■編集部より
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■新刊のご案内

2016年も早半ば。「編集部より」は半年ぶりの更新ですが、新刊は毎月出ていました。順にご紹介しましょう。

6月は新刊が2点出ました。
1つは渡邉陽子さんの『オリンピックと自衛隊』です。私は年齢的に1964年の東京オリンピックを覚えていて、自宅の庭先からブルーインパルスが描いた五輪マークを見上げた記憶があります。あれから52年。日本人の半分以上は1964年の東京五輪を知らず、当時の記憶があっても、約7000名の自衛官が大会に協力したということは知りませんでした。本文中に「駒場の教養学部でジープ小隊が学生に取り囲まれ、小隊長が軟禁されるという事件が発生。梅沢支援集団長の命を受けた田畑1等陸佐が現場に駆けつけ、群がる学生たちに任務の大義名分を説いて小隊長を救出した」という驚くようなエピソードが紹介されています。創設から10年あまり、まだ世間の目が冷たかったなか、自衛隊一丸となり、開会式から競技支援、選手村の警備、通信や輸送で大会運営に貢献しました。オリンピックでメダルを獲得することを目的に自衛隊体育学校が作られ、重量挙げの三宅選手が金メダル、マラソンの円谷選手が銅メダルを獲得しました。その後、体育学校から多くのメダリストが輩出し、この夏のリオ五輪、さらには4年後の東京五輪を目指して自衛隊アスリートが日々トレーニングを積んでいます。本書は、そんなオリンピック・パラリンピックを陰で支える自衛隊の活躍に初めて光をあてた著者のデビュー作です。

もう1つが、『アメリカンポリス400の真実!』です。著者はサンフランシスコ市警の現職巡査部長のアダム・プランティンガ氏。翻訳は元米陸軍大尉の加藤喬(米国在住)さんです。本書は90人のエージェントに断られ、91人目で出版が決まったそうですが、日本でも翻訳書が多数出ている「犯罪小説のベストセラー作家」リー・チャイルド氏の目にとまり「ハードボイルド的自伝と都会で生き延びるための知識に彩られた詩のブレンド」という評価を得た結果、米国アマゾンの警察関連本トップ10に入ったそうです。ほかにも「街頭で働く警官の心理が分かる本」「警察ドラマが作り出した神話を実例で突き崩す」「警察の仕事やカルチャーに興味がある読者にはうってつけの本」「警官になった疑似体験を与えてくれる本書はとぼけたユーモアと感情の波を掻き立てる文章で語られている」等々、好評を博しています。本書は「発砲」「未成年者の犯罪」「容疑者追跡」「売春婦と客」などテーマごと、計400のコラムで米国警官の勤務をユーモアを交えながらリアルに紹介した本です。「容疑者は両足首を交差させて座らせ、逃亡を遅らせる」「家庭内暴力の容疑者は、警官が遭遇する犯罪者の中でも、最も危険で予測不能の行動に出る」「切断されたばかりの手足に出くわしたら、切断部位を冷却しつつ乾いた状態にしておく」「逃げる容疑者を追う時は『警察だ、止まれ!』と警告する。陳腐なセリフだが、これで逃亡は正式な公務執行妨害になる」「警官は逃亡する容疑者を全速力で追いかけるようには訓練されていない。追いついても体力が残っていなければ、容疑者に指一本で突き倒されてしまうからだ」「凶悪犯罪の大部分は男性が引き起こす。当然、警官は女性より男性に注意を向ける」等々……サンフランシスコ市警直伝のサバイバルテクニックも多数紹介された異色のノンフィクションです。

4月には、防衛省情報分析官を務めた上田篤盛(あつもり)さんの第2作目『中国が仕掛けるインテリジェンス戦争』が出ました。これほど詳しく中国の情報機関についてまとめたものは他にありません。まさに労作です。元内閣情報調査室長・大森義夫先生の推薦をいただけたのも、その内容の信頼性にあると思われます。現在、日中間には歴史認識問題、台湾問題、東シナ海のガス田をめぐる利権争い、さらには尖閣諸島問題などの対立点があります。そして、いずれの問題も時間の経過とともに中国による対日優位の態勢ができつつあります。その要因の1つは、中国情報機関によるインテリジェンス戦争の存在があります。将来もし日中間に軍事衝突が起きれば、中国は軍事力行使の前段階として、インテリジェンス戦争を本格化させ、心理戦、宣伝戦、サイバー戦などを強力に仕掛けてくるでしょう。日中軍事衝突の危険性を察知し、事態のエスカレーションを防止するためにも、平素から中国によるインテリジェンス戦争の展開をシミュレートし、その対応策を検討しておくことが必要です。わが国のインテリジェンス能力を向上するためにも、本書が広く読まれて欲しいと思います。

3月には、『外人部隊125の真実』を出版いたしました。著者はフランス外人部隊元上級伍長の合田洋樹さんです。合田氏は高校卒業と同時に渡仏し、フランス外人部隊に入隊。最精鋭の「第2落下傘連隊」(コルシカ島)に17年半勤め、2014年末に除隊しました。以来、本書の執筆に専念し、ようやく完成しました。「外人部隊兵はフランス正規軍よりも知能指数が高い」「外人部隊は傭兵部隊ではなくフランス正規軍の一部」「自衛隊と給料の違いは?」「17年勤めればもらえる軍人恩給」「外人部隊はフランス女性にモテる?」「除隊後はスローライフを目指す」「外人部隊専用の「養老院」がある!」「幻の外人部隊オリジナル・ワイン」等々、知られざる「外人部隊の素顔」を125項目にわたって紹介した、まさに「等身大」のフランス外人部隊です!

今年1月には、大型企画が2点出版されました。
1つは、元防衛省情報分析官の上田篤盛さんのデビュー作『戦略的インテリジェンス入門』です。上田さんは陸上自衛隊で30年以上、情報ひと筋に勤務された方で、中国軍の分析が専門です。本書は、情報分析官を目指す後輩の求めに応じて、退官を機にまとめた「インテリジェンスの教科書」です。専門家だけでなく、一般読者にとっても「インテリジェンスの基礎知識」が学べる貴重な1冊です。

もう1つは、床井雅美さんの『ピストル弾薬事典』です。400頁近い大著で、オールカラー。初期の弾薬から最新のピストル弾薬まで、約270種類の弾薬とそのバリエーションを詳しく解説。それぞれ各弾薬の原寸写真および底面の写真、図面を収録し、さらに使用するピストルについても写真入りで解説しています。弾薬を扱った本で、ここまで詳細なものは世界でも初めて。世界トップの銃器評論家・床井雅美さんだからできる仕事です。

10月には、若手政治学者の岩田温(あつし)さんの『平和の敵 偽りの立憲主義』が出ました。岩田さんがまだ学生の頃から面識があり、いつか小社から本を出してもらいたいと思っていましたが、その願いが実現しました。この夏の安保法制は久々に白熱したものになりましたが、一部反対派ならびにマスコミの対応は、「戦争法案」などレッテル貼りに終始し、踏み込んだ議論ができたのか、疑問も残ります。著者の岩田氏は、専門の政治学から「立憲主義」の本質を明らかにするとともに、反対派の主張の欠陥を鋭くえぐり出します。おかげさまで本書は好評で、すぐに増刷になりました。

9月には、しばらく品切れの荒谷卓さんの『戦う者たち』が増補されて出ました。巻末に「忠義、その主体的決意」として、私利私欲によらない正義心の涵養こそ「武士の鑑」であると指摘されています。巷間言われる「武士道」とは何か? 本書はその答えを教えてくれます。

7月は、家村和幸さんの『大東亜戦争と本土決戦の真実―日本陸軍はなぜ水際(すいさい撃滅に帰結したのか―』が出版されます。本土決戦を準備していた日本陸軍は、終戦わずか1カ月前の昭和20年7月に、それまでの「後退配備」から「水際配備」に大きく作戦を変えました。上陸地点の後方に頑丈な拠点を構築して米軍を迎え討つ作戦から、海岸沿いに簡易的な拠点を設けて上陸する敵を迎え撃つ、いわば捨て身の作戦です。なぜ突然このような方針転換がなされたのか? その驚くべき事実を本書は明らかにします。さらに大東亜共同宣言〜カイロ宣言〜ヤルタ密約〜ポツダム会談に至る一連の終戦経緯についても詳述し、対日戦争を早期に終わらせたいアメリカ側の事情を明らかにします。

同じく7月に、長らく品切れになっていた、桜林美佐さんの『海をひらく』の増補版が出ます。現在、国会で審議されている「安保法制」をめぐる問題で「機雷掃海」が大きなテーマの1つになっています。復刊を求める読者からの要望も大きく、このたび増補して出版することにいたしました。

6月には、佐藤優さん完訳の『イスラエル情報戦史』が出ました。これまでイスラエル情報機関のモサドなどに関する本は出版されてきましたが、イスラエル政府は一切コメントを出さないので、その信憑性ははっきりしませんでした。そのなかにあって本書は、唯一イスラエル政府が公認した資料と言えます。詳しくは本書の「立ち読み」の目次を見ていただければ、その価値はすぐに分かると思います。巻末には歴代の情報機関長の経歴と顔写真、詳しい年表が網羅されており、専門家からも高い評価を得ています。

もう1点、若手歴史研究者・長南政義さんの初の単著『新史料による日露戦争陸戦史―覆される通説―』が出ました。A5判上製で函入り772ページ。重量1200グラムの大冊です。著者自ら、井上幾太郎、大庭二郎、鈴木荘六など、重要人物の手記、記録を発掘。それら一次史料を駆使して描いた、まったく新しい「日露戦争史」です。こんごの日露戦争研究は、この長南さんの著書からスタートすると言っても過言でありません。学術的に貴重な資料です。

5月には、加藤喬さん翻訳の『チューズデーに逢うまで―介助犬と帰還兵の深い絆―』(ルイス・モンタバン著)が出ました。イラク戦争の英雄として多くの勲章を授与されたモンタバン大尉ですが、帰還後すぐに外傷性脳損傷やPTSDを発病。戦争の記憶に付きまとわれ、日常生活が困難になります。そんな時に、介助犬チューズデーに出逢います。最初はぎこちなかった二人がさまざまな試練を乗り越えてかけがえのない関係を築いていきます。まさに人と犬の間に芽生えた愛の記録であり、魂が救済されていく過程を描いたドキュメンタリーです。

4月には、小社はじめての試みである電子書籍を出版しました。タイトルは『ブラックプリンセス 魔鬼(マキ)第1巻』です。著者は元陸自1佐で化学戦のプロ。大学時代に赤塚不二夫賞準入選に輝いたものの自衛隊に魅力を感じて入隊。以来、化学防護部隊の第一線で勤務に励んで来られましたが、停年2年前に、ふたたび筆をとり、マンガを描き始めました。それが本書『ブラックプリンセス 魔鬼』です。全10巻を予定しています。

3月には『決死勤皇 生涯志士―三浦重周伝』(山平重樹著)が出ました。本書は、平成17年冬、風雪にさらされる新潟港の岸壁で割腹自決を遂げた「三浦重周(みうらじゅうしゅう)」氏の生涯を描いたドキュメントです。昭和45年、新民族派運動に身を投じた早大生の三浦氏は「三島事件」に慟哭し、その後、死の直前まで35年にわたって「憂国忌」の活動に深くかかわります。その卓越した理論と高潔な人柄で多くの後進を育てました。決死勤皇 生涯志士」を座右の銘にした三浦氏の孤高の闘いをたどりながら、彼を取り巻く多彩な青年群像がいきいきと描かれています。

2月には、床井雅美さんの『メカブックス 現代ピストル』が出ました。前著『オールカラー最新軍用銃事典』に匹敵するボリュームで、A5判452頁!もちろんオールカラーです。本書はとくに各銃のメカニズムに焦点を当てた拳銃事典です。企画から2年。制作に8か月を要した力作です。銃器ファンだけでなく、メディア関係者、ライター、小説家などなど手元に常備しておきたい貴重な資料です。

年末には3点の新刊を出しました。以下、順にご紹介いたします。
1つ目は『完訳 からくり図彙(ずい)―注解付き』(村上和夫編訳)です。江戸時代に出版されて当時話題を集めた「機巧図彙(からくりずい)」を完全復刻し、そこに現代文と注釈を付けたもので、巻頭には編訳者の詳細な解説が入っています。本企画のきっかけは、平成25年10月29日付けの日経新聞のコラム「文化」で、編訳者の村上さんが、「機巧図彙(からくりずい)」の英語版を自費出版されたことが紹介されていました。そこで英語版を出されたのなら、次は「日本語版」を出しましょうということになり、本書は出来上がりました。村上さんの長年の研究成果が遺憾なく発揮された素晴しい本です。博物学者として著名な荒俣宏さんも推薦文を寄せてくれました。つねづね米国人の言うロボットは機能性だけを重視し、日本人の感覚からはロボットに見えないと思っていましたが、その理由がよく分かりました。日本のロボットの原点は、この『からくり図彙』に紹介されている「茶運び人形」のように、人間と調和して成り立つものものなんですね。それが鉄腕アトムとなり、現在の人型ロボットにつながっているようです。

もう1点は、田久保忠衛さんの『憲法改正、最後のチャンスを逃すな!』です。
田久保先生の本書にかける思いは「立ち読み」の「あとがき」を読んでいただければよく分かります。戦後ずっと「憲法改正」の声はあったものの、時の政治家は「吉田ドクトリン」を理由に真剣に取り組むことなく今日に来ています。昨年末の衆院選挙で勝利した自民党にとって憲法改正を実現する「最後のチャンス」かもしれません。

もう1点は、宮崎正弘さんの『吉田松陰が復活する!』。副題は「憂国の論理と行動」です。来年のNHKの大河ドラマ「花燃ゆ」は、松陰の妹「文」が主人公で、幕末維新ブームが再来しそうな気がします。宮崎さんは30年来、吉田松陰の生き方に関心を寄せ、その足跡をたどって来ました。本書はその集大成ともいうべき作品です。巻頭に松陰が旅した日本地図を掲載しましたが、わずか30年の短い人生で、北は青森、南は長崎まで、徒歩で見聞を広め、情報を集め、有為の志士と交わったことが分かります。宮崎さんの文章に「『西郷さん』というように親しげに呼ばれることはなく、『晋作』と呼び捨てにもされず、吉田松陰は『先生』と呼ばれる」とありますが、幕末維新には、それこそ綺羅星のように人材が輩出し、その先覚者が吉田松陰であったことは間違いありません。

8月は3点新刊を出しました。1つは桜林美佐さんの『防衛産業と自衛隊』です。本書は週刊誌『フラッシュ』で短期連載されたものをまとめ、大幅に加筆したものです。桜林さんは10式戦車をはじめ空母型護衛艦、潜水艦の現場を取材しています。なかでも「防衛産業は第4の自衛隊である」の章は読み応えあります。他国では軍が保有している「兵站」を日本では防衛産業が担っている事実は重要な指摘です。兵器の国産化の重要性を説き、防衛産業への無知と偏見が日本の防衛力を弱めると警鐘しています。

もう1点は柳生悦子さんの『日本海軍軍装図鑑 増補版』です。本書は2003年に出版して以来、長らく品切れになっていましたが、ようやく増刷することが出来ました。以前から柳生さんは明治期の海軍服で描き足りないものがあると言われていたので、この機会に9点描き足していただきました。まさに完全版が完成しました。

もう1点は別宮暖郎さんの『第一次大戦陸戦史』です。2014年は第一次大戦開戦100周年にあたります。ご存知のように別宮さんは「第一次大戦」のサイトを運営し、その情報量は膨大なものです。本書はそのエッセンスを抽出したもので、A5判350頁の大冊です。とくに開戦の経緯を解説した部分は勉強になりました。セルビアのテロリストによる2発の銃弾が、瞬く間に世界初の総力戦を引き起こした事実は驚愕します。いつまた再び同じことがおこるのか、ウクライナ情勢、シリア情勢、南および東シナ海の情勢を見ると、他人事ではありません。非常に示唆に富む本です。

 



■おわりに  

編集作業がひと段落し、「編集部より」を更新しました。やはり前回から半年経過してしまいました。時間の経過は驚くほどです。ひと段落したと言っても、すぐに新しい本が出番を待っています。直近は『「日露陸戦国際法論」を読み解く』(元陸自防衛法制教官・佐藤庫八著)。続いて家村和幸さんの『図解・孫子兵法(仮題)』を予定しています。毎年刊行している『アンケート調査年鑑2016』の編集作業も佳境です。さあ仕事に戻らないと。読者の皆さんに「待ってました!」と思わせる本を目指します。

なすだ