ、イラク、アフガニスタンをはじめとする世界情勢が少しでも良い方向に向かっていくことを願って、「あとがき」を締めくくる。
米国陸軍中尉
飯柴智亮
飯柴智亮(いいしば・ともあき)
1973年東京生れ。19歳で渡米、北ミシガン州立大学で国際政治学と法規執行学を専攻し、陸軍ROTC(予備仕官訓練部隊)にて士官候補生として訓練を受ける。99年永住権取得後、一平卒として米陸軍入隊。陸軍精鋭部隊の82空挺師団に空挺歩兵として所属。2003年には『不屈の自由作戦-III』に参加し、アフガニスタン東部山岳地帯でタリバン掃討作戦に従事する。03年米国に帰化し、04年陸軍少尉に任官する。06年中尉に昇進し、現在に至る。著書に『第82空挺師団の日本人少尉』(並木書房)がある。
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