(著者のことば)カミカゼ攻撃は、気の狂った者が命令した狂信的な任務ではなかった。アメリカ人に日本侵攻が高くつくことを示して、侵攻を思い止まらせる唯一理性的で可能な方法だった。この考えで、日本人は多くの航空機とパイロットを片道攻撃に投入した。カミカゼの数は、フィリピンの時よりもはるかに多かったので、アイスバーグ作戦の防空計画は不十分なものになった。戦闘機指揮・管制駆逐艦の防空強化に役立つと考えられた武装小型艦艇だったが、その優位性を活かせる場面が少なかった。
これから述べることは、ほぼ間違いなく第2次世界大戦で最も困難な海上任務の1つに携わった人々と、艦艇と海軍・海兵隊・陸軍の航空機、そして戦闘がどのように展開したかを再現したものである。
(訳者のことば)日本の特別攻撃隊に関する書籍の場合、その多くが描いているのは、基地を発進するまでの状況である。帰還を想定していない特別攻撃隊の特殊性などから、発進後の米艦艇・戦闘機との交戦状況とその最期を記載したものはわずかである。本書は、米軍の目を通したものであるが、日本軍機の搭乗員が何とか米艦艇に突入しようとして、米軍の戦闘機および艦艇の対空砲火を避ける行動をとり、どのような最期を遂げたかを明らかにしてくれる。
特別攻撃隊員の中には、自ら進んで、国・家族を守るため特別攻撃隊員を志願した者もいる。一方、死を望まないものの置かれた立場上、特別攻撃隊員として出撃するしかないと考えた者もいる。いずれの場合であれ、特別攻撃隊員になることが決まった以上、いま自分ができること、すべきことは敵艦に突入することだけだ、と言い聞かせて出撃したであろう。本書が描いている日本軍機の飛行状況から、そのような任務達成の使命感、その一方で任務を果たさずに撃墜されることの懸念を読み取ることができる。もちろんこれは通常攻撃の隊員も同じ思いであっただろう。
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