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目  次


序章 歩兵が陸軍の主兵力になるまで                     15

騎兵対歩兵の戦い/革新的だった銃の出現/歩兵戦術の変化

第1章 歩兵教練と個人装備                            21

入営/兵舎/徒手、執銃T/執銃U/銃剣術/小銃T/小銃U/小銃V/分隊の散開/軍刀T(下士官用)/軍刀U(将校用)/軍刀術/拳銃/救急法T/救急法U(患者搬送)/対毒ガス法/行軍と警戒/露営/手榴弾T/手榴弾U/対戦車兵器/将校用馬装

第2章 歩兵科火器                                 63

擲弾筒T/擲弾筒U/7糎打上阻塞弾/11年式軽機関銃/96式軽機関銃/99式軽機関銃/軽機の射撃姿勢/92式重機関銃T/92式重機関銃U/野戦築城/97式20ミリ自動砲T/97式20ミリ自動砲U/98式20ミリ高射機関砲/94式37粍砲T(速射砲)/94式37粍砲U/92式歩兵砲T(大隊砲)/92式歩兵砲U/41式75ミリ山砲T(聨隊砲)/41式75ミリ山砲U/通信/満期除隊

第3章 陸軍の組織と編制                   105

陸軍の編制/聯隊/大隊・中隊/分隊/歩兵聯隊の編制/旅団・師団・軍

第4章 陸軍軍人とは                        119

将校・下士官・兵/進 級/将校への道/軍人の服務について/兵役制度/召集/兵科・兵種・各部

第5章 建軍から西南戦争 陸軍史1              137

統一国軍の成立/大村益次郎の軍制改革/親兵設置/「徴兵令」の制定/鎮台の設置/士族の反乱/西南戦争/参謀本部の誕生/帷幄上奏権/参謀本部の任務/外征軍隊の建設/清国との対立/陸軍大学の開校/参謀本部の変遷

第6章 日清戦争 陸軍史2                  153

戦闘の経過/宣戦布告/清国軍の敗退/山県の独断/日清戦争講和/軍備拡張/北清事変

第7章 日露戦争 陸軍史3                  165

開戦戦略/日露開戦/遼陽の会戦/沙河の会戦/旅順の戦い/第三軍の人事/第一次・第二次総攻撃/二〇三高地/冬季攻勢/奉天会戦

第8章 軍縮時代 陸軍史4                   181

日露戦後の陸軍/日本軍兵士の弱点/新たな仮想敵国/第一次世界大戦/シベリア出兵/軍縮と陸軍/不況と軍縮

第9章 日中戦争 陸軍史5                  195

張作霖爆殺事件/満州事変/満州国と国連脱退/派閥抗争/二・二六事件/日中全面戦争への道/盧溝橋事件/支那事変/上海、そして南京

第10章 ノモンハン事件 陸軍史6               213

対ソ戦備計画/張鼓峰事件/ノモンハン事件/無視された戦訓/第二次大戦勃発/関特演

第11章 アジア太平洋戦争 陸軍史7              225

開戦戦略
[南方第一段作戦]マレー作戦/フィリピン作戦/蘭印作戦
[連合国軍の反攻]作戦最終線の設定/ガダルカナル/海上補給の弱点/ニューギニア/第八方面軍
[アジア戦争]インパール作戦/師団長解任/中国戦線/大陸打通作戦
[最後の戦闘]マリアナ失陥/孤立させられた島/マリアナ沖海戦/フィリピンの激戦/硫黄島・沖縄戦/敗戦


あとがき
主要参考文献


あとがき

『図解・日本陸軍[歩兵篇]』のご購読ありがとうございます。
 一九九一年、『日本の軍装』(大日本絵画刊)を出版してから、将来、日本の歩兵兵器とその運用についての本を出そうと考えていました。
 今回、並木書房のご尽力と気鋭のライター田中正人氏の協力で本書ができあがりましたが、このような構成と内容の本は世界にも例を見ないので、少しは新機軸のものになったのではと自負しています。
 もともと兵器という物は、一つ一つが独立して使用されるものではなく、集団で使用されるものです。それらの兵器を理解するには、火器集団としての編制や運用、さらには他兵種・他兵器との連動方法などを知らなければ、その兵器を全体的に理解したとはいえません。
 今まで、日本の歩兵兵器についての本はいくつか出ていますが、こういった視点から捉えたものは少なく、その点でも本書の価値は十分にあると信じています。
 また、戦争を理解するためには軍隊そのものを知ることが重要です。そのためには戦艦大和や零戦などの補助兵器ばかりを研究するのではなく、軍隊の根幹兵種である歩兵を理解することが本筋です。
 歩兵という兵種は人間が主体で、もっとも生々しく戦争を感じさせる兵種であるせいか、今までは取り上げるのはタブーのような風潮がありました。しかし、戦後五十年たった今、そうした過去の経緯にとらわれずに、客観的に旧陸軍を理解しようとする動きがあってもいいと思います。
 さらに、この種の本ができなかったもう一つの理由は、日本のイラストレーターが人間を描けないという現実がありました。リアリズム絵画を否定する日本の美術教育からは、人間を楽々と描けるのが最低条件である欧米型のイラストレーターは育ってきません。
 この本の読者の中からリアリズムの腕があり、情報を分析、再構成する能力があり、文章力のある欧米型のイラストレーターが、一人でも二人でも育って来ることを願っています。
                                       中西立太 


