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●目 次

はじめに

第1章 フィールドモノ選びの原点

装備は4Kで選ぶ/ミリタリーサープラスとは?/頑丈な造りが魅力/気に入った道具を使う楽しみ

第2章 アウトドア用クロージング

暑さ、寒さから身を守る
ウェア選びの原則/アンダーウェア/インナーウェア/軍用ECWCSパーカ/BDUトラウザース
アクセサリーグッズ
グローブ/ハット&キャップ/多用途に使えるバンダナ/モスキートヘッドネット/サングラス/トレッキングベスト
雨天対策、レインギア
折りたたみ傘/軍用ポンチョ&レインケープ/レインスーツ/レインチャプス/レインカバー/カグール/レインギア使用上の注意
最新ウェア素材一覧

第3章 快適に移動する

ハードな使用に耐える靴を選ぶ
使用目的で選ぶフットウェア/素材の種類と特徴/バックパッカー用シューズ/コンバットブーツ/ジャングルブーツ/コンバットブーツの選び方/シューレーシング/ブレイクイン/メンテナンス/靴ズレの予防/高機能ソックス/ショートスパッツ/ウォーキングステッキ
使いやすいフィールドパックを選ぶ
ソフトパック/ウエストパック/デイパック/リュックサック(ラックサック)/アタックザック/キスリング/フレームパック/イクスターナルフレーム/フルフレーム/セミフレーム/インターナルフレーム
フィールドパックの選び方
行動予定とサイズの目安/オプショナルポケット
バランスをとるパッキング術
パックのメンテナンス/小物整理の大事

第4章 持ち運びできる「わが家」

ビバーク(野宿)のすすめ
自然と一体化する最高の方法/シート&タープ/ビバークザック/サバイバル用チューブテント/ツェルト
悪天候にも耐えるテント選び
テントの構造/より軽いテントを選ぶ/メンテナンス/ハンモック
シェルターハーフテントは使えるか?
軍採用の個人テント/テントの組み立て法/シェルターハーフの実用性/米軍式セッティングアップ/シェルターハーフのメンテナンス/NVAツェルトバーン
スリーピングギア
ブランケットロール/ポンチョスリーピングバッグ/スリーピングバッグの種類/ファスナー/フィルの素材/シェル素材の特徴/縫製をチェックする/温度表示は目安の一つ/サイズの選択/バッグカバー&ライナー/ピロー&イヤープラグ/スリーピングバッグ/マットレス/快眠の条件は/メンテナンス

第5章 クッキングストーブと照明具

クッキングストーブ
液体燃料系ストーブ/ケロシン(白灯油)ストーブ/アルコールストーブ/ガソリンストーブ/オプティマス・8R&123R/コールマンストーブ/安定性にすぐれるセパレート型/ガス燃料系ストーブ/ガスストーブ/固体燃料系ストーブ/缶入り固形燃料(メタ缶)/ポケットストーブ/その他の燃料系/火を使わないで加熱するMREヒーター/ターボストーブ
闇を照らす小さな灯
ヘッドランプ/ミニマグライト/キャンドルランタン/ケミカルライト

第6章 食料と水を考える

何をどう食べるか?
1日のエネルギー量/炭水化物/脂質/タンパク質/バックパッカーが選ぶ食料の条件/フリーズドライ食品/レトルト食品/缶詰め類/調味料を携行する/ナッツ類/予備食/非常食の条件/ゴミは必ず持ち帰る
水は早めに補給する
真水の重要性/キャンティーンの種類/水筒の正しい使い方/水を確保し浄化する/煮沸浄化法/非常時に用いる浄水剤/浄水器
野外での衛生を確保する
フィールドサニテイション/限界がある自然の浄化能力/キャットホールの作り方
クッキングウェア
主流はチタニウム製クッカー/軍用個人装備メスキット/カトラリー/クッカーの汚れは熱湯で

第7章 山野を自在に駆ける

コンパスを使いこなす
コンパス操作を楽しむ/コンパスの種類/簡易型コンパス/クルーザー型コンパス/ミル表示/使用上の注意/ランドナビゲーション/真北と磁北の違い/歩測(ペースカウンティング)/コンパス操作法/マップベアリング(目的地確認法)/レセクション(現在位置確認法)/ルートファインディング/コンパスウォーク練習法/目的地到達へのテクニック/コンパスウォークの原則/ナイトナビゲーション
GPSを利用する
宇宙からのメッセージ/ナブスター計画/野外でのハイテク機器
ラペリングギア
崖は登るより下りが危険

第8章 サバイバルギア

サバイバルキット
「魔法の小箱」ではないサバイバルキット/軍用サバイバルキット/飲料水の確保/発火具を常備する/シグナリングミラー/ホイッスル/体を保護する/シェルターを作る/応急修理する
フィールドナイフ入門
フィールドナイフ/多機能ツールナイフ/フォールディングナイフ/シースナイフ/大型ナイフ/プライヤーナイフ/ハンドアックス/ナイフ使用上の注意
ファーストエイドキット
ファーストエイドキットの基本装備

ミニマグライト護身技法《テクニカルアドバイス》
闇を見通す技術《テクニカルアドバイス》
アリゾナの旅人《テクニカルアドバイス》
ラペリングの基本《テクニカルアドバイス》
支点の確保/ボディラペル/シートラペル/ロープの回収
火の起こし方《テクニカルアドバイス》
摩擦熱で発火させる/火打石で火を起こす
ファーストエイド《テクニカルアドバイス》
捻挫/熱中症/熱傷(ヤケド)/有毒生物対策/創傷


●はじめに

 本書は主にソロ(単独行)のバックパッカーやトレッカーを対象に、装備の基本的な知識と製品の情報をまとめたものだ。
 紹介する製品は通常のアウトドアグッズばかりではなく、軍用サープラス品も広く取り上げたことが本書の特色である。
 造りの頑強さや価格の安さから軍装品の多くはアウドドア活動にも流用が可能であり、ここでは、できるだけ正確にフィールドギアとしてのその実用性能を解説していく。ときおり耳にする、軍用品こそ最強のアウトドアグッズとか、最高のサバイバルギアといった短絡的な見方をした評価は与えていない。あくまでも実際にフィールドで使うことを前提としているため、コレクション性とかファッション性といった、実用性とは関係しない個所はほとんど無視した説明となっている。
 取り上げた製品の大半は米軍装備であり、とくに明記しない限り軍用と書いたものは米軍用を意味する。これはわが国の歴史的背景によるものだ。ソビエト連邦崩壊後、ヨーロッパから大量のサープラス品が安く輸入されているが、まだまだ全国レベルでの普及度が米軍用ほどではなく、実用品として大切な入手の容易さという部分がクリアされていない。

 市販のアウトドア用品と違い、軍用サープラス品の価格は時価のようなものなので、店によって価格に多少の差は出てしまう。そこで本書では商品の価格は明記しなかった。『コンバットマガジン』『アームズマガジン』『Gun』などの月刊専門誌の広告を参考にしていただきたい。


●あとがきにかえて

 バックパッキングとは思想を持ったアウトドア行動だ。そこには、山を征服するとか自然に挑戦する、あるいは戦う、といった自然環境を敵と見なすような発想はない。行動形態はソロ(単独行)が基本で、群れをなして騒いだり、グループから遅れる人をガンバレだの根性を出せなどと言って叱咤激励するシーンも存在しない。
 ひとり無言で荷物をかつぎ、散歩でもしてるかのようにノンビリと周囲を見ながら歩き、気に入った場所があったらそこで食事をして眠る。これだけである。
 誰もいない静寂なキャンプサイトに濃密な闇が迫るとともに、最初は心細さから不安感が広がるに違いない。やたら退屈で長い夜の時間が過ぎると急に周囲が明るくなり、冷たく澄んだ空から星が消え、オレンジから青へと色が目まぐるしく変化していく。
 昨日の夕方とはまったく逆に、朝日を浴びながら身体中が沸き立つような感動を楽しめるだろう。この一瞬を味わいたいがためにキャンプ、とくに野宿をする人が少なくないのだ。
 それぞれがバックパッキングに慣れた気の合う仲間とのキャンプも楽しい。歩くペースはバラバラ。キャンプサイトでは誰が命ずるでもなく各自が得意な分野で動き、旨い酒を飲みながら語らい、眠くなったら勝手に寝る。見た目はグループ行動でも実体はソロの延長であり、それぞれが自己責任で動くだけ。
 本書で取り上げた装備は、このようなバックパッキング行動を基本スタンスに説明した。

 バックパッキング装備はすべてを自分で運ぶことになるので十分な吟味を行なう。荷物を極力減らすには、それぞれの道具の性能を熟知しなければできず、モノにこだわる人がバックパッカーに多いのは必然的なことといえる。
 ムダがなく、かつ忘れ物をしないための第一歩が装備リストの作成。自分自身の経験と技術書などを参考に季節ごとにまとめ、できればアイテムの重さも一つずつ測定しよう。経験を積むごとに装備の重要度や、道具に対する自分にとっての長所・短所が分かってくる。
 初めから道具や食事メニューに悩む必要性などない。とりあえずは「習うより慣れろ」だ。それからステップアップすればいい。安全な地域でまず一泊してみれば貴重な体験となるから、基本装備と気に入ってる道具類をパックして、さぁ出かけようではないか。
 参考までに、私の無雪地域でのビバーク装備を一例として書いておく。
 グレゴリー・デイ&ハーフ、TNFレインスーツ、モンベル・トレッキングアンブレラ、ナルゲン・ボトル、MSRドロメダリーバッグ、カジュアルティブランケット、ICIスーパーコンパクト+ウォームアップシーツ、ユニフレーム・ODベットウルトラライト、ビクトリノックス・ファーマー、地図とコンパス、SOSキット(布テープを巻きつけたA&Fマッチボックス、中は防水マッチと裁縫用具)、ファーストエイドキット、コーラ・ウォーキングステッキ、キャンドルランタン、ミニマグライトAAA、革手袋、防虫剤と防虫ネット、トランギア・アルコールバーナー、予備燃料と予備バッテリー、ロッキーカップ、ミゾー・スプーン、ナイロンコード、トイレットギア(ロールペーパー、トロウェル、歯ブラシ、歯磨き、鏡)、ビニール袋、新聞紙、防寒着(TNFアルマライトベスト)、食糧、非常食、衣類の予備。

 この書は、月刊『GUN』(国際出版)誌に93年8月号からスタートした「野外実践講座」を加筆してまとめたもので、連載はなお続いている。出版にあたって国際出版株式会社のご芳情と、関係各位に対して感謝の意を表したい。
 

●平山隆一(ひらやま・りゅういち)
1953年、栃木県生まれ。学生時代からの射撃とアウトドア行動熱が高じて78年に渡米。以後、アリゾナ、テキサス、カリフォルニアなどに住みながら北米大陸を中心にバックパッキングの旅を続ける。89年に帰国。月刊『Gun』誌(国際出版社刊)で「野外実践講座」を連載中。著書に『ツールナイフのすべて』『フィールドナイフの使い方』『フィールドモノ講座』『軍隊式フィットネス』(並木書房)がある。