[歩兵篇]と銘打ちながら主に筆者の準備と勉強の限界で、第3章以降の叙述がきわめて簡略な概論的なものとなってしまったことをまずおわび申し上げます。とはいえ、明治建軍期から太平洋戦争の敗戦による軍の解体までを一冊で扱った通史はここ一〇年来あまりありませんでしたので、その点に本書のささやかな意義があるといえるかもしれません。もっとも、本書の出来が誇れるだけの水準であるかどうかはまた別の問題ではありますが。
 当初の構想では歩兵という兵科に限定して聯隊規模の編制・装備と戦術、戦史を詳述するつもりでしたが、戦史については実際には師団規模の作戦の大局的経過を略述したものになってしまいました。同時に、日本軍が戦っていた相手について、とくに日中戦争以降についてはその組織編制すらほとんどふれることができず公平を欠く結果になってしまったのは大変残念です。また本書では各戦役の開戦経緯や戦間期の軍備管理に言及したため、戦史と軍政史との区分が曖昧になってしまった部分もあり、これらの点は将来個々の戦域を扱う書を編む機会があれば、改めて戦史(または軍政史)にしぼった納得のいくものをまとめてみたいと思っています。
 日本を戦争に引きずり込んだ元凶として、また万事にスマートで開明的、合理的であった海軍に対し、時代遅れと頑固・頑迷の典型としてみられがちな日本陸軍ですが、そうした陸軍のあり方は実は当時の日本の置かれた国際情勢を如実に反映したものであったこと、言い換えれば日本陸軍の弱点は当時の日本の民度、いや日本という国そのものの弱点であったことをこの小著では述べようとしたつもりです。
 現在の立場から過去の失敗を断罪するのは簡単ですが、ではなぜその時そのような失敗をおかしたのか、その原因はどこにあったのか。借り物の尺度や「その時それが成功したからそれが続いた」式の短絡的な説明ではなく、その時々に生きた人の思考に迫ろうとしたつもりですが、それがはたしてわずかでも成功しているかどうかはすべて読者の判断に待つほかはありません。
 巻末に若干の参考文献(公刊戦史と基本史料集以外は比較的閲覧しやすいものに限定しました)を挙げましたが、本書ができ上がるまでにはこのほかにも多数の資料にお世話になりました。本書の性格上、本文叙述の一々についてその出典を明示することはできませんでしたが、巻末のこの場を借りまして諸先学の業績に感謝の意を示しますとともに、史料の価値判断、事実関係の認定・評価など本書の叙述の一切の責任は最終的には筆者個人の歴史観によるものであって、参考文献・史料にあるものではないことを明言しておきます。
 最後になりましたが、原稿の予定が大幅に遅れましてご迷惑をおかけしました中西立太先生、本書の企画時からお世話になりました高貫布士氏・林譲治氏、地図と図版を作成いただきました神北恵太氏および並木書房出版部ほかの皆さまの忍耐・御寛恕と、本書完成までのご指導とお骨折りに改めて篤く御礼申し上げます。
                                       田中正人 
 一九九六年一○月
中西立太(なかにし・りった)
1943年3月18日、長野県上田市生まれ。父は児童画家・中西義男。1955年上京、小学館の学習法でイラストレーションの仕事を始める。1962年小学館・学習図説シリーズ『人類の誕生』でサンケイ児童出版文化賞受賞。1970年プラモデルのボッックスアートを始める。1975年『壮烈ドイツ装甲軍団』
を小林源文と共同執筆。1981年朝日週刊百科『日本の歴史』で各種復元画を製作。1988年学研ピクトリアルシリーズで『江戸城と大奥』、世界文化社ビッグマンスペシャルで『武田信玄』製作。1991年大日本絵画で『日本の軍装』、講談社KK文庫で『織田信長』他を製作。その後、学研、河出書房新社、モデルグラフィックスなどで各種イラストを製作。現在に至る。
田中正人(たなか・まさと)
1963年兵庫県伊丹市生まれ。陸上自衛隊方面総監部、師団司令部、普通科連隊駐屯地などのある同地で育つ。専門は日本中世文学。『太平記』に関する研究で修士号を得る。軍記物に関する研究論文、資料紹介、口頭報告などいずれも数点ずつあり。現在神戸市内の私立中学校に教諭として勤務。軍事に対する関心は10代の頃からだがまったくの独学で、まとまったものとしては本書が最初のものとなる。現在、「文民の眼から見た軍事史」を編みたいという希望を持っており、またそれに関連して軍制、軍隊教育(とくに精神教育)、軍民関係とその周辺について勉強中